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ゴルフプラネット 第6巻

【第1回】まえがき/L93という芝生の考察

2014.12.15 | 篠原嗣典

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まえがき

 

 第1巻と同じで、本書はコースのお話です。

 

 Golf Planetはゴルフ談義を活字にしたものだと説明していましたが、ゴルフコースのゴルフ談義は非常に広い範囲で通じるものなのです。例えば、技術論や用具のゴルフ談義は、腕前が違うとちんぷんかんぷんだったりすることがよくあります。腕前が同じぐらいの仲間ならそれでも盛り上がるのですけど、実行を伴うものだけになかなか深いところまでいかないものです。

 

 それからすれば、コースの話は知識と眼力があれば十分で、伝達もしやすいのでゴルフ談義として盛り上がりやすく、その時間が勉強にもなって身につきやすいという特徴があるのです。

 

 スコアに直結しないと誤解されているので、コースについて勉強する人はほとんどいません。ディープなゴルフ談義をしたことがないという人は、聞き出してみると不勉強であることが多いのです。

 

 ゴルファーとして『やるなぁ』と一目置かれるのは、コースの話がきっかけになるのが一番多いのです。

 

 ゴルフ談義を楽しくするために、または、ゴルファーの処世術としてコースの話を楽しんでもらうために、本書はあります。

 

(2013年3月)

 

 

L93という芝生の考察

 

 偶然といえば偶然なのだが、年末に2回行った岩間CC、年始に行ったTPC市原後楽園、共にグリーンが特殊な芝生だった。岩間の場合は、昨年、高麗グリーンをベントに張り替えたと公式に発表しているし、スコアカードにも芝生の名前を載せるほどの力の入り方である。TPC市原の場合は昨年オープンしたコースであるから、両者は同じ時期に話題になっている同じ芝生でグリーンを造った訳である。

 

 この芝生の特徴は独特の発色(深い緑色、小学生用の水彩絵の具の緑を想像して欲しい)と、高温多湿に強い性質だと言う。

 

 個人的に感じたのは、葉の1枚1枚の面積が大きく、伸ばし気味のカットでもかなり速い転がりを実現できるようだということだった。グリーンで実際にボールを打ってみると、芽があるような気がした。

 

 岩間ではコース関係者が「高麗芝の処理をちゃんとしなかったので、少し芽が残っているようです……」と弁明していた。疑問は感じたが、それもまた道であると思い、気にしなかった。

 

 数日後、ケーブルTVで年始に行くTPC市原で行われたマッチを観戦した。コースデータで、グリーンがL93だと知った。それも、画面には「L93 bamuda」と出ているではないか。バミューダグラスといえば、マイアミ等の高温地域で使用されている海外版高麗芝のことである。過去にオーストラリアで、バミューダグラスのグリーンに泣かされて、数カ月の間パターの不振に悩んだ経験がある私としては、鳥肌が立つ響きであった。出場していたプロも盛んにパットのラインが分からないと強調した。

 

 一気に全てが結びついた……

 

 高麗芝の処理等ではなく、根本的に芽がある芝生なのだ。見た目はベントグリーンであることが、事態をより複雑にしている。バミューダグラス、恐るべし。

 

 TPC市原でプレーしたときは、ある程度の覚悟を持ってやっていたので、混乱はしなかった。しかし、読んだラインの8割はずれて転がった。当然、結果も良いはずがない。

 

 しかし、面白い現象も見ることができた。

 

 パターの上手い下手は、色々な基準があると思う。ラインを読む上手さ、思った通りに打てる上手さ、その二つはレベルが上がるほど両立を求められる。特に1ピンの距離内では、読みと打ちは両立が絶対条件である。

 

 しかし、そんな中で同伴者のTさんは、生涯最低のベストパット数でラウンドしたのである。通常だったら、微妙に外れるパットが入ってしまったホールは一つ二つではなかった。つまり、読みと打ちが未熟なケースでは、博打ではあるが、結果が良くなることがあるようである。彼にとっては、本来であれば、読み違いで入らないパットが入ったり、打ち違いで外れるものが入ってしまったりするのかもしれない。でも、ゴルフの神様は気まぐれである。ちょっとしたイタズラをされただけなのに、過剰に反応しているだけのことかもしれないが。

 

 いずれにしても、L93はかなり伸びている状態でもそれなりに速いから困ってしまう。

 

 TPC市原へは今後どの程度行くかは分からないが、少なくとも岩間には何度となく行くことになると思う。

 

 芽に関しては、何度か行けば、グリーン毎に記憶してしまえば、それで解決である。そうなれば、熟練のライバルたちの四苦八苦を後目に、グリーン上で差をつけることも夢ではない。

 

 プラス思考に考えていくしかない。

 L93について、読者の方々からもレポートがあれば、この件は続編を書くこともやぶさかでないので、よろしくお願いしたい。

 ケースバイケースでは、時間が経てば芽がなくなるという可能性もある。今後の成り行きを見守っていきたい。

 

(2001年1月10日)