【第3回】第2章―(2) | マイナビブックス

100冊以上のマイナビ電子書籍が会員登録で試し読みできる

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 タカ国の陣。タカ王・ニソロ。タカのウサギ・マタが現れる。

 

ニソロ

 来たか、オオカミ共が…。

マタ

 その様ですね。

ニソロ

 マタ。この戦い。俺は、勝てるのか?

マタ

 それは、分からないわ。

ニソロ

 使えんな、ウサギめ。

マタ

 私達は、未来を伝えるためにいるわけじゃないんだもの。

ニソロ

 ならば、なんのために俺を見出した?

マタ

 大いなる時代のために。

ニソロ

 ふん。自らで勝ち抜けということか?

マタ

 そうなるわね。

ニソロ

 偉そうに。いいだろう。売った喧嘩だ、勝ってみせよう。我らタカの本気、とくと見せてやる。

 

 ニソロ、立ち上がりマタから自らの弓を受け取る。

 

マタ

 大丈夫。あなたは、私が守るわ。

ニソロ

 何の力も持たぬくせに。

マタ

 だって、あなたは私が選んだ王なんだもの。

ニソロ

 勝手にしろ。

 

 そこに、セタとハクトが現れる。

 

ハクト

 見ぃつけた!

ニソロ

 オオカミが…。もうこんなところまで…!

ハクト

 ここは、俺に任せろ!

セタ

 はぁ?

 

 ニソロとハクトの殺陣。ハクトが押されて矢を撃たれるが、セタが止める。

 

セタ

 はは、押されてるじゃん!

ハクト

 うるせぇ!

セタ

 選手交代っ!

 

 ニソロとセタの殺陣。セタが押されたとこに、ハクトが入り込んでくる。

 

セタ

 おい、ハクト!入ってくるな。

ハクト

 押されてたくせに。

ニソロ

 小うるさいカス共が、2匹まとめて処分してやる。

ハクト

 はん、その話し方なんだかむかつくぜ!

ニソロ

 下賤が。

 

 ニソロ、セタとハクトの殺陣。セタとハクト押され飛ばされ、気を失う。

 

ニソロ

 雑魚の分際で調子に乗りやがって。

 

 そこに、アプトとウパシが現れる。アプトとウパシはタカの兵である。

 

アプト

 大変です、ニソロ王!

ニソロ

 どうした、オオカミを撃ち滅ぼしたか?

ウパシ

 はい、オオカミのホロケゥ王が死にました。

ニソロ

 そうかそうか、よくやった!

 

 喜ぶニソロ。それに反して二人は渋い表情である。

 

ウパシ

 しかし、それが…

ニソロ

 なんだ?煩わしいぞ。

アプト

 ホロケゥ王を仕留めたのはシャチです!タカとオオカミの戦いにシャチが、シャチの一族が介入してきました!

ニソロ

 シャチだと!?馬鹿な!シャチは、新たな王が不在だったのでは!?

 

 シャチの王オルカ、シャチのウサギ・パイカラ、フムペ、シベ、サキペが現れる。

 

オルカ

 我が名は、シャチ王オルカ!オオカミ、タカ互いに武器を納めろ。この戦場はシャチが預かる!

シャチ

 オオ!

フムペ

 オルカ、立派な名乗りだ。

オルカ

 当たり前ですよ、叔父上。私は王なのですから。

 

 そこに、オオカミ軍が現れる。

 

シュマリ

 何が戦場を預かるだ!?我らが王を!ホロケゥ王を殺しておいて!!

オルカ

 悪いが、オオカミの王には私怨があってね。

シュマリ

 武器を納めさせてどうする気だ?私たちを皆殺しにするつもりか?

オルカ

 そのつもりはないが…。君たちがそれを望むのならば。

シュマリ

 おい、お前達やるぞ!

 

 オオカミ軍、シャチを囲む。

 

フムペ

 ここは、私が…。

オルカ

 いいえ、私にやらせてください。叔父上。

フムペ

 しかし。

オルカ

 私の王たる姿、ご確認ください。パイカラも。

パイカラ

 うん。

オルカ

 さぁ来い、オオカミ共。シャチの王自ら相手をしてやろう!

 

 オルカとオオカミ軍殺陣。

 オオカミ軍、ことごとくオルカにやられる。

 

オルカ

 これでも、まだやるかい?

シュマリ

 くそう…。

オルカ

 余程、死にたいと見える。

 

 シュマリ、オルカに斬りかかろうとするがユクに横から斬りつけられる。

 

シュマリ

 何をする、ユク!?

ユク

 王を失ったオオカミは敗北です。隊長ともあろうものが、怒りで我を忘れてどうするのです?

シュマリ

 王、ホロケゥ王…。(気絶する)

ユク

 失礼いたしました、シャチのオルカ王。これはこの者の意思。オオカミの意思ではありません。ほら、お前達も!

オオカミ

 (動揺しつつも)は!

