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よくわかるカラーマネージメント入門講座 前編

【第3回】光源の演色性

2015.05.25 | 島崎肇則

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光源の演色性

 

光源の色温度は色みを正しく見るために必要となる要素のひとつですが、そのほかにも演色性というものが大切になります。

たとえば店頭で見た洋服の色が気に入って買って帰ったら、お店で見た色と違って感じられたということはないでしょうか。また、スーパーの生鮮食品コーナーで美味しそうに見えたお肉の色が、家で見たらそれほどでもなかったという経験があるかも知れません。これはお店で使っている光源と家の光源で色温度が違うということも要因のひとつですが、光源の持っている波長が異なっているために、同じものを見ても違う色に感じられてしまうのです。

光源には太陽光のような自然のものと、人間が発明した照明器具がありますが、太陽光の持っている波長と、白熱灯や蛍光灯、LEDといった照明器具の持っている波長とでは成分が異なっていて、この波長にバラつきがあったりピークが異なっていると、目に入ってくる光も違ってきます。太陽光は人が感じる380ナノメートルから780ナノメートルまでまんべんなく波長が出ていますが、一般の蛍光灯やLED照明ではこの波長にバラつきがあるため、ものに当たる光の成分がそもそも違い、色の見え方も異なってしまいます[図1-5]。照明器具の出している光の成分が太陽光に近ければ近いほど、ものの色は自然に見えるようになり、太陽光に近い見え方をする光源のことを高演色性と呼びます。

光源の演色性は太陽光での見え方を100として、Ra99といったように相対的な表示で表したり、演色AAAという表記が用いられます。

[図1-5]3つのグラフは光源による分光分布の違いで、太陽光は波長がまんべんなくそろってますが、人工の光源では波長がバラついたり極端なピークが発生します。

 

通常の蛍光灯は最高でRa99というものが販売されていますが、演色性の低い一般的な蛍光灯でものを見ると、正しい色みで見ることはできません。特に近年増えてきているLED照明では光源の波長に大きな偏りがあり、通常の蛍光灯と比べても色みの鮮かさが失われて感じられたり、全体に黒ずんだように見えてしまう場合があります[図1-6]。色を見るための環境はできるかぎり演色性の高い蛍光灯を使うようにこころがけましょう。

なお、これまでLED照明は演色性の高いものがまだ登場していませんでしたが、この数年で波長を正しく出せるものが開発され、徐々に市販されてきていますので、LED照明の中には色を正しく見ることができるものも増えてきています。

[図1-6]左は演色性の高い光源の下で見たもの、右は演色性の低い光源の下で見たもので、演色性が低い場合には全体に色がくすんだり影が黒ずんで見えます。