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ロケットボールズ完全使いこなし術!

【第1回】ロケットボールズはなぜ飛ぶのか①

2014.12.08 | マーク金井

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第1章

ロケットボールズはなぜ飛ぶのか①

 

 本書は売れに売れているテーラーメイド社のフェアウェイウッド「ロケットボールズ」(ROCKETBALLZ/RBZ)を使いこなそうというのが趣旨だが、それにはまず「ロケットボールズ」というブランドが登場する背景から説明する必要があるだろう。

 もともとはテーラーメイドには「バーナー」(BURNER)というセカンドブランドがあった。当初「バーナー」は低価格で、割安感のみの事実上のセカンドブランドだったが、2007年からテーラメイドの独自の戦略を開始している。

 当時の主力ブランドの「R7」は可変システムで高価格、セカンドブランドの「バーナー」はシンプルで低価格、どちらを使うかはプロに委ねて、大々的に打ち出し、どちらも主力の2枚看板的な位置づけにして、一躍「バーナー」ブランドは人気となったのだ。もちろん2007バーナーシリーズの出来が非常に良かったこともヒットにつながった原因の一つ。

 しかしこの人気ブランド「バーナー」を、2012年から突然やめてしまった。普通、不人気ブランドならまだしも、人気ブランドをやめることは無い。コレには理由がある。アメリカの大手スーパーマーケットにこの「バーナー」ブランドを売ってしまったのだ。

 そして新たに立ち上げたのが、「ロケットボールズ」というブランド。何の変哲もない「ロケット」と「ボール」という単語を結びつけただけだが、この名前だけで、飛ぶイメージがしないだろうか? ボールがロケットのように飛ぶ。まさに言葉のマジック。僕はこのブランド名のイメージだけで、3~5ヤードは確実に飛距離を伸ばしていると感じる。それぐらいイメージというのは大切な要素なのだ。

 更に心理的効果に訴えたのは、ソールのスリット(溝)。これはご存じの方も多いと思うが、アメリカでは人気のアダムスゴルフの考えた特許で、テーラーメイドはロケットボールズ発売と前後して、会社ごと買収している。

 このソールのスリットがいかにもスプリング効果がありそうで、ボールの初速を出しそうなイメージを醸し出している(実際にはフェースの反発力にはルール規制があるので、本当にスプリング効果が出ていたらルール違反となる)。

 僕が感じるのは、絶妙なネーミングとソールのスリットが、いかにも効果がありそうな、モヤモヤっとした今の絶大な「飛ぶ」というイメージを創りだしたということ。しかし、誤解がないように最後まで読んで欲しいのだが、ロケットボールズのフェアウェイウッドの飛びの秘密はちゃんとある。

 まずヘッドの大きさ。197cc(TOURモデルは174ccと小ぶり)という大きめのヘッド形状は、テーラメイドでその昔大ヒットした、ツアープリファードというドライバーより少し大きいぐらい。長さもほぼ同じぐらいだ。安心感があり、打てそうと思える大きさになっている。

 ヘッドが大きいということは、ヘッド内部で調整しない限り重心距離は長くなる。ロケットボールズの重心距離は32.25mmとフェアウェイウッドとしては長く、飛距離に有利だ(ロケットボールズTOURは32.5mm)。

 そしてとても大切な要素がある。ヘッドの重量だ。テーラメイドはウッドを作るのが非常に上手いメーカーというのは、皆さんも御存知の通りだと思う。その秘密の一つはヘッド重量が重いということだと、僕は思っている。しかし何故か、テーラメイドは一度もそれを謳っていないのだ。

 ドライバーにせよ、フェアウェイウッドにせよ、歴代のヒットモデルは全てヘッド重量がしっかりある。ロケットボールズも例外ではなく、重量が214.7g(TOURは213.1g)としっかり重量がある。物理の公式をうろ覚えの方も多いだろうが、重いと衝突エネルギーが大きくなるということぐらいは皆さん覚えているはず。そして重さは慣性モーメントの大きさにつながるのだ。

 つまりロケットボールズのヘッドは、飛ばすという要素を考慮した基本に忠実な設計で、まさに「飛ぶヘッド」だということが言えるだろう。

 ユーザーが「飛びそう!」というイメージをうまく作り、そして本当に飛ぶ要素が揃ったヘッドというのがロケットボールズの正体だと、僕は考えている。

 

 

【図1】ヘッドのソールにあるスリット。いかにもスプリング効果でボールの初速が出る=飛びそうな雰囲気を醸し出している(実際はそのような効果は無い)。

 

【図2】シャフトの中心線からフェース上の重心位置との距離を重心距離という。重心距離が長くなると操作性は劣るが、飛距離性能は高くなる。

 

【図3】フェース上の重心位置を測定したところ。左がノーマルモデル、右がTOURモデル。重心距離はノーマルモデルが32.25mm、TOURモデルが32.5mmとフェアウェイウッドとしては長く、これが飛距離性能につながっている。