第2場「無気力宇宙船」
田中 2235年○月○日、本日も、日本発外宇宙探査船メロディライナー55号は地球外生命体に遭遇せず。我々が生命体探査の為に宇宙に旅立ってから、早いものでもう2年半もの時が経とうとしている。残りは半年。一刻も早く異星人に遭遇し、地球に歓喜の報告が出来る事を願う。メロディライナー55号、偉大なる船長、キャプテンタナーカ2世。
ニヤニヤしながらテープレコーダーを置く田中。
全身段ボールにリボンを付けた風体のロボ子登場。
田中 ふー。
ロボ子 ウイーン、ウイーン。
田中 おう、ロボ子。…お前…まさか今の聞いてなかっただろうな?
ロボ子 何の事ですか?
田中 ふう。いや…聞いてないならいいんだ。で、何の用?
ロボ子 あの、ここの段ボールがはがれてきているので部品の交換をお願いしようと思って。
田中 だめだめ、この船にはそんな予算ないんだから。
ロボ子 予算て。じゃあ脱いでもいいですかコレ?暑いし動きにくいしで困、
田中 だめだ!
ロボ子 …はい。
田中 いいかい?このロボ係というのは重要な役割なんだよ。この閉塞された宇宙船においてロマンという名のささやかな夢を…、
ロボ子 でも私、こんな段ボール着て毎日ロボットの真似事するためにこの船乗ったわけじゃ、
田中 しっかりしないかロボ子。
ロボ子 私はロボ子じゃありません!山田華子って立派な名前があるんです。
田中 しっかりしないか、山田はなろぼ子、くん。
ロボ子 ロボ子でいいです。
田中 ロボ子くん。君はもっと自分に誇りを持ったほうがいい。見てくれは確かに段ボールだが、だから何だ。エ、エコ、という見方もできるじゃないか。
ロボ子 エコ…。
田中 ロボなのにエコ。それってボクら人類の新提案だと思わないか。
ロボ子 よく分かんないんで、「一」付けときます。
舞台上の正の字に「一」を付け加えるロボ子。
田中 あ!コラっ!
ロボ子 とにかく私はロボットという名のただの雑用係なので、掃除させて頂きます。
掃除を始めるロボ子。
田中 まったくもう、ロマンのない奴だ…。あー掃除はいいから、お茶持ってきて。
ロボ子 ハイ。ウイーンウイーン。
ロボ子退場。
田中 …マザ山さん、いる?
マザ山 ハイヨ。
田中 航海日誌を地球に送りたいから、今日のマザ山さんのデータ、送信しといて。
マザ山 冷ヤシ中華ノクダリハ?
田中 …送っといて。
マザ山 ピポパポピ…(SE)
間
田中 マザ山さん。
マザ山 今忙シイカラ黙ッテロ、キャプテンタナーカ2世。
田中 …聞いてたのか。
間
マザ山 ピポパ!(SE) デケタヨー。
田中 ハイ、今日も一日ごくろうさん。じゃ、今日の記憶分のデータ、消しとくよ。
マザ山 ハイハイヨロシク。今日モ一日疲レタヨ。オヤスミー。
田中 おやすみ。
間
ロボ子 お茶をお持ちしましたー。ああっ。
お茶をぶっくら返すロボ子。
田中 熱っちぃ!んっだよ!脅かすなよ!
ロボ子 すみません!拭きます!(変形して拭きだす)
田中 痛い痛い痛い痛い、押すな。アーム、が、食い込、むぉ。
ロボ子 すみません…。
田中 お前今のは完全にロボット3原則に反してたぞ。
ロボ子 すみません…。
盛&毒島登場。
盛 あー眠み。あ、いたいたキャプテンタナーカ。
毒島 偉大なる船長キャプテンタナーカ、一つ聞きたい事があるのですが。
田中 聞かれてたー!
ロボ子 あ、毒島くん!
盛 偉大なる船長キャプテンタナーカさんちの2世さん、契約書の件で聞きたい事が。
田中 あー!あー!
ロボ子 ぶすじ、
田中 気のせーい!気のせーい!
ロボ子 ぶ、
盛 2世。
ロボ子 え?
田中 ニセーイ!気のセーイ!ニノセーイ!
毒島 完全に見失いましたね。
ロボ子 え?ちょっと船長邪魔…、
田中 セーイ!(ロボ子にチョップ)
ロボ子 ヒャン。
ロボ子の頭がメコっとヘコむ。その場で正座の姿勢で機能停止。
田中 ふぅセーフ。
盛 セーフじゃねぇよ。
田中 セーフだよ!
毒島 仮にセーフでも、少なくとも偉大ではないです。
田中 …。(シュン)
ロボ子再起動、段ボールの頭をぶん投げる。
ロボ子 ひどい…。
田中 ?
ロボ子 船長…ちょっと酷くないですか…!
ロボ子、ロボットアームでグイグイ田中の一部分を押す。
田中 ちょ、ちょっと、コレはルール、違反、だろう。
ロボ子 何がルールですか…人にこんなもん着せて…!しかも船長がギャアギャア言って妙にうるさくしたせいで、毒島くんに挨拶し損ねたし。えい。フフ。えい。
田中 痛いよコレ、あれ、泣きそう。
盛 ちょっと毒島止めてあげて。
毒島 どうして僕なんですか?
盛 ああなったら止められるのはアンタだけだから。
ロボ子 えい。えい。フフ、ウフフ。
田中 だから、痛い、
毒島 ロボ子さん、あの、そろそろ止めてあげてください。
ロボ子 えい。え?…あ、ぶ、毒島くん!やだ、いつからそこに?
盛 乙女心ね。
毒島 ロボ子さん、あの、とりあえず船長の一部分を集中的に攻撃するのはやめてあげて下さい。
ロボ子 え?あ!せ、船長、誰にやられたんですか?
毒島 (盛に)この人はさっきの記憶がなくなってるんですか?
盛 それが乙女心よ。
毒島 船長、大丈夫ですか?
田中 これは中世暗黒時代の拷問か?
毒島 残念、23世紀ですね。
田中 どうしてもっと早く止めてくれなかった。もう少しで心が折れる所だった。
盛 まぁまぁコレでも食って機嫌直しな(ポケットから素のマシュマロが)。
毒島 汚い…。
田中 剥き出しかよ。
盛 ったく、ワガママばっかだよ(マシュマロ食う)。
田中 食うのかよ。
盛 あぁ、忘れる所だった。船長、そういえばアタシ達の契約書ってどこいったか知ってる?ほら、もう半年もしたら地球に着くじゃない?だから、そろそろ…、
田中 …
盛 船長?
田中 プイッ。
盛 あーもう、めんどくさい。コレやるから機嫌直しなって(ポケットからマシュマロ2個)。
田中 たった2個で機嫌が直ると思うなよ!
盛 じゃあ8個でどうだ!(ポケットからどんどん出てくるマシュマロ)
田中 わぁお(ちょっと喜ぶ)。
毒島 船長。
田中、ハッとする。
田中 …プイ。
盛 なによぉ、もっと素直にふぁふぇふぁもぐもぐ、
盛、マシュマロをもりもり食ってる。
田中 結局全部食うし。
盛 ふぁいふぉふぇいふぉんふぉふぉ
田中 食べきってから喋れ。
盛 モゴ…口が渇くね。
ロボ子 ですよね。水持ってきましょうか。
田中 ロボ子、俺にもお茶な。
ロボ子 ハイ。ウイーンウイーン。
ロボ子退場。