【第3回】おまじない | マイナビブックス

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ゴルフプラネット 第16巻

【第3回】おまじない

2016.08.22 | 篠原嗣典

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おまじない

 

 タイガー・ウッズがミスをした後、10ヤード歩いている間にその怒りを収めて、平常心に戻す訓練をして完全に身につけているという逸話は、あちらこちらで聞く。通称『10秒ルール』である。

 

 タイガーの強さのファクターの内、最も抜きんでている点は、精神力だと他のツアーの選手は言う。元々の激しい気性をコントロールしているのだと実体験を交えて言われれば、何となく納得してしまう。

 

 体力や技術は追い付かないと諦めても、精神力なら自分でもどうにかなりそうだと思ったとしたら、それは恋愛で言えば『初恋』レベルのゴルファーである。精神力の差が一流と二流を決めたり、プロとアマの差だったりするのである。

 

 ゴルフにおいて、それは非常に重要なファクターであり、それ故に、単に体力や運動神経が優れていても結果に結びつかなかったりもするし、ましてや、理論に優れていることの多くは、障害にはなっても良い結果になっていかないことが多々あるのである。

 

 鍛える方法が難しいのも精神力の大きな特徴で、バーベルを上げたり、練習量を増やすような明確な方法がないのである。座禅を組んだり、聖書を読んだり、色々な方法が試された。しかし、十人十色であり、心の訓練は自らで方法を探すしかない。

 

 私の最近のお気に入りは『石』である。

 

 ゴルフの時、ズボンのポケットのどこに何を入れるのか、多くの人は決まっていると思う。私の場合は、右ポケットにティ、ボールマーカー、ライターが、左ポケットにグリーンフォーク、右後ろポケットにはスコアカード、左後ろポケットには予備のボール、というような感じである。

 

 先日、左のポケットに『石』を入れてプレーした。触っていると落ち着き、冷静になれそうな気がして、『石』をポケットに忍ばせた。そして、ティグランドや難しい選択のシーンで、そうっと左のポケットの中に手を入れて『石』を撫でた。気持ちがとても落ち着いて、とても楽しい結果が待っていた。

 

 『石』の力だと言うつもりはないが、弱い心を支えたり、崩れそうになる気持ちを回復するきっかけにはなった。

 

 ゴルフは目の前で起きる現実は過酷である場合が多い。その現実の前に、最初に反応するのは心である。

 

 普段であれば崩れていくパターンも、たった一つだけ違う動作を入れて、心の呼吸を整えることが出来ることを知った。

 

 『石』は「新選・十六茶」という清涼飲料水を買ったら、おまけに付いてきたものである(ドリームストーンと呼び、16種類の種類がある)。

 

 おまけが、予想以上の力を発揮することは多々ある。いつまで続くかわからないが、しばらくの間、私の左ポケットには何だかの『石』が入っていて、私の心の呼吸を助けているはずである。

 

 こんなおまじないも、ゴルフが楽しくなるなら大歓迎だ。

(2003年1月31日)

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