2022.09.05
【コラム】「早く言ってよ…」に先手を打つ! 今号のお題 [リスク管理]
さまざまな方々に、それぞれの立場から綴ってもらうこのコラム。ひとつの「お題」をもとに書き下ろされた文章からは、日々の仕事だけでなく、その人柄までもが垣間見えてきます。
今回のテーマは「リスク管理」。日頃どんなに気を付けているつもりでも、予期せぬトラブルが発生したり、最初に感じた違和感が結果的に大きな問題に発展してしまったり…と、私自身も恥ずかしながら多くのトラブルを経験してきました。
最近はディレクションの領域も含めてお仕事を任せていただくことが多く、最初から直接クライアントさんと打ち合わせをしたり、細かい作業を別のデザイナーさんに依頼することもあります。制作だけ担っていた時よりも多くの人と関わるため、想定すべきリスクの幅もかなり広くなりました。自分の作業範囲におけるリスク以上に、一緒に動いている方のリスクを加味することがいかに難しいか痛感する日々です。
改めて自戒の念も込めて、私自身のヒヤッとしたお仕事の話をご紹介させてください。先日とあるブランドのキャンペーンに関するランディングページを制作した際の失敗談です。
この案件では、ランディングページ内にユーザーが好きな商品を投票できるコンテンツを用意するため、当初はCMSを使用してフォームを制作する方針で承諾をもらっていました。デザインのFIXやテストサイトへのフォーム導入までは、クライアントさんや間に入っていた代理店さんのご協力もあり、恐ろしいほどスケジュール通りに進行しています。しかし、「このデータで納品しましょう」となった段階で、組み込む予定だったCMSがクライアントさんのサーバ上で使用できないことが発覚。投票コンテンツの実装方法を急遽変更し、なんとか公開日をずらすことなく間に合ったのですが、実装を担当したエンジニアさんには休日にも対応いただくなど、ご迷惑をおかけしてしまいました。
後にわかったことですが、クライアントさんは、サーバアップロードに関する細かいルール指定があったことを共有しそびれていたそうです。「ルール指定があった」という事実は、事前にしっかりとヒアリングをしておけば防げましたし、こうしたイレギュラーな対応を見越してスケジュールを設定しておけば、制作側に皺寄せが行くこともなかったかもしれません。公開日にはなんとか間に合ったものの、自分の中ではかなり初歩的なミスだったので反省です。リスク管理の王道とも言える「事前に必要な情報を共有しておくこと」の大切さを改めて思い知ることになりました。
現場では、クライアントさんから「とにかく専門知識がないので…」と言われることがほとんどです。そのため、Web制作の案件にどんな情報が必要なのかも含め、ヒアリングは細かすぎるくらいに実施しておくべきだと感じています。「それ早く言ってほしかった」に先回りして対応するということです。共有漏れのリスクを防ぐためには、関係者間の密なコミュニケーションが不可欠だと学びました。
また、上記以外にも、撮影現場や保守運用での失敗談など、表に出せない話がいくつかありますが、ミスやトラブルの大半は人的なもので、「落ち着く」だけでも回避できたケースも多かったです。リスク管理には、リスクを起こさないようにするというのはもちろん、プロジェクトに関わるメンバー全員が気持ちよく仕事をできるようにする側面もあると思います。まだまだ自分のリスクマネジメントが足りていないことも自覚し、快適な状態で仕事を続けるためにもリスクと真剣に向き合い続けたいです。