【第3回】☆よしみるさん ―(3) | マイナビブックス

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ゲームコレクター・酒缶のファミ友Re:コレクション2

【第3回】☆よしみるさん ―(3)

2016.04.19 | 酒缶

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3.当初の半分も入ってない

 

酒缶 演出面では、グラフィックの物量がとんでもないですよね。

☆よしみる グラフィックがやっぱり一番時間が掛かりましたね(笑)。例えば、一画面をBGとスプライト(※1)で構成する時、1バンク(※2)にテレビ画面の1/4くらいのサイズしか入らないので、宇宙で画面の下に地球が見えているシーンで、あれだと絶対足りないわけですよ。

(※1) BGとスプライト
ざっくりと説明すると、BGはバックグラウンドの略で背景、スプライトはアクションゲームで動いている自機や敵や弾。BGもスプライトもゲーム画面上では同じように表示されているが、実際には違うレイヤーに表示されている。

(※2) 1バンク
コンピュータのメモリの単位。同じバンクにデータが入っていないと一緒に表示をすることができないため、当時の開発者は色々と工夫をしていた。

☆よしみる いくら画面の大部分が宇宙であっても、宇宙船と地球をまるまるBGで描くことになるので、1バンクでは足りないんですよね。なので、あの地球は右半分だけしっかり書いてあって、左半分はパズルのように使えるものをモザイク的にただ並べているだけなんですよ。

 

(C)1991-2007 HAL Laboratory, Inc.
(C)1991-2007 ☆YOSHIMIRU.
(C)1991-2007 KAZe Net Co.,Ltd

 

☆よしみる ファミコンだと色数も使えないので、滲みを使わないとやりくりができなかったんです。そういう工夫でグラフィックが一番、4年間掛かった原因になっています。だからもし今のように、メモリの制限がない状態で同じ制作スタイルでやっていたとしたら、もっと早くグラフィックを描けていたと思います。

酒缶 ドットを打って、見て、自分でリテイクする作業を繰り返しているわけですからね。

☆よしみる そうですね。

 

 

酒缶 『メタルスレイダーグローリー』が発売される約4年前だと、『オホーツクに消ゆ』(※3)が1987年6月に出ていて、時期的にはファミコンのコマンド式アドベンチャーがまだそれ程出てない時期だったんですけど、既存のタイトルを参考にするようなことはなかったんですか?

(※3) 『オホーツクに消ゆ』
正式名称は『北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ』。1987年にアスキーがファミリーコンピュータ向けに発売したアドベンチャーゲーム。1984年にアスキーがパソコン向けに発売したゲームの移植作品。

☆よしみる 自分が作品を構成して出そうと思い、結果的に『グローリー』になったのですが、アドベンチャーという形式しかストーリーを描ける方法がなかったんです。だから、何かを参考に、ということはなかったと思います。

酒缶 当時のPC系のアドベンチャーゲームはどうでした?

☆よしみる 編プロで色々なジャンルのゲームを遊ばせてもらった時に、実はアドベンチャーゲームも「面白いからやってみな」と勧められたんですけど、遊んでみたら面白くなかったんです(笑)。

 

 

☆よしみる アクションゲームだったらアクティブに楽しめるし、漫画だったらパラパラと見れるし、アニメなら普通に見ていればいいんですけど、PCのアドベンチャーゲームはお約束事がすごくあって、セリフがほぼ謎解きで、自分で文字を打ったり、コマンドを打ったりして、自分で何かを見つけないといけなかったり、画面に落ちているモノが持ち物になったり、非常に不親切に見えたんです。

酒缶 なるほどー。

☆よしみる 物語に没頭して入り込めたら面白いのに、手前のインターフェースのところで段取りが多くて、このシステムでは物語や世界観を味わえない。このシステムは謎解きをさせないためのシステムだろう、と。

酒缶 確かに、ファミコンのアドベンチャーにあったコマンド方式も、PCアドベンチャーの文字入力を簡単にするフォーマットはできたけど、そのコマンド方式でどれだけすごい事件を解いたかというと、冷静に考えるとそんなでもなかったり。コマンド方式は結局足止めなんですよね。『メタルスレイダーグローリー』では、コマンドを選ぶと、コマンドに括弧が付いて、その下の階層のコマンドが表示されますけど、どういう発想からあのような形になったんですか?

 

(C)1991-2007 HAL Laboratory, Inc.
(C)1991-2007 ☆YOSHIMIRU.
(C)1991-2007 KAZe Net Co.,Ltd

 

☆よしみる コマンド形式のゲームを遊んでいるときに、コマンドを選ぶと、その中にまた選択肢がある時、文字の部分が100%入れ替わってしまって、自分がどのコマンドを選んだかわからなくなってしまうんですよ。それで、戻って確認してから選択していたので…。

酒缶 コマンドの表示が出ていれば、わからなくはならないですよね。

☆よしみる 自分がどのコマンドを選んでどの選択肢を選んでいるか、一目瞭然ですよね。だから、絶対にやりたいと思ったんですよ。ゲーム業界の常識は普通の人の常識と違うので、ここは変えようと思ったんです。

酒缶 ゲームの作りがどんどんシステマティックになって、開発効率が上がれば、似たシステムのゲームが作りやすくなって、結果、いろんなゲームが遊べて嬉しいけど、使い勝手も細かく作ってほしいですよね。いつもはマクドナルドで食べるけど、たまにはモスバーガーでも食べたいよね…という例えがいいかどうかはわかりませんが、『メタルスレイダーグローリー』は遊び心地がいいのも、ユーザーの心に残っている理由の一つなんだと思います。

 

 

酒缶 開発初期に立てていたプランと、最終的に商品に入っているモノでは、ズレはありましたか?

☆よしみる こんな物語のこういうゲームを作りたい、という大きな枠組みでいうと上手くいっていると思います。

酒缶 はい。

☆よしみる ただ、ストーリーの中身のシーンはシナリオを大学ノートに何冊分も書いたんですけど、それが出来上がった時に何メガになるかは現場でもわからないので、8割ほど材料が揃ってきた時に、入る入らないの話になりました。ほとんど出来上がった段階から削除の作業が始まって、シナリオに関しては当初の半分も入ってないです。

酒缶 いわゆるアクションゲームだったら、ステージをバッサリ削れるけど、アドベンチャーでシナリオを切ったら相当辻褄合わせが必要じゃないですか。

☆よしみる プレイヤーを飽きさせないために、いろんなシステムを入れていて、ダンジョンがあったり、口説きゲーがあったり、シューティングっぽいのがあったりとか、開発段階でステージ分けをしていて、ステージが変わる時にデータを持ちこさないようなシナリオの書き方をしていて、ステージの終わりで一度集約されます。

酒缶 「休む」コマンド、パスワードを取るところがその区切りかと思ったんですけど。

☆よしみる パスワードのところもそうなんですけど、実際にはパスワードはプレイ時間がちょっと長くなると困るので、結構頻繁に入れているんですよ。ゲーム全体でステージ7までの構成になっていて、そのステージ単位でシナリオを集約させるということをやっているので、そのシナリオ単位で詰めていくと、意外と辻褄は合わなくはならなかったです。

酒缶 開発の初期段階でそこまで想定されていたかどうかはわからないけど、すごいですね。全体で一本のシナリオだったら、修正が大変だったでしょうね。

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