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世界の注目デジタルクリエイターたちが実践する「プロジェクトの進め方」 デジタル系カンファレンス「DDD」レポート by シフトブレイン

はじめまして、許 源根です。僕は韓国出身で、デジタルプロダクション シフトブレインで6年フロントエンドを担当しています。

僕は6月1日~3日の3日間、イタリアのミラノで行われた『DDD2017+OFFF (Digital Design Days 2017 +OFFF Milano)』というカンファレンスに参加してきました。ここで海外のデジタルエージェンシーやスタジオの実績、プロジェクトの進め方など、かなり興味深い内容を聴くことができたので、今回このカンファレンスで得た知見を、海外のクリエイティブ事情に興味を持つデザイナー・ディベロッパーのみなさんに紹介できたらと思い、今回WDOnlineさんにこのような場をいただきました。

 

DDD+OFFFについて

 

 

『DDD』とは、2016年10月にスタートした、今回が2回目となるデジタル系カンファレンスイベントです。前回に引き続きスペイン発人気デザインカンファレンスの『OFFF』とコラボレートし、最新技術をつかったデジタルショーケース・インスタレーション、ワークショップや、カンファレンス後には参加者同士のネットワーキングイベントが行われました。

参加者は主にヨーロッパのデジタルエージェンシーやスタジオの現場で活躍しているクリエイターやクリエイティブを勉強している学生で、DDDの運営発表によると今回は52カ国(!)から1688人が参加したとのこと。

僕も今回は世界で知られた名だたるプロジェクトを動かしている開発者や会社が登壇するということで、彼らが今どんな技術をつかってどのような作りかたをしているのかを直接聞いてみたいと思い、DDDへの参加を決めました。

会場はミラノの中心地にある倉庫のような建物を、2つのカンファレンスルーム(写真上・中)とワークショップルーム(写真下)として使用

カンファレンスに参加している人の割合はクリエイター 85%、学生 15%。クリエイターの内訳は会社に所属が65%、フリーランスが35%とのことでした。この情報を発表してくれたスピーカーのひとりであるDesigner & Creative DirectorのClaudio Guglieri氏はMicrosoftをはじめとした大きなプロジェクトに参加していて、多方面で活躍しているクリエイターです。

以下、カンファレンスで登壇した個人的にもインパクトがあった会社/クリエイターの紹介をします。

Behance (https://www.behance.net/)

Behance デザイナーMatias Corea氏
アメリカのNYを拠点とするデザインスタジオで、同社と同じ名前のポートフォリオサイト『Behance』が有名です。特に海外のクリエイターはこのBehanceに自分の実績を載せて世界へと発信しています。日本でもDribbleと並んで知られているサイトです。スピーカーはBehanceの創業者でありバルセロナ出身のデザイナーMatias Corea氏。2016年6月に行われた『Awwwards NYC』でもスピーチをしていたので、僕が彼のスピーチを聴くのは2回目となります。その時と同様、はじめのタイトルは ”HOLA!” から始まり、彼自身の経歴を実際の案件を例に挙げながら話してくれました。
Behance -- Best of Behance.jpg
ポートフォリオサイト Behance (https://www.behance.net/)

Epic(https://www.epic.net/)

EpicのFounder Benoit Rodeux氏
ベルギーのクリエイティブエージェンシーです。彼らは提案のはじめの段階からデザイナーとディベロッパーが密に関わりプロトタイプを作成しクライアントに提案するスタイルを信条としていて、その実例なども混じえて紹介していました。Epicのスタッフは福利厚生として2年間に3回ほど、デザインカンファレンスに参加することができるらしく、常に最新の情報を追いかけられるよう会社がサポートしているようです。

Your Majesty(https://yourmajesty.co/)

Your Majesty Founding partner James Widegren氏
NYのクリエイティブエージェンシーで、WebGLで開発したゲームのサイトを紹介してくれました。馬に乗って前に進みながら障害物を避けるという一見シンプルなゲーム(下写真)ですが、当たり判定のプロトタイプや臨場感を重視し背景のイメージを何回もリタッチしていることなど、かなり作り込まれていることがわかりました。
Cavalier- Conqueror of Excellence - Your Majesty Co .jpg
Cavalier: Conqueror of Excellence (https://cavalierchallenge.com/)

