「余計なことは挟まず聞け。もう今しかない」俺は最後に海斗を振り向いた。
「聖書の中身の正しさなんて、結局は科学的にも論理的にも証明できるものではない。つばで失明を治す。海の上を歩く。死んだ人間が生き返る。それを嘘だと証明する科学自体を、認めないとしているのだから。神を信じないし、その奇跡を否定する。これだから愚かな人間は地獄に行くのだ。しかし私だけは助かるから大丈夫だ。神様を信じているのだから。……そうやって、いかに信者に聖書が全てかを信じこませることに、その宗教の繁栄全てがかかっている」
俺たちに他の信者たちが席を立ち近づいてくる。「速兄、やばいぞ」と囁き海斗が牽制するように睨むが、彼らはむしろ歩幅を加速させる。