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Web Designing 2022年8月号

柔軟な対応で既存業務フローのシステム化を実現 新規事業のインフラとしてAWSを採用

株式会社GIGが携わったジョブマッチングシステムの開発。そのインフラにはAWSが採用されている。では、今回の事例でAWSを選定した理由や、それにより得られたメリットとは? DXをスムーズに進めるためのポイントも必見だ。

Luminers(ルミナーズ)
https://www.lumine.ne.jp/luminers/
※LPは株式会社GIGの制作対象ではありません

中島 正成
株式会社GIG 取締役
山口 春香
株式会社GIG プロデュース事業部
大出 友美
株式会社ルミネ 事業推進部
増田 卓也
株式会社ルミネ デジタルトランスフォーメーション推進部

 

ルミネのショップとスタッフをつなぐジョブマッチングシステムの開発

Webコンサルティング、UI/UXデザイン、システム開発などのDX支援を行う株式会社GIG。同社では、株式会社ルミネが運用する「Luminers(ルミナーズ)」というサービスのシステム開発を担当し、その後の運用にも携わっている。

Luminersは、駅ビル型ショッピングセンター「LUMINE(ルミネ)」と「NEWoMan(ニュウマン)」で過去に勤務経験のあるスタッフと、ルミネ、ニュウマンに出店しているショップをつなげるジョブマッチングコミュニティだ。この仕組みを考案し、現在Luminersのサービス運営を担当するルミネの大出友美さんは次のように話す。

「ライフステージの変化や遠方への引越しなどに伴い退職してしまうショップスタッフさんが多いのが実情でした。そこで、一度職場を離れてしまったものの、スキルや経験のあるショップスタッフさんたちが戻ってきやすくなるような仕組みをつくりたいという想いがありました」

最終的にはサービスのシステム化を見据えつつ、まずはユーザーの反応や動向を探るべく、実証実験としてアナログでの運用を開始したと大出さん。

「実証実験の結果、見込んでいた通りの需要があることが確認できたため、システム化に向け、GIGさんにご相談させていただきました」

 

新規事業にはスケーラブルな環境が欠かせない

ルミネでは当初、パッケージを組み合わせたシステム化を想定していたが、「要件にマッチするものが見つからず、インフラ構築も含め、一からお願いすることになった」と話すのは、ルミネでDXを担当する増田卓也さん。そこでGIGから提案されたのは、AWSでインフラを構築することだった。

「大量のトラフィックが発生するような広告やIoTで常に大量のデータ通信が発生するようなケースを除き、通常のWebサイトで新規事業を始められる場合には、AWSをはじめとするクラウドサーバをご提案しています」

そう話すのは、本プロジェクトの全体統括を務めたGIGの中島正成さんだ。

「新規事業では、スモールスタートで、事業の拡大に沿って柔軟にスケールを調整していくのが基本です。物理サーバやレンタルサーバを設置した場合、拡張性が低く、開始当初よりも事業が拡大した際に、ハードウェアの追加発注や再構成、各種調整に手間がかかるうえ、追加コストが発生してしまうことがよくあります。クラウドサーバであれば、Web上でサーバの台数やスペックの変更が可能なため、事業規模や負荷の大きさ、アクセス数などに応じて柔軟にリソースの追加・削除を行うことができます」

ただし、クラウドサーバと一言でいっても、多くのサービスがある中で、今回AWSを選んだ決め手は何だったのだろうか。中島さんは説明する。

「ルミネ様のセキュリティチェックが非常に厳しく、我々としては、その要件をクリアできるのはAWSかAzureしかないと考えました。将来的にはルミネ様ご自身で運用していきたいというご要望もうかがっていたため、ドキュメントが豊富で、我々の手を離れた後も運用しやすいAWSをご提案しました」

 

AWS上でセキュリティを担保する方法とは?