Tavo (http://www.tavo.es/studio/)

Tavo Ponce氏
Tavoはスペインのマドリードにある3D スタジオで、昨年話題となったAwwwards NYCのPOPなプロモーション動画を制作した会社。クライアントに提案した3Dアニメーションを見せながら、ワークスの紹介をしてくれました。提案においても複数のパターンを作成して、クライアントに選んでもらう方法が特徴的でした。

Echolab (http://www.echolab.tv/)

Echolab設立者 Gavin Little氏
アイルランドにあるサウンドデザインスタジオです。Echolabを設立したGavin Little氏がスピーチ。彼はGraphic designerからSound Designerに転身したユニークな経歴の持ち主です。あまり日本では馴染みのないSound designについて、いままでの実績に加え、実際に彼らがサウンドエフェクトを制作した2013年公開の映画 『Gravity』の予告編の制作過程を見せながら説明してくれました。ほかに手がけた予告編の作品として、映画『Rogue One』、『Logan』、『X-Men』、映画以外だと、ショートフィルム用のサウンドや広告のためのオーディオブランディングなど、豪華な実績のある会社でした。彼らのサウンドデザインについて深く知ることのできる良い機会となりました。

Moment Factory (https://momentfactory.com/home)

Moment Factory Matei Paquin氏
2001年に設立された、東京含め世界4か所に拠点を持つ、世界最高峰のメディアアート集団。Installationを多く手がけています。彼らの実績であるRed hot chili peppers のコンサートのためのメディアアートや、サグラダファミリアのプロジェクションマッピングを例にあげスピーチ。特にサグラダファミリアの作品は16台ものプロジェクターを使い、多くの技術者が関わったそうです。(制作詳細はこちら。)

以上駆け足で紹介してきましたが、今回登壇した海外の会社のスピーチを聞いて、個人的にもいくつかの共通点が見えてきました。

1つは、デザイナーとディベロッパーの関係性です。案件の初期の段階からおのおのが協力し合ってプロトタイプを一緒につくり、それをクライアントへの提案に入れ込んでいる会社が多かったように思います。時間や予算の関係もあるためその文化が浸透していない日本で簡単にできることではないとは思いますが、今後日本のエージェンシーでも「デザイナー/ディベロッパー協力型」の提案方法が増えるようになれば、 世界で通用する会社がいままで以上に増えるのではないかと感じました。

もう1つは、海外の数多くの会社が仕事に向き合うときに考えていると言われている理念 "Stay Flexible”。直訳すると「柔軟な姿勢を保つ」という意味ですが、これはなにかを作る上でクリエイターにとって非常に大事なことだと感じます。新しい技術の使い手でいるためにはどんどん更新される技術に対して柔軟である必要があります。このカンファレンスであらゆるスピーチを聞いて、開発者として日々"Stay Flexible”を意識しなければと改めて姿勢を正される想いでした。

またWebGLの事例が増えたことも、全体の傾向としては挙げることができると思われます。以前から技術としてはあったものの、ここ数年間で実践において使いこなす技術者が増え、情報も豊富になってきたことから、よりWebGLを使ったクリエイティブ作品が多くなっているだろうと推測できます。

今回のDDD+OFFFカンファレンス参加を通じ、世界的に注目されるクリエイティブな会社がどのようなプロセスでアウトプットをしているのかということや、彼らのビジョンを知ることができました。僕にとってはSound designerは未知のフィールドではありましたが、とても刺激的だったので、今回インプットしたことを意識して行動に移し、もっといい作品を作っていきたいと思います。

他の参加した会社名前とサイトのURLです。どの会社もかっこいい作品を作っています。是非ご覧下さい。

FIELD (https://www.field.io/)
UNIT9(https://www.unit9.com/)
LO SIENTO(http://www.losiento.net/
FROM FORM(http://www.fromform.nl/)
WATSON DG(http://watsondg.com/)
MONOCHROME(http://www.monochrome.paris/)
ACTIVE THEORY(https://activetheory.net/)
FUTUREDELUXE(http://futuredeluxe.co.uk/)
ONUR SENTURK(http://www.onursenturk.tv/)
CLAUDIO GUGLIERI(http://www.guglieri.com/)
IMMERSIVE GARDEN(http://www.immersive-g.com/)