【第2回】早打ちの表と裏

早打ちの表と裏

　待ちチョロは誰でも１回は経験する。

　グリーンが空かなくて、ずっと待たされた末にチョロってしまうショックはかなりデカい。それがパー５で２オン狙いで待っていた場合の待ちチョロは、そこまで調子が良いときほど、心の切り替えが上手くいかない。たった一つのミスでもゴルフはガタガタになる。

　自分のペースでプレーできていれば……　後悔しても、コースに内の渋滞は計算できないし、計算してゆっくりプレーすれば、それは単なる自己中心なスロープレーに成り下がる。

　待ちチョロを解消する方法は、スタートホールの過ごし方を普段から自分のものにして訓練しておくのが簡単である。早めにスタートホールに行き、前の組のスタートをじっくりと見ながらゆとりを持って自分のスタートを待つ。待つことに自分を慣らすのだ。自然に何をして待っているのが、リラックスできて、体も固くならないかが分かるはずである。

　少し上級者になれば、深呼吸を始めとする呼吸法などで集中力を高めたり、肩の緊張を意図的に起こしてから弛緩させることで腕の力を抜いてからルーチンにはいるようにするなど、自分なりのハウツーを会得しているものだ。

　もちろん、それでも待ちチョロは出る。

　待ちチョロするぐらいなら、潔くレイアップ（刻み）してしまうという手もある。私は、かなりの確率でこちらを選ぶ。アベレージだけで考えれば、待ちチョロが出るリスクを避けるのも賢明である。

　なかなか上級者になれない中級者の中には、コースが渋滞していないのに待ちチョロをしているケースがあるので注意である。今回はそれがテーマだ。

　ここ一番の大切なストロークを迎えた瞬間は、ある程度ゴルフをしていれば多くの人が感じたり、計算したりして意識する。このときに、慎重になっているつもりなのか、それとも考えすぎてしまっているのか、余計に時間を使った挙げ句に待ちチョロと同じミスをしてしまう内は、本当の意味での上級者にはなり得ない。

　誌面で何度か紹介しているが、近代ゴルフの父であるベン・ホーガンは『早くミスせよ』という言葉を残している。これは、どうせミスるなら、サッサと打ってしまえ、という意味で、意味のない時間を使っても無駄は無駄、という厳しい言葉である。

　スロープレー防止にもなるから早く打て、という合言葉は美しい。しかし、早く打つと一言で言っても、そこにもゴルフのセンスが滲み出るものなのである。

　見渡してみれば、確かに上級者は時間を掛けずにせっせとプレーする人の割合が高い。では、早打ちが上達の極意かと思えば、下手くそが早打ちでストロークを積み重ねているシーンもよく見るので、極意とは言えない。

　早く打つと言う言葉の意味をよく考えれば良いのである。

　下手な人の早打ちは、スイングを早くしようとしてリズムが失うだけでなく、ボディターンも中途半端な手打ちになってしまっているのである。また、こういう人に限って、打つまでの時間は長い。

　時間を掛けることで緊張と不安は増す。失敗のための準備をするゴルフほど滑稽なものはない。失敗するから怖くてすぐに打てなくなる。時間をかけ過ぎて失敗する。悪循環である。

　上手な人は、決してスイングを急ぎはしない。自分のスイングのリズムはキッチリ守る。ただ、スイングをスタートするまでの間に余計な時間を掛けない。余計な時間は、不安を呼ぶことを知っているからである。

『早くミスせよ』という言葉は奥が深い。

　どのようなショットを打とうとするか決断したら、迷わず構えて打つ。それこそが早打ちの極意であり、迷わないような工夫として時間を掛けずに構えに入ることは強いゴルフに直結するポイントでもある。

　無駄な時間を掛けて、自らが待ちチョロと同じ状況を作ってしまう人は、例外なくスタートホールの第１打目が下手くそだ。幸か不幸かスタートホールの第１打目はラウンドのたびに誰でも確実に体験する。自分なりのスタイルを確立させるには毎回体験できるのは良いことである。

　まずは、早めにスタートホールに行き、待つことになれること。次は、決断をしたら、迷わずに構えに入るハウツーを自分なりに作ることである。

（２００７年１月18日）