2016.07.08
若者だけではない? LINEマーケティングを考える 【#1 概要編】「LINEって使えるの?」というギモンにお答えします!
LINEが登場して約5年。コミュニケーションツールとして常に進化をし続けるLINEは、マーケティングのプラットフォームとしても非常に有効だ。ここでは、さまざまな企業がLINEを取り入れている背景や効果的な活用方法を探る。
日本の人口の半分以上がLINEを利用
LINEのユーザー数は、国内で6,800万人以上。これは国内人口の53%以上に相当し、国内に限れば、FacebookやTwitterを押さえてもっとも利用者数の多いSNSだ。毎日LINEを利用するユーザーは利用者数の約70%で、毎日のコミュニケーションインフラとして根づいている※1。
「若い世代に人気」と思われがちだが、実際は幅広い層で利用されている。利用者層の約半分は35歳以上で、50代以上だけでも18.4%を占めている(01)。「広告が届きにくくなった」と言われるなか、若年層はもちろん、中高年層にも日常的に利用されている点が、他のSNSとは一線を画した、LINEのマーケティングプラットフォームとしての魅力だ。

01 出典:「LINE 2016年4月-9月媒体資料」より、マクロミル社インターネット調査(2016年1月実施/全国15~69歳のLINEユーザーを対象。サンプル数2,112)
実際、ビジネス利用を目的としたLINEのサービスは充実している。主流の2サービスは、主に大企業向けの「LINEアカウント」と、中小企業や店舗、施設にぴったりの「LINE@」だ。ともに機能はほぼ同じ。自社のアカウントを「友だち」に追加したユーザーに対して、LINE上でコミュニケーションができるサービスだ。
違いは価格と露出。LINEアカウントは、3カ月で約1,200万円の基本料金が必要となるが、LINE@アカウントは無料から利用できる。代わりに、LINEアカウントはLINE内での露出機会が多いのに比べて、LINE@は露出機会が少ないため、自社で工夫しながら友だちを獲得する必要がある。
※1 LINEのユーザー数/アクティブ率は、「LINE 2016年4月-9月媒体資料」より
LINEアカウントやLINE@でできること
LINEアカウントとLINE@が他のSNSともっとも大きく違う点は、プッシュ型の「メッセージ一斉配信」とプル型の「タイムライン投稿」の両方ができることだ。
特に前者は、ユーザー自らが登録した相手からのメッセージでもあり、プッシュ型ながら開封率が高いので、そこはLINEマーケティングの最大のメリットともいえる。メッセージには、テキストのほか、スタンプや画像、クーポン、アンケートなど目的に応じて形式を選択することが可能(02、03)。

02 旅行会社「エイチ・アイ・エス」(LINEアカウント)のメッセージ(LINE ID:@hisjapan)

例えば、魅力的なクーポンを配布することで、来店や購入の動機づけができるというわけだ。つまり、FacebookやInstagramがブランディングやリーチ拡大に適しているのに対して、LINEは売上に近い、より直接効果につながる活用に適している。
プル型のタイムラインの機能は、FacebookやInstagramのように、画像やメッセージなどを投稿できるほか、友だち登録しているユーザーのタイムラインに投稿が表示される(04)。タイムラインは、友だちに登録していないユーザーでも投稿の閲覧が可能だ※2。投稿も共有できるので、情報の拡散も期待できる。

04 ファッションビル「池袋PARCO(パルコ)」(LINE@)のタイムライン(LINE ID:@ikebukuroparco)
もちろん、投稿はユーザーから「いいね」などのアクションやコメントへの投稿にも対応。メッセージ配信は1方向性であるのに対して、タイムラインは双方向のコミュニケーションができるので、ユーザーとのやりとりを通じてブランドの好感度向上にもつなげることが可能だ。
※2「友だち」に追加していないユーザーは、アカウントのホームを直接表示することで閲覧できる
LINEの管理画面や運用負荷について
LINEアカウントとLINE@には、ともに専用の管理画面が用意されており、そこからメッセージやクーポンの作成などが行える(05、06)。

