【第5回】エクソシスト介護士
2016.06.30 | 逢恋
エクソシスト介護士
思い出したくもない。
霊感があり、幽霊とかしょっちゅう見るので、
いまさら怖いことなどないと思っていた。
そんな僕があんな怖い思いをするなんて……。
序
200×年・夏
僕は駆け出しの介護士として、とある介護老人保健施設で働いていた。
介護老人保健施設。略して老健。
終の棲家となるいわゆる老人ホームとは違い、やがては自分の家に戻ることを目的にリハビリに励む場所である。
その施設は緑豊かな郊外に位置し、環境は申し分なかった。
ベッド数は八十床と比較的規模は大きく、多くの高齢者が生活していた。
そこで僕たち介護士は、入所者の生活すべてを請け負う。
自分でできることはリハビリを兼ね、できるだけやっていただくが、認知症を患ったり、体に障害があったりで、できないことがほとんどという方が大半なので、僕たちはほぼ全員の食事、風呂、排泄を介助する。
小さな赤ん坊の世話でも大変なことなのに、成人の世話となるとさらに大変となる。
小さな女性職員が体の大きな男性の介護をするのはなおさらだ。大抵が3年ほどの勤務で腰を痛める。