非常に厳しかったというルミネのセキュリティ要件をクリアするための手法としては、「AWS CloudTrail」でログインなどのユーザーアクティビティを監視する、「Amazon GuardDuty」で不正な動作を常に監視するといった構築を行ったと中島さん。

「その他にも構築時に、サーバへの接続手段を限定したり、脆弱性診断などを行ったりしながら進めていきました。加えて今回は、SSHを使った外部接続ができないようにするなど、AWSならではの手法でセキュリティを強化しています」

また、Webアプリケーションの脆弱性を突いた攻撃に対するセキュリティ対策の一つであるWebアプリケーションファイアウォール(WAF)に関して、中島さんは次のように話す。

「もともとルミネ様がお持ちのサーバですと、私どもの範疇ではないため迅速な対応ができませんが、今回AWSを導入したことで、Web上でWAFの設定を自由度高く触れるというメリットも生まれました」

そうして運用を開始したLuminers。中島さん曰く、サーバへの負荷なども問題なく、順調に稼働できているという。

「オートスケールは入れていますが、固定のインスタンスを増やした方がコストが下がる可能性もあり、サーバを定期的に監視しながら、スケールの見直しなどをご提案していく予定です」

システムローンチ後には成約数も大きく伸びており、ルミネでは新たな機能を追加していくことも検討しているそうだ。

「そういったアジャイル開発に際しても、AWSであれば、コードのエラーや既存機能への影響などを自動的にテストする仕組みが構築しやすいというメリットもあります」(GIG・中島さん)

 

業務を見直す柔軟性こそがDXをスムーズに進めるコツ

AWSでインフラを構築したことにより、セキュリティも強固に、かつ、コストも抑えつつスムーズにジョブマッチングの仕組みをDX化することができた今回の事例。ただし、AWSを使えば、すべてのDXがうまく進むわけではないという。本プロジェクトのディレクターを務めたGIGの山口春香さんはこう話す。

「Luminersは一般的なジョブマッチングサービスとは異なり、ターゲットが過去にルミネでの勤務経験がある方に特化されていたり、実証実験で既に組み上げられたフローがあるなど、特殊な部分もありました。そのため、既存のフローに関する認識のすり合わせや要件定義については一切妥協せず、時間をかけて取り組みました。そのうえで、システム化するのであればどういう組み方をすればいいのかを検討していきました」

加えて、増田さんは次のように当時を振り返る。

「GIGさんからは、『システム化するのではあればこういうフローに変更してはどうでしょう?』『こうした方がユーザーは使いやすいと思います』など、業務寄りのアドバイスも多くいただきました。もともとあった業務フローを基に、新しいフローをつくっていくご提案をいただけたので、非常に心強かったです」

ともすれば、既存のフローをそのままシステムに落とし込もうとしてしまいがちだが、そうしなかったことが、今回のDX化がスムーズに進んだポイントだというのだ。

「DXの取り組みが『デジタル化』にとどまってしまい、本質的な変革に至らない企業も少なくありません。ルミネ様がDXで事業自体を変えることに前向きだったからこそ、今回のプロジェクトがうまく進んだのだと思います」(GIG・中島さん)

掲載号

Web Designing 2022年8月号

Web Designing 2022年8月号

2022年6月17日発売 本誌:1,560円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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DX推進のカギはクラウド利用にあり!
実践的解説!AWS導入・活用ガイド
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DX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれる中、日本企業のITシステムを抜本的に考えなければいけない状況になっています。そのインフラとしての主軸となる「クラウド」の活用は今後の企業活動の鍵を握るといっても過言ではありません。

クラウドといえば、世界的にシェアを持つAWS。DX&Webビジネスには必要とは知っている一方、

一体なんなのか、何に使えるのか?
どういうメリットがあるのか?
どのように導入するのか?
価格は?

といった、書籍などでは伝えきれない根本的かつ実践基礎的なポイントにフォーカスを当てて解説します。

AWS活用のための準備はこれで完璧!

ー CONTENTS ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■企業を守り、事業を成長させる「クラウド」を活用せよ!
セキュリティ対策も、新事業の立ち上げも。クラウドは「守り」と「攻め」の中心的存在だ!

●Webビジネスの「3つの潜在リスク」を払拭
●クラウド導入がもたらす劇的なメリット
●クラウドを利用したWeb基盤の強化事例

Chapter01 AWSを知る
●AWSが生んだ構造変化と中小企業のDXの現在
●ビジネス活用のためのAWS「解体新書」
●疑問や不安を解消するAWS利用の予備知識~コストは上がる?移行は可能?~

Chapter02 AWSを導入・運用する
●AWS導入・移行から運用までの手順と考え方
●クラウド初学者のためのAWS学習ガイド

【制作視点で考えるAWS】
●開発の前線から見るAWSの影響と今後