05 PC版の管理画面より、メッセージ作成画面

06 スマートフォン版の管理画面より、メッセージ作成画面
メッセージの場合、注意したいのが送信回数。あまり頻繁にメッセージを送りすぎると、せっかく友だちに登録してくれたユーザーから通知をオフにされたり、ブロックされてしまうことがあるからだ※3。一般的なアカウントであれば、メッセージの配信は多くて週に2~3回程度がいいだろう。タイムラインの投稿は、FacebookやInstagramへの投稿内容とは分けて、LINE風にアレンジするのもおすすめ。管理者は複数設定が可能で、役割に応じて権限設定もできる。
クーポンを配信する場合は、リアル店舗での周知も必要だ。また、実際にクーポンを提示した来店客への対応について、店内ルールを明確にし、各店舗で均一なサービスができるようにしておきたい。
さらにLINE@には、「1:1トーク」という機能もある(07)。これは、ユーザーとプライベートでメッセージのやりとりができる機能で、予約や在庫の確認、サポートなど店舗の特性にあわせて活用できる。ただし、1:1トークを有効にする場合は、スムーズに対応できる体制づくりが必須だ。対応時間を設定する機能や、自動応答メッセージを登録できる機能も使えるため、それらを活かしながら人手の運用負荷も考慮したい。

07 「1:1トーク」は、個別の問い合わせ対応に向いている機能
管理画面では、メッセージの配信数、クーポンの開封数、ブロック数などを統計情報として確認できるので、それらの結果を踏まえて臨機応変に対応するのがいいだろう※4。
※3 通知オフの場合は後からメッセージの閲覧は可能だが、ブロックの場合はメッセージの配信ができなくなる
※4 クーポンの配信数や開封率と、実際のクーポン利用数(リアルの現場)を照らしあわせながら、自前で評価/検証を深めるといいだろう
「スタンプ」機能や「ビジネスコネクト」について
他にも多数の機能や活用方法がある。誌面に限りがあるので、抜粋してご紹介したい。
「スタンプ」は、LINEのコミュニケーションの醍醐味といえる機能だ。例えば「スポンサードスタンプ」は、企業が作成/配布でき、広告としての扱いも可能なスタンプだ。アカウントの有無にかかわらず利用できるが、3,500万円(8種類/税別)~の費用がかかる。また、直接的なプロモーション目的での利用はできないが、「クリエイターズスタンプ」として自社のキャラクターなどをスタンプにしての販売は可能。スタンプを作成して申請すれば、登録できる(8)。
「LINEビジネスコネクト」は、企業がLINEユーザーにリアルタイムに情報提供できるサービス。LINE公式アカウントと自社の顧客データをLINEビジネスコネクトAPIで連携させて、LINEのメッセージ経由で各ユーザーと個別にやりとりできる※5。例えば、クロネコヤマトでは荷物の配送のお知らせや再配達の受け付け、Amazonではおすすめ商品や注文完了のお知らせなどをLINEのメッセージで配信している(09)。
また、LINE@には「クーポン帳」と「ショップカード」という新機能も登場している。クーポン帳は、お気に入りのクーポンを登録しておくと、有効期限を知らせてくれたりする※6。ショップカードは、実店舗でよくあるスタンプカードのデジタル版で(10)、LINE@の管理画面で作成可能ができる。
以上のように、LINEは着実に気になる機能が増えている。使いどころを押さえることで、みなさんにとって、効率的で効果の高いLINEの活用場面がいっそう増えていくはずだ。
※5 顧客データから「東京に住む30代の女性」を抽出して、マッチするユーザーにのみメッセージを配信する、といった活用が可能
※6 クーポン帳からクーポンを探すことができる

08 さまざまなスタンプが数多く存在する(画面はクリエイターズスタンプ)

09 Amazonの「ビジネスコネクト」より、注文確認のお知らせが来た場面。ユーザーが、LINEのアカウントと企業側のサービスアカウントを連携すると、利用可能になる

10 LINE@の「ショップカード」例。スマホをかざせばスタンプが貯められるので、ユーザーにとっては利便性が高い。利用店舗が増えればスタンダードになりそう

- Text:深谷歩
- (株)深谷歩事務所 代表取締役。ソーシャルメディアやブログを活用したコンテンツマーケティング支援を行う。著書に『自社のブランド力を上げる! オウンドメディア制作・運用ガイド』(2016年5月・翔泳社刊)http://officefukaya.com/