【第2回】2グリーンか1グリーンか | マイナビブックス

100冊以上のマイナビ電子書籍が会員登録で試し読みできる

ゴルフプラネット 第6巻

【第2回】2グリーンか1グリーンか

2014.12.15 | 篠原嗣典

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

2グリーンか1グリーンか

 

 2グリーンは高温多湿の日本が生んだ文化であると、ある設計家の講演で聴いたことがある。なるほどなぁ、と思った。約20年前の日本では、高麗がメイングリーンになっているゴルフ場はたくさんあったのだ。それを肯定する意見は、とても自然に私の中に浸透した。

 

 10代の頃は、夏休みに大きな試合があった。グリーンは高麗芝が当然だった。夏の芽がきついグリーンには、カップの向こう側に当たって上に跳ねてから沈んでいくような強気なパットが有効だった。私は、リストもショルダー(肩)も使うパッティングをしていた。

 

 20代になると徐々にベントグリーンの需要が増えていった。1980年代後半から、日本のグリーンはTVで映し出されるトーナメントの影響と、ベント芝の改良で急激に速くなりだした。速くて美しいグリーンを持っているコースの評価が上がり、遅いグリーンのコースは評価を下げていった。

 

 バブルがフォローとなった。ゼネコンがベント芝を買いまくって、値段の高騰と品不足から、インチキな芝生をコースに使ってしまう所もあり話題になった。国内にはベント1グリーンが正しい流れであるという認識が中心になっていった。グリーンの高速化は、私のパットのフォームも変えた。今では、リストを使って打つなんて怖くてできなくなってしまった。

 

 現在、ベント1グリーンのコースが国内のゴルフ場の何割になるのか、正確には分からない。でも、関東以北ではベント1グリーンのコースが1割を越えるのではないかと推測する。

 

 私はこの問題について、正直な話、どちらが良いか自分でも分からない。どちらにも良い点はある。

 

 例えば、2グリーンのコースは一つのグリーン面積を小さくできるので、狙いが小さくなってグリーンに乗せるのが難しくなる。これはプラスポイントだと思う。だが、同時にマイナスの面もある。小さなグリーンで大きな傾斜を作ることができないのである(100メートルに対して4メートルの起伏がボールを止める限界といわれている)。

 

 日本のプロと海外のプロを比べたときに、ロングパットの正確さで大きな差が出るのは、2グリーンのために大きな傾斜と長いパットに不慣れである点を挙げる見識者は多い。

 

 1グリーンはグリーンに乗せるのは問題なくても、大きな傾斜や、時として40ヤードなどというショットみたいなパットをする必要性がある。これを面白いと思えれば、1グリーンはグリーンの上でも楽しめる。また、1グリーンはグリーンに向かって目標が狭くなるというゴルフ本来の姿であるという意見も一理ある。ただし、国内コースの場合は、当てはまらないところの方が圧倒的に多いと思うが。

 

 賛否両論あるが、時代はベント1グリーンに一直線である。

 

 2グリーンから1グリーンに変更するコースもある。

 

 Nというコースがある。難しすぎず、簡単すぎず、バランスの良いコースであると思っていた。しかし、良く知っているコースでは初めて、Nコースは2グリーンから1グリーンへ変更したのである。バブルの末期の頃だった。

 

 結果は、高麗グリーンとベントグリーンをつなげて、高麗をベントに張り替えたものだった。異常とも思えるほど大きなグリーンができ上がった。ステーキが好きな人の前に、好きだからと言う理由だけで新聞紙大のステーキを出して、喜ばれると思うだろうか?

 

 今では、徐々にグリーンを小さくし、その分面積が大きくなったエプロンが良い趣を出しているとメンバーの方はおっしゃっているが、私は見ていないので何ともいえない。Nコースの場合は、笑える例であると思うが、実はそのようなコースがゴロゴロとあるようで、同じ話をあちらこちらで耳にする。

 

 良くできているコースでは、2グリーンの時に、メイングリーンとサブグリーンでは違うコースに来ているような錯覚を起こすものがあるという人もいるが、錯覚を起こすような衝撃的な経験は未だにしたことがない(強いて言えば、川奈の富士コースは相当に違うが)。

 

 メンバーになったコースも2グリーンを止めて、1グリーンにするそうである。重鎮のメンバーの話では、21世紀中にできれば良いと思っていればという。しかし、面白いなぁ、と思ったこともあった。メンバーの中に1グリーン化に反対の人が結構いるというのだ。理由は聞かなかったが、時代の流れに逆らうだけの価値を私はまだ発見できていない。

 

 自分の所属しているコースの話になると、1グリーンが良いなぁ、と感じる自分を考えれば、どちらかといえば1グリーンが好きだという結論になる。

 

 ベントでプレーするのもゴルフだし、高麗でプレーするのもやはりゴルフである。

 あまりこだわらずに、ただひたすらに楽しむのが、本当は最も正しいのかもしれない。

 

(2001年1月17日)