2.今までにないプレイスタイル
酒缶 実は最近3DSづいていて、発売された3DSのソフトは全部買ってチェックしているんです。『タッチ!ダブルペンスポーツ』(※1)の発売日は6月2日でした(※2)よね。
鈴井 ぜひ買って下さい。このゲームのためにこだわって作った専用タッチペン(※3)が2本ついています!
酒缶 そのペンについてですが、『タッチ!ダブルペンスポーツ』の公式サイトを見たら、専用タッチペンの7つのこだわりが書かれていたんですけど、あれって……。
鈴井 そこにきましたか! あれ、元原稿は僕が書きました。GetNavi(※4)風に、ハイテク系ガジェットの紹介記事的に書く、というテーマで書きました。
酒缶 この切り口はすごいな、と思って。やっぱりそうでしたか。「ゲームファンマガジン」(※5)のインタビュー記事を読んでいたので、今回も鈴井さんかと思っていました。
鈴井 そうか、すごいところを突っ込まれたなぁ。びっくりしましたよ。あれを僕が書いたと思う人なんて、日本に3人くらいしかいないですよ。でも、あれは7つどころか10くらい出したんですけど、だいぶまとめられちゃっていて。「シボ加工」(※6)とか「質感が違う」とか、実際には「つるつるなところとつやのないマットな部分にわかれている」とか、熱く書いたんですけど。
酒缶 このペンの制作もインディーズゼロさんなんですか?
鈴井 ペンの元デザインは社内でやっていて、イメージとなる3Dモデルまで作りました。パッケージに入るサイズに抑えるという条件があったので、太さや長さの限界はあったんですけど、ベストを尽くした結果がこのペンです。
酒缶 まだできあがってないソフトでベストな触り心地を見つけるのは大変ですよね。
鈴井 そうなんですよ。すごく悩みました。指サックの先がタッチペンになっている指サックバージョンとか、いろんな形状のデザイン案が山のように出て、2ヵ月くらい考えた末、最終的にやっぱりペンを普通に持つのがやりやすいだろう、ということになって……。
酒缶 利き手じゃない方の手の操作って結構大変じゃないですか?
鈴井 毎日遊んでいると旨くなるんです! 両手の操作性を鍛える「タッチエクササイズモード」にはセパレート、トレース、シンメトリーの3つのモードがあって、この3つがそれぞれ違ったテーマ(※7)になっているんですよ。3つをまとめてプレイする「タッチセンスチェック」を毎日やっていると、上達しているのがわかるんですよ。
酒缶 『眼力トレーニング』(※8)とゲームの構成が似てますけど、どのような経緯でこのゲームを開発するに至ったんですか?
鈴井 今回は『ファミリースキー』(※9)とか『有野の挑戦状』シリーズのプロデューサーさんと御一緒させていただいたのですが、ノンキャラクターのオリジナルのタイトルを作りたいというお話をいただいて、そのテーマを受けて、我々から複数の企画案を提案させてもらいました。
鈴井 その中で一番広いお客さんに楽しんでもらえる新しい提案がいいということで、『タッチ!ダブルペンスポーツ』の企画を進めていくことになりました。なので、『眼力』がどうとかはなかったんですけど、沢山の人にやってもらうという意味合いで、両手を初めて使うんだから当然練習をする機会が必要だよね、ということで、タッチエクササイズモードを追加しました。
酒缶 なんか、脳トレっぽくなりますよね。
鈴井 そうですね。毎日続けて遊んでもらいたいので、循環法としては多少意識をしています。『Wii Sports』(※10)で初めてひねったり打ったりしたときに、今までにないアナログ感を感じたと思うんですけど、『タッチ!ダブルペンスポーツ』もボタンを押す代わりにペンをピッと操作するだけではなくて、タッチの具合とかスライドの曲げ方とか力の入れ方とか速さとかがそのままダイレクトに出るように作っていて、それを両手でやるので。
鈴井 バッターだとテイクバックして、体重を移動して、前に向かって打つとか。
酒缶 引きつけて打つ感じですね。
鈴井 スポーツをやっている人には手に馴染む感じであり、スポーツをやってない人にとっても気持ちいい感じになるってところを目指して作りました。パラグライダーは初ですからね、ゲームでまともに入っているのは。パラグライダーはすごくいいですよ。パラグライダーを理解するために、熊本の「パラフィールド火の鳥」というパラグライダー場に行って色々と訊いたりしながら、パラグライダーの要点を捉えたゲーム的にわかりやすくて遊びやすいデフォルメ方法を模索しました。開発の初期には、あらゆるスポーツを体感するために、まず、スタッフ全員でラウンドワンに行きましたしね。資料用にビデオとかカメラをガンガン回して、一通りやることをやった上で作りました。
酒缶 やっぱり、3DSだけど、携帯ゲーム機という感覚では作ってないですよね。
鈴井 置いてプレイすることが前提で、電車の中では遊べないことは初めからしょうがないことだと思っていました。両手でペンを持って遊ぶという、今までにない見た目のプレイスタイルを優先しました。3DSはクレイドルがついていますけど、あれの上でやると角度が丁度いいんですよ。絶妙です。
酒缶 3DSは携帯ゲーム機だと認知されているけど、3D表示を本格的に楽しもうとすれば、移動中なんかできないじゃないですか。
鈴井 3Dの専用モニタの付いたゲーム機だと思った方がわかりやすいと思います。
酒缶 だから、何を遊ぶかによって、携帯する人もいれば、家でやる人もいていいと思っているので、その意味ではとても合っているゲームだと思います。
鈴井 先日、「ゲームセンターCX」のチャリティーイベントで『タッチ!ダブルペンスポーツ』の試遊会をやらせていただいたんですけど、遊ばれた方にはものすごく評判が良かったんですよ。でも、実際に話を伺うと、中には3DSで遊ぶのが初めての人がいて、8割の人はまだ3DSを持ってなくて、「これと本体を買うのは高いね」という話になってしまって。初めての挑戦なので、「両手で操作?」と驚く人もいれば、「2点タッチってどうなるの?」と反応する人もいます。
酒缶 ボクも気になってはいたんですけど、オフィシャルサイトのムービーを見たら、操作は片方ずつやるようになっているし、ボクシングのガードが真ん中になっていたのも、2点タッチしたときに、その中間点を認識するから丁度いいですし。
鈴井 それは正しい操作としては推奨していませんが……(苦笑)。どのスポーツ競技も両手でプレイすることで、より良い動きができる操作感になってますよ。結果的に、デフォルメ感がありつつもリアリティある絵作りができましたし、遊んでもらって絶対に損をさせない、1プレイ3分で何度も遊びたくなるようになっているので、今の時代に合っている遊びやすいサイクルを持ったゲームを作れたと思っています。
酒缶 鈴井さんはこのゲームに関してはディレクターなんですか?
鈴井 はい。よくも悪くも全ての責任を持っています。
酒缶 その前に社長じゃないですか?
鈴井 まぁ。でも、僕も開発チームの一員ですから。『お料理ナビ』(※11)と『美文字トレーニング』(※12)に関してはインディーズゼロ側の現場のプロデューサーという扱いになっています。
鈴井 あと、近年のタイトルでは、セガさんの『ラブ and ベリー』(※13)では制作部分のディレクターとして御一緒させていただき、バンダイナムコさんとはディレクターとして『ゲームセンターCX 有野の挑戦状』シリーズをやらせていただきましたし、『タッチ!ダブルペンスポーツ』もやりました。
鈴井 現在はまた別の会社さんとの新しいプロジェクトにも関わらせていただいています。