オルカ

 賢明な判断に感謝する。

ユク

 はっ。

オルカ

 残るは、タカか。

 

 そこに、タカのニソロ、ウサギのマタが現れる。脇にはアプト、ウパシ。

 

パイカラ

 …タカのウサギ、マタ。

マタ

 シャチのウサギ、パイカラ。

ニソロ

 貴校が、新たなシャチの王か?

オルカ

 いかにも。

ニソロ

 我が名は、タカ王のニソロ。タカを治める者だ。

オルカ

 拝謁賜ることができて光栄です。

ニソロ

 貴校は、俺に傅くか。

オルカ

 傅くのは私だけではない。あなたも。

ニソロ

 ほう?

 

 気色ばみ、オルカに向かい弓を構えるアプト、ウパシ。

 それに槍を向け、牽制するシャチ兵達。

 

オルカ

 種族などという枠に囚われ、醜い争いしかできぬ我らに嫌気がさしたのです。

ニソロ

 それが、この世界の理だ。

オルカ

 ならば、その理を変えるまで。

ニソロ

 ふふふはははは。

フムペ

 何がおかしい?!

ニソロ

 おかしい、おかしいさ。常軌を逸している。

オルカ

 逸しなければ、大いなる時の流れを変えることなできない。

ニソロ

 ふむ。

オルカ

 渋るか?

ニソロ

 渋ろうにも、この状況では賛同せざる負えんな。

オルカ

 そうか。

ニソロ

 最後に1つ確認だ。タカとシャチは対等だ。いいな。

オルカ

 もちろん、そしてオオカミもな。

フムペ

 どういうことだ、オルカ?

オルカ

 聞け!シャチの諸君、タカの同志、オオカミの同志をよ。この戦場は我等がシャチが預かった。しかし、それもこれまで。これより、シャチ、タカ、オオカミを捨て、新たに3つの種族を纏める新たな連合国家「マシラ」をここに建国する!

 

 動揺するオオカミ、タカ、シャチの兵達。

 

ニソロ

 ふはははは、おもしろい、おもしろいぞ、シャチ王。

オルカ

 愉悦感謝する。オオカミの諸君もいいかな?

ユク

 願ってもない申し出。

フムペ

 頼もしい限りだな、パイカラ。

パイカラ

 うん。

フムペ

 どうした、パイカラ?おまえの選らんだ王だろう?もっと喜べ。

パイカラ

 そうだね…。

フムペ

 どうしたんだ?

パイカラ

 なんでもない。

オルカ

 叔父上、後処理が残っていますよ。

フムペ

 おう、分かった。

オルカ

 ほら、行くよ、パイカラ。

パイカラ

 うん。

 

 一同去って行く。

 

パイカラ

 どうして…?あのオルカは、輝いていないの。

 

 

 時空の狭間、ウサギの社。レタルが書物を書き綴っている。

 

レタル

 物語の始まりは―太陽暦二百四十五年、オオカミ国とタカ国の交戦中に、シャチ国が乱入。シャチは戦場を纏め上げオオカミとタカをその支配下に置く、しかし、シャチ王のオルカは、種族を捨てた新たな国「マシラ」を建国する。マシラ国は、3つの種族の出身者たちで治められることになる。シャチからはシャチ王であったオルカ。タカからはタカ王であったニソロ、オオカミからはホロケゥ王の王妃でキムン。それぞれが種族の枠を超えて対等な立場での統制を約束する。

      天狼ノ星「地の章」

 

 そこに、ニサが現れる。

  

ニサ

 (辺りを見回し)ここは…?

レタル

 ここは…月の裏側・時空の狭間・そして俯瞰の地。

ニサ

 時空だ?

レタル

 貴様は、オオカミのウサギの力によってここに運ばれた。

ニサ

 ウサギ…。サク!?

レタル

 そう。

ニサ

 サク!サク!

レタル

 ここにはいない。

ニサ

 おまえは…誰だ?

レタル

 我は、ウサギの女王・レタル。

ニサ

 ウサギの女王だと…?

レタル

 そうだよ、オオカミの王・ハクト。

ニサ

 なんで俺のことを知っている?

レタル

 私はすべて見てきたのだ。貴様がどう生きて、何をし、何をなして、サクを死なせてしまったのか。

ニサ

 覗き見とは趣味が悪いんじゃないのか?

レタル

 否、それがウサギの使命。

ニサ

 あぁ?

レタル

 これより、貴様は時空を遡る。

ニサ

 遡る?

レタル

 そうだ、貴様とサクが始めて出会った「時」に。

ニサ

 まさか…。

レタル

 今度こそ、4つの種族を統一する王になるといい。

ニサ

 サクに、サクにまた会えるのか!?

レタル

 そうだ。

ニサ

 そうか…。だから…。

レタル

 変えられるのか?大いなる時の流れを。

ニサ

 ああ!変えてやる!俺が時空を取り込む、時空の王になってな!

レタル

 良い心がけだ。では、いくが良い。時空の王よ。

ニサ

 俺は今度こそ、サクを死なせない…!!

 

 ニサ、時空を遡る。

 

レタル

 そうそう、1つ忠告を忘れていた、貴様の行く時空は、貴様が辿った時空とは異なるものぞ。ふふふふははははは。