【第2回】第2章―(1) | マイナビブックス

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天狼ノ星 地の章 上演台本

【第2回】第2章―(1)

2015.05.01 | 河瀬仁誌丸山喜大 | 

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 オオカミとタカの国の境界、オオカミ軍の宿営地である。

 焚き火で大きな影が映っている。ハクトとセタが、撃ち合いをしている影である。

 オオカミの獲物は爪であり、体術と組み合わせた独特の戦い方である。

 2人は、オオカミ国の兵士だ。空は明るみかけている。

 

シュマリ

 まさかずっとやっていたのか。セタ、ハクト。

 

 そこに、シュマリが現れる。シュマリは、オオカミ国の軍隊長である。

 

セタ

 これは、シュマリ隊長。

ハクト

 お疲れ様です。

シュマリ

 おいおい、空を見てみろ?

セタ

 あ、やっべ明るい。

ハクト

 本当だ。

シュマリ

 気づかずにやっていのか?

ハクト

 ええ、まぁ。

セタ

 やっぱりなんか高ぶっちゃって。

シュマリ

 不安になるな。

セタ

 何故です、隊長?

シュマリ

 今日、使いものになるのか?

ハクト

 当たり前ですよ!

シュマリ

 どうだか。眠っていないんだぞ?

セタ

 一人で千人の働きをしてみせます!

ハクト

 俺も!

セタ

 お前は、せいぜい一人で五百人程度だろ?

ハクト

 それって、お前よりも俺が弱いってことにならないか?

セタ

 だって、そうだろ?

ハクト

 そんなことないだろ。

セタ

 そうか?

ハクト

 そうだよ、いつも互角じゃないか!

セタ

 俺が手加減してやっていることに気がついてないのか?

ハクト

 嘘だ!いつも、いっぱいいっぱいじゃないか!

セタ

 嘘かどうか確かめてみるかぁ?

ハクト

 ああ、確かめてやるよ!

シュマリ

 よせよせ、2人とも。これ以上体力を消耗してどうする。

ハクト

 でも、セタが!

シュマリ

 やめろ!では、今日、どれだけの敵を倒すかで決着をつけろ。

セタ

 それでいいだろ、ハクト?

ハクト

 ちぇ、分かったよ。

シュマリ

 分かったら、すぐに配置につけすぐに進軍が始まるぞ。

2人

 はい。

シュマリ

 杞憂か。こいつらは全く…。(太陽の昇っている様子を見つめ)…夜明けか。

 

 日が昇る。オオカミの軍が続々と現れる。

 ハクト、セタ、ユク、エサマン、ペウレプ、その他オオカミが数名。

 シュマリの演説が始まる。

 

シュマリ

 聞け!オオカミの勇士よ。これより我々は我等がオオカミ王のホロケゥの命にとり、タカ国の本陣に攻め入る…!これに勝てば長かったタカ国との戦いもこれで終わりだ。

オオカミ

 オオオ!!

シュマリ

 オオカミに喧嘩を売った愚かなタカ王ニソロと、愚かな王を選んだタカのウサギをホロケゥ王のが眼前に連れて引き出すぞ!

オオカミ

 オオオオ!!

セタ

 なぁ、やっぱりどっちが王をやれるかの勝負にしないか?

ハクト

 乗った!

シュマリ

 馬鹿者、殺すのではない、捕らえるのだぞ。(降りながら)

セタ

 分かってます、言葉の綾ですよーだ。

シュマリ 

 いい。お前達は、私と共に森へ進軍する。敵の本隊に突入する。気を引き締めろよ。

3人

 はっ!

セタ

 俺たちは?

シュマリ

 セタとハクトは、分隊と共に背後の崖を昇れ。

ハクト

 もしかして、アレ?

セタ

 無理でしょー。

シュマリ

 折角、タカ王を捕らえる好機をくれてやろうと思ったのにな。

セタ

 だって、流石にあれは…ねぇ?

ユク

 ならば、ここは私が。こういうことは私の方が向いています。

シュマリ

 おまえは駄目だ、ユク。

ユク

 なぜです?

シュマリ

 お前は殺してしまう。

ユク

 (ハクト達を見て)中途半端な腕がいいそうだ。

 

 気色ばむセタ。

 

ハクト

 やります!

セタ

 ハクト?

ハクト

 セタは、ここに居たらいいぞ。見てろよ、ユク!

セタ

 おい、ハクト!

シュマリ

 では、ハクトに任せた。

セタ

 行く、行きますよ、俺も行けばいいんでしょ?

シュマリ

 では、行くぞ!

オオカミ

 オオ!

 

 オオカミ軍の一団走り去る。

 進軍するオオカミ軍。

 そこにタカ軍が登場。

  

アプト

 このオオカミ共が…!

 

 一斉に矢を放つタカ軍。オオカミの一人が倒れる。

 

シュマリ

 奇襲か!やれ!

 

 オオカミとタカの戦闘。オオカミが優勢。

 戦闘後、オオカミ走り去る。