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ゴルフプラネット 第26巻

【第3回】ホールを覚えよう

2016.01.21 | 篠原嗣典

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ホールを覚えよう

 

 コースの印象は多くの人が持つが、ホールの印象となると急に怪しくなるのが普通である。ホールアウトしたしたあと、一体何ホールを思い出すことができるだろうか?

 

 ごく一部の人を除いて、1回プレーしただけですべてのホールのレイアウトや自分のショットを記憶することはできない。

 

 例えば、見たこともないような景観のホールやスリリングなアイランドグリーンなどは覚えやすいが、一般的なコースは思い出したホールがアウトインのどちら側だったかすら思い出せないことが多いようだ。

 

 話は変わるが、レーサーは走るコースを全てを頭にたたき込んでレースに挑むという。先を先を予測しなければ、高速の世界ではタイムを上げることが無理なのだそうだ。

 私は以前、一流のレーサーが目隠しをして自分が走ったコースを走るフリをするのを見たことがある。彼の目の前にはそのときのオンボード映像が音無しで流れた(オンボード映像とは、実際のドライバーの頭の上から撮った映像で、車に乗った気分になる。車酔いする人はこの映像だけでも吐ける)。

 恐ろしいことに、全く同じだったのである。ブレーキを掛けている足、ステアリングを動かす手、ギアを上げ下げする動き、全てが映像とピッタリだったのだ。

 

 ゴルファーもイメージトレーニングとしてコースをプレーするのであれば、全てのコースを記憶していなければ無理である。

 

 だから競技ゴルファーは、練習ラウンドを欠かさないのである。人にもよるが、私は現役の頃は2~3ラウンドすればコースを完全に覚えることができたし、スタート表が手に入れば、メンバー見て予選カットラインをほぼ正確に当てることができた。

 

 特別な才能ではない。競技ゴルファーは多くの場合で、コースの色々なメモを取るので、覚えやすいだけのことなのである。

 

 普通のラウンドの場合は、3回では全てを覚えるのは難しい。

 1980年代以降に造られたコースの中には、18ホールを覚えやすくするようにレイアウトの配置がしてあったり、用地の規制が多く、その分、見た目に自然との闘いを感じられるところがあったりで、覚えやすいコースもあるので、そういうところは3回のプレーでも十分に覚えられる。

 それ以前のコースでは、いわゆる名門を目指していたようなコースでも似たようなホールが続いたり、ホールとしての特徴がないレイアウトがあったりで、ホールを覚えるのが難しいコースも少なくない。

 

 こういうことも鍛えることでゴルフにプラスになることが多い。

 

 ホールを分類することは、分類の引き出しを持っていなくてはならないが、それは覚えているホールの量に比例するのである。つまり、たくさんのホールを覚えている人ほど、ますますホールを分類して覚えやすくなると言うものである。

 

 色々なコースに行くのはゴルフの楽しみの一つであるが、ホールの分類を知識ではなく記憶として持っていなければ、せっかくのホールももったいないことになってしまうことが多い。印象的な一つのホールを覚えることは初心者でもできる。

 

 最も簡単に分類を増やすことができる方法は、誌面で何度か書いている。徹底的に通うコースをつくることである。

 どんなコースでも良い。全く苦労せずに全ホールが思い出せ、そのホールの特徴をプレーンー記憶と一緒に理解しているコースがある者は、少なくとも18タイプの引き出しは持っているのである。

 

 簡単そうに見えるコースでも、大叩きする記憶が多々あるのは、どんな罠があるからなのか、逆に距離は長いホールなのに比較的スコアが良いのはどんな理由があるのだろうか……知り尽くしたホールが、必ずどこのコースに行っても参考になって、プレーの楽しみが増える。

 

 持っているだろうか?

 そういうコースを。

 

 コースの印象は、クラブハウスでも良いし、他の施設が影響するのも有りでも良い(個人的は関係ないと思うが)。そういうことは、プレーしなくとも分かるものだから簡単だ。

 しかし、ホールの印象を語る楽しさを堪能したければ、プレーしなければ無理だし、ただプレーするだけでなく、コースの分類をエピソードと共に持っていなければ、うわべだけの薄っぺらなものになってしまう。

 

 ホールを見る目を鍛えることは、ゴルフの技術を飛躍的に上げる可能性がある。徹底的にプレーすることによって全ホールをスラスラ語れるようになろう。その先にはゴルフの楽しさが何十倍にもなって待っている。

(2006年4月19日)