木曜日、シフトが入っていた私はバイトへと来ていた。私は従業員の部屋に貼ってあるシフト表を見て、安堵の溜息をつく。今日も須々木さんとは被っていない。
「おはようございまぁす」
扉が大きな音を立てて開いた。樋口さんの声だ。私は内心げんなりしたが、顔には出さずに挨拶を返した。
「あ、上崎ちゃんっ。話したいことあったの」
「何でしょうか」
「日曜日の王子様のことっ」
樋口さんは興奮しているのか、鼻の穴を膨らませて喋っている。補聴器をしていなくて良かった。この声を増幅させられたら、脳みそがシェイクしたに違いない。