2.二頭身のキャラが定着されちゃった
酒缶 今回は25周年作品になりますけど、このソフトはどういった経緯で生まれたんですか?
岸本 実はプロジェクトがスタートする前に1年ぐらい営業をしていました。元々、6頭身のアーケード版を復活させたくて、PC向けにフルポリゴンのリアルな「くにおくん」を作っていたんです。
酒缶 ポリゴンって、ハードはなんだったんですか?
岸本 ハードはPCです。アーケード版の『くにおくん』を今風のポリゴンで作って25周年作品にしようと考えていました。
酒缶 それはどうなったんですか?
岸本 ボツになりました。
酒缶 で、そこからドット絵になったんですね。でも、今作はアーケード版のドットではなくて、ダウンタウン系のキャラになっていますよね。
岸本 「くにおくん」はファミコンのタイトルが多いため、キャラが定着しているところがあったので、ダウンタウン系のキャラにしました。
酒缶 パッケージも『熱血硬派』や『くにおたちの挽歌』はリアルタッチでしたけど、それ以外のタイトルは全部可愛い系のキャラでしたね。そして、邦夫君のタイトルは時代的には94年を最後にしばらく発売されていません。
岸本 94年はテクノスが倒産するかしないかという頃ですね。
酒缶 その後、10年くらい動きがなかったので、世の中ではファミコンのゲームが遊ばれて、自然とファミコンの絵が更に定着したんでしょうね。
岸本 さすがにこれだけの数のタイトルが発売されて、長い期間が経ってしまうと、2頭身のキャラの方が定着されちゃったというところはあります。この頭身だと格闘ゲームにはならないけどアクションゲームにはなるので、ダウンタウンシリーズのいいところを入れながら私の『熱血硬派』の世界を作ったんです。
酒缶 元々、ボクはくにおくんというと『熱血硬派』の印象が強いので、リアル系のくにおくんも遊んでみたいんですけど…。
岸本 いつかやりたいんですけど…30周年記念とか(笑)。
酒缶 期待しています(笑)。それで、岸本さんが営業をされたことで、アークさんとのつながりができたんですか?
岸本 元々、ミリオンさん(※1)という、テクノスジャパンの瀧社長の関係の会社がアークさんと取引があったので、アークさんを紹介してもらい、新潟にあるエイビット(※2)という開発会社と一緒に今回の企画のプレゼンをしました。
酒缶 エイビットさんとは…。
岸本 エイビットは、テクノスジャパンの新潟支社だった会社なんですよ。『くにおのおでん』(※3)や『バスケ』(※4)、『ホッケー』(※5)を作っています。
酒缶 テクノスジャパンでは、くにおくんのゲームを何ラインも同時に作られていたんですか?
岸本 本社で常時4ラインくらい動いていて、新潟でも2ライン、年間6ラインくらい走ってました。
酒缶 その頃は、どなたが「くにおくん」の監修をされていたんですか?
岸本 当時、開発は僕が束ねていたので、企画会議で通った企画だけ会社に提案するようにしていました。でも、キャラクターは後付けなんですよ。テクノスのゲームの作り方は、「くにおやりきを使って何を作ろう」じゃなくて、面白い企画を考えた後でその企画にくにおくんを付けるかどうか考える、という感じでやっていました。だから、くにおくんしか作ってない時は、くにおくんが付けられない企画は捨てちゃってました。企画はすごい量がありましたよ。
酒缶 当時、テクノスジャパンからはビーチバレー(※6)のゲームも発売されていましたけど、あれはくにおくんを乗せないで通った企画だったんですね。
岸本 そうですね。でも、くにおくんも元々はシリーズにしようとは考えてなかったんです。ドッジボールの開発中に、デザイナーさんから2頭身のいいデザインのキャラクターが上がってきて、「ダメージ制にするのでくにおくんを付けよう」という感じで付けて、そこからですね。当時はテクノスにはメーカーのカラーがなかったので、格闘をメインにしようとしていた時期でした。あと、ドッジボールってかなり異色なゲームじゃないですか?
酒缶 はい。
岸本 初モノのゲームを育てていこうとしていて、ドッジボールもビーチバレーも出た当時は多分世の中で初のゲーム化だったと思います。ビーチバレーの時はくにおを外してチャレンジして、あまり売れなかったんですけど…。
酒缶 当時はまだ、ビーチバレーがそれほど浸透してない頃ですよね。
岸本 プロもなかった頃です。「トップガン」(※7)という映画に出てきたんですよ。
酒缶 「トップガン」から戦闘機のゲームじゃなくてビーチバレーのゲームを思いつくのはすごいですね。
岸本 そういったモノはシューティングが得意なところがやるじゃないですか。ドッジボールを作っていたので、次の新しいアクションゲームのネタということで、ビーチバレーだったんです。
酒缶 スポーツ系のゲームもそうですけど、くにおくんのゲームは対戦や協力をして遊ぶモノが多いですよね。
岸本 そうですね。基本は二人プレイ以上、仲間で楽しめるモノじゃないと企画を通さないという感じでやっていました。スポーツ系は球技の種類に限りがあるし、物語性のあるタイトルはレベルの高いスタッフがいないと作れないため、大変でした。
酒缶 今後のくにおくんのタイトルでは、岸本さんも開発に関わっていくんですか?
岸本 折角、アークさんと…金子さん(※8)と一緒に仕事をできるようになったので、色々とくにおくんのことをやっていくと思います。
岸本 実際、うちもミリオンさんと取引をやるようになって、くにおくんや昔のテクノス系のタイトルを全体的に盛り上げていく役割を私がやることになったので、今年は『ダブルドラゴン』の25周年(※9)を……アメリカの方で開発をしていてタイトルは言えないのですが……。
酒缶 実はボク、くにおくんシリーズよりも『ダブルドラゴン』の方がゲーセンで友達と連コインして遊んでいました。
岸本 アーケードは圧倒的に『ダブドラ』の方が売れました。
酒缶 友達と二人で必死に遊んでいたイメージが強いですね。
岸本 最後はバットで殺し合いを(笑)。