【第3回】投資信託 | マイナビブックス

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3 投資信託

 

 私は投資信託を買いません。よくもこんな商品を、天下に名の知れた有名金融機関が、恥ずかしげもなく、「素晴らしい商品」だと宣伝して販売しているなあ、と感じています。

 投資信託を購入する際には「販売手数料」がかかります。また、定期的に「信託報酬」も払わなければなりません。 

 販売手数料が投資信託を購入するときに一度だけ発生するコストなのに対して、信託報酬は、投資信託を保有している期間ずっと発生し続けるコストです。投資信託を運用してもらう対価として、投資家が運用会社に報酬を支払っていると考えればよいでしょう

 例えば500万円を元手に「販売手数料3%、信託報酬2%」という投資信託を購入するとしましょう。

 まず、購入の時点で販売手数料の約15万円が費用として発生します。

 仮に、初年度、この投資信託の運用成績がプラスマイナスゼロだったとしましょう。

 それでも一年間で2%の信託報酬、つまり約10万円を支払わなければならないのです。(ちなみに、この投資信託の運用成績がマイナスだったとしても、運用資産の2%の信託報酬は払わなければなりません。)

 投資信託を売っている金融機関は、購入前においては、我々投資家に対して、平身低頭、商品の宣伝、勧誘を熱心に行い、時には自宅に電話までしてきます。

 ところが、ひとたびその投資信託を買ったなら、手数料を払って買ってあげたにも関わらず、さらに言うと、金融機関は、自分達はノーリスクで投資しているにも関わらず、「運用してくれてありがとう」の意味をなす信託報酬を払わなければならない、どう思いますか?

 百歩譲って、「プラス収支なら報酬を下さい。マイナスなら報酬なんてとんでもないです」という条件ならまだしも、結果がどうあろうとも、「結果に責任は取りませんが、自分達の報酬だけはしっかりもらいます」、そんな馬鹿げた話が投資信託だと思います。

 ちなみに先ほどの例で、仮に初年度の運用成績がプラスマイナスゼロだったとしたなら、

500万円―販売手数料15万円―信託報酬10万円=475万円

 500万円の資産は、1年後には475万円になっているわけです。

 翌年の元手は475万円ですから、この年に年間7%の運用益を出して、やっと508万円。そこから、信託報酬を引くと約500万円。2年間、無駄な時間を過ごした元金が戻ってくる計算です。

 しかしながら、この計算は年間7%の運用成績をあげる事が前提です。運用成績7%というと、なかなか素晴らしい数字です。

 確かに、数ある投資信託の商品の中には、年間数10%の運用成績を出している商品もあります。ただし、あくまでその一年の結果であり、来年はどうなるか分からないし、数ある商品の中の一部だという事は理解しておいて下さい。

 そもそも、投資信託を実際に運用しているファンドマネージャー達に、毎年コンスタントに10%以上の利益を出す事は不可能です。

 もし彼らにそんな結果を出せる能力があるなら、投資信託のファンドマネージャーはしていません。もっと破格に高待遇を受ける事ができる、ヘッジファンド等に移籍しているでしょうし、誘われています。

 投資信託のファンドマネージャーも、普通のサラリーマンです。彼らがポートフォリオを組み、実際に運用するには、社内の様々なルール、幾人もの上席者の承諾を取ってからの運用です。その道のプロ達が、切磋琢磨しながら、息つく間もなく闘っている「相場」という厳しい環境の中で、面倒な社内ルールや多数の外野の意見を調整しながら投資を行わなければならない環境下で、毎年確実に収益を上げる事自体、かなり無理があると思います。

 それでも、皆様の中には、過去に投資信託でいい思いをして、もう一回投資したいと考えている方もいるでしょう。その方達は次の点にだけは気を付けて下さい。

「分配型投資信託」という商品があります。これは名前のごとく、投資信託を持っていれば、定期的に分配金をくれる、というシステムですが、これだけはお勧めできません。よく考えてみて下さい。

 この分配金の原資となっているお金は、決して金融機関がサービスでくれているわけではなく、皆様自身が投資した元本が原資です。

 年間5%の分配金が約束されているとしたなら、5%以上(正確には信託報酬分があるのでもっと上の数字)運用成績があってこそ、初めて元本割れしなくてすむのです。

 先の例で考えると、500万円を元手に「販売手数料3%、信託報酬2%、分配金年5%」という投資信託に投資したとしましょう。

 仮に初年度の運用成績がプラスマイナスゼロだったとしたなら、

 500万円―販売手数料15万円―信託報酬10万円―分配金約25万円=450万円になってしまいます。

 翌年においては、その投資信託の元本は450万円です。年利15%の運用成績を達成したとしても、450×1・15=517万5千円。信託報酬と分配金を引くと、元本自体は500万円を切ってしまいます。

 つまり、分配金が入ってくるというのは、一見素晴らしい話に聞こえますが、ただ単に、自分の資産を食いつぶしているだけなのです。しかも分配金の分だけ、原資が減っているわけですから、より高利回りで運用しなければならなくなるのです。乱暴な言い方をすると、「タコが自分の足を食べているのと同じ」かもしれません。

 ちなみにタコはお腹がすいて自分の足を食べているのではないそうですが。