【第2回】晴れても、雪は…… | マイナビブックス

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ゴルフプラネット 第8巻

【第2回】晴れても、雪は……

2014.12.15 | 篠原嗣典

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晴れても、雪は……

 

 3回目のスコア提出のためメンバーコースに予約の電話を入れた。

「どうも、メンバーの篠原ですが」

「あっ、いつもお世話になっております」

 今の所、片手で数えられるほどしかない自らがメンバーになっているコースの自慢できる点が、会員専用予約電話にでる女性の対応の良さである。

「明日の金曜日、一人でいきたいのだけど、入れる組ありますか?」

「……」

 嫌な沈黙の後、

「8日に降った雪がまだ残っていて、クローズなんですよ。一応、9日からオープンするために除雪作業しているんですけど……」

 

 2001年1月8日。関東地方に雪が降った。

 都内でも積もるほどだったので、山間は大変な積雪であったことは安易に想像できる。しかし…… 10日たってもプレー可能にならないほど降り積もったとは思わなかった。

 

 確かに、東京でも連日の最低気温が零下になる寒さだった。北に行き、高度が上がるほど、それは激しかったであろう。感じの良い予約係の女性も、申し訳なさそうに弁解していた。

「……雪が凍ってしまって、どうにもならなかったみたいで……」

 

 ちなみに、天気予報では1月20日夜半から関東地方は雪と予想され、更に被害を拡大する可能性も出てきた。ご愁傷様である。私のスコア提出計画も、もう一度立て直しである。

 

 凍った雪に覆われ冷たくなっている愛おしいマイコースを想像したら、急に雪の思い出が蘇ってきた。

 

 約15年位前に、大雪が降った年があった。大雪で関東周辺のゴルフコースは軒並みクローズした時、片っ端からコースに電話して、どうにかラウンドしようとあがいていた。結局、よく知っている仲良しなコースが、最低限しか除雪できていないので良ければ…… という条件でラウンドできることになった。

 

 当日のコースは、結構大勢の人がいて、ゴルファー魂ここにあり、と嬉しくなったりもした。その前日から仮オープンしていたらしく、中には昨日も来ちゃったよ、なんて話している人もいた。

 

 スタートホールに行ってみてビックリした。ティグランドとフェアウェイ、そして、グリーンだけが、かろうじて見える。バンカーもラフも、積み上げられた雪の下である。雪の壁に囲まれた夢のようなコースだ。ピート・ダイも真っ青である。

 

 しかし、ボールが曲がれば雪の中にズボッと埋まってしまい、探すことすらできない。ご一緒した他の3名とボールが雪に入ったら1ペナでプレーしましょうと約束して、ゴルフもどきなプレーが始まった。

 

 スコアは悪かったが、雪でゴルフができないストレスからは解放された。

 

 記憶が正しければ、それから1週間位で雨が降って雪は一気に溶けてゴルフ天国な日々が戻ってきたと思う。

 

 後日、そのコースに行った時に、研修生がニヤニヤしながら寄ってきた。手にしたボールを私に見せる。

「ボール、5個、無くしたでしょう?」

よく見ると、手にしているのは、私のネーム入りのボールだった。

 

 雨が降った翌日、彼は研修生仲間と早朝暗いうちから各ホールを回りボール拾いをしたというのだ。驚く無かれ、250個もボールがあったという。その中の5個が、私のボールであったという訳である。

 

 それからしばらくして、私はボールに自分の名前を入れるのをためらうようになった……。

 

 雪の季節も今がピークであろう。雪でなくて、雨になれば嬉しいと思いながらも、寒い地方の人の気持ちが少しだけ分かったような気がした。

 

 そういえば、寒い地方に住んでいるゴルファーでモーレツな人がいるのだが、それは、また、別の話……。

 

(2001年1月19日)