【第7回】ふたつの梨
2016.12.06 | 川口世文
7 ふたつの梨
翌日の日曜日、不動家に来客があった。シャッターを下ろした店の裏側で留守番をしていた花梨が応対に出ると、扉の外に立っていたのは一ノ瀬恵梨だった。
「エリー──どうして?」
「ごめんねぇ、お休みのところ──お兄さん、いる?」
恵梨は恐縮したようにいった。二人とも高校に通っていたころのスタンスを、すぐには思い出せないでいた。
「午前中に出かけちゃったけど……ひょっとして約束していたの?」
正義は秋葉原に買い物に出かけていた。花梨の表情が曇ったのを見て恵梨が慌てて否定した。
「そうじゃないの、何も連絡しないできちゃったの……いないなら、またくる」
「そんな……とにかく上がってよ」
「いいの?」