【第2回】☆よしみるさん ―(2) | マイナビブックス

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ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション2

【第2回】☆よしみるさん ―(2)

2016.04.18 | 酒缶

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2.キャラに芝居をさせたかった

 

酒缶 『メタルスレイダーグローリー』は1991年の8月発売。広告(※1)には4年を超える製作期間とあったので、88年発売の『ファイヤーバム』に関わっていた頃には『メタルスレイダーグローリー』の制作に入っているんですよね?

(※1) 広告
当時の『メタルスレイダーグローリー』のチラシについては、「ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション1」に収録されているゲームチラシコレクターの項に掲載。

☆よしみる 『グローリー』は持ち込み企画だったので、プレゼンをしてハル研さんから「GO!」が出ないと制作に入れません。他のゲームの開発に関わっているときにファミコンのノウハウが自分に溜まってきたので、『グローリー』の作中に出てくるようなキャラのアップとセリフを表示して、疑似的に目パチとか口パク程度のアニメーションを作ってプレゼンテーションをして「GO!」が出ました。その後、ハル研さんの開発チームを用意してもらうまでに期間があったので、3、4カ月くらいの期間でシナリオを書いたんです。シナリオとは、アニメのシナリオとかとは違って、ゲームブック(※2)として成立する…。

(※2) ゲームブック
シナリオが段落ごとに分かれていて、選択肢に応じて段落を移動しながらクリアを目指す書籍。

酒缶 分岐のあるシナリオですか?

☆よしみる コマンドがあって、それに対応するシーンナンバーがあって、セリフ表があり、これを読んだ後でつぎはここに飛ぶ、選択肢A、B、Cみたいのがある、ゲームブックと同じような仕組みを作りました。

酒缶 普通にシナリオを1本作ってから分岐を作り始めたんですか? それとも、最初から分岐があるものを作り始めたんですか?

☆よしみる 企画書に付けたプロットだと、レポート用紙10枚程度の筋書きがあって、ストーリーは全て頭の中で組まれていたので、フローチャート的にキャラクターがどういう風になると話が進んで行くかという表を作って、それに合わせてシナリオを書いていきました。

 

 

酒缶 シナリオを書いて、ある程度仕様が固まったあたりで開発メンバーが増えていきますよね。

☆よしみる そうですね。実際に「GO!」を出して頂いたときに、サーバーや開発環境を整えるところはやっていただいていたとは思うのですが、その後、僕は3、4ヶ月の期間、自宅でシナリオを書いていて、その後、『グローリー』の開発室を割り当てていただきました。その頃はワープロがないので、ノートに鉛筆で書いたシナリオをプログラマーさんに渡して、打ちこんでもらうところからスタートしました。

酒缶 今のゲームだと、漢字とか使い放題じゃないですか。ファミコンだと基本的に表示はひらがななので、読みにくかったり、漢字をばらすとすぐに文字溢れをしたり、大変だと思うのですが、その辺りのことも想定していたのですか?

☆よしみる 最初にシナリオと並行して画面のデザインを検討していました。メイン画面に額縁があり、下側に文字プレートがあり、コマンドが出て、選択肢が出て、またその中に選択肢があって、というデザインを先にしました。で、サブキャラの表情を表示するサブ画面を右に出したり、左に出したり、出さなかったり、というレイアウトを決めました。

酒缶 あれはすごいですよね。会話で、下側の会話ウインドウを全部使ったかと思うと、キャラの顔が表示されて、テキストが左側だけに表示されたかと思うと、今度はテキストウインドウが上に表示されて…かなり手間が掛かってますよね。

☆よしみる 全部やってます。

酒缶 セリフはキャラクターによってテキストの色を変えるとか、音を変えるとか、キャラクターの会話周りは相当こだわってますよね。

☆よしみる 元々、ファミコン自体は容量がないので、グラフィックをべたっと一枚で描いてしまうとあっという間に容量を食ってしまって、全シーンが入らないわけですよ。でも、キャラのアップとか、キャラに芝居をさせることで、同じ絵をあちこちで出していても、芝居が変わると違って見えるじゃないですか?

酒缶 はい。

☆よしみる シナリオを書いているときに、一番やりたかったことは、キャラに芝居をさせることだったんですよ。だから、キャラクターに表情があれば、どんなシーンでも流用が利きます。そして、芝居をさせるので、そのシーンの他のキャラの台詞に呼応して、アップになっているキャラの顔も表情を変えたい。というのをやると、絶対に飽きないだろうし、グラフィックを流用しても飽きないだろうという目算がありました。

 

 

酒缶 セリフに合わせて鳴る音は、あいうえおに合わせて鳴らせているんですか?

☆よしみる 最初は5音用意してもらって、当てたんですけど、ちょっと変だったんです。イントネーション的には5音あるんですけど、基本的にはそれほど抑揚を付けないようにしています。最初、すごく抑揚をつけたら、音楽みたいになってしまって、セリフに聞こえなくて。試行錯誤した結果、今のようになりました。

酒缶 『どうぶつの森』(※3)の動物の声に聞き慣れてくると、このゲームの音も音声も聞こえてくるんじゃないかと思えてくるんですよね。

(※3) 『どうぶつの森』
2001年に任天堂がNINTENDO64向けに発売したコミュニケーションゲーム。どうぶつたちとコミュニケーションを取りながら小さな村で生活をする。シリーズ作品が多数発売され、2012年にはニンテンドー3DS向けに『とびだせ どうぶつの森』が発売された。

酒缶 ファミコンで喋っているように感じられるのは、あの時代にしてすごいな、って。

☆よしみる 男性キャラと女性キャラが違う音で喋っていると、なんとなく掛け合いに聞こえますよね。

酒缶 女性同士でも音に違いがありますよね?

☆よしみる テキストの表示スピードも早口なキャラクターとおっとりしたキャラクターでスピードを変えてあります。プログラマーさんに確認したら、文字の出力スピードと音とキャラの表情を同期させることが可能だという話だったので、そのようにしました。

酒缶 あの時代のアドベンチャーって、テキストの表示に合わせて、同じ音を、「だ・だ・だ・だ・だ・だ」みたいな感じで鳴らす表現でしたよね。シナリオを作っている段階から、このようにしようとしていたんですか?

☆よしみる できたらいいな、という感じですね。他のゲームだと、音が鳴らなくてセリフだけ出たり、セリフがいっぺんに出たり、PCゲームでも今言われたような出方が主流でしたので、ゲーム業界ではお約束で当たり前だと思われ、マニアの方は普通にプレイをされていたんですけど、これは変だと思って(笑)。できるならそういう風にやりたい、という発想でスタートしました。

 

 

☆よしみる また、表情とテキストをリンクさせるのがこのゲームの肝だったので、表情の指定の仕方をプログラマーさんに確認したら、セリフを全部プリントアウトしてくれたので、ここからここまでを表情1、というように表情の芝居の指定をしました。

酒缶 すごいですね。今なら、エクセルで開いたファイルに一行追加して表情1とか入れればいいだけなんですけど、プリントアウトするだけでもすごい量だし、全部手打ちで入れるとちゃんと入っているか確認するのも大変だし。

☆よしみる 不思議なことに自分で指定した芝居って、間違っているとすぐわかるんですよ。プログラマーさんのモニターで自分が指定した表情が見れるので見ているとおかしいことに気付くんですよ。「それ、俺が渡したヤツじゃないでしょ」と言うと、プログラマーさんが「そうだっけ?」と言いながら調べてみると「やっぱ、違うや」というような感じで、デバッグに行く前に、日常の開発で直してましたね。

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