2022.07.13
“魅力を伝える”ビジネス文書では 「修飾」の正しい扱いがキモ
商品やサービスの特徴はなるべく多く伝えたいもの
Webサイトの中の文章を含むビジネス文書の役割は、ほとんどが「情報を伝えること」です。例えば皆様が、企業から制作発注を受けたWebサイトで、ちょっとしたリード文などを書くことになったとします。サイトは「食品の定期配送サービス」を紹介するものだったとしましょう。その導入文は、やはりそのサービスのパーパスであったり、ビジョンであったり、メリットであったりを伝えるものであるべきでしょう。SNSなどでは、「中の人」のブランディングを効かせまくって、ごく個人的な嗜好を書くこともあるかもしれません。「このサービスの餃子、めちゃくちゃウマいんだよねぇ!」。しかし、それはあくまでも特殊なケース。読み手にサービスの本質を知ってもらうためには、書き手の主張をいったん横におき、まずはそのサービスの特徴をしっかり伝えるべきなのです。
その際に必要なになるのが「修飾」です。修飾とは、文法で、ある語句が他の語句の意味を限定したり詳しくしたりすること。情報を付加することで、そのサービスの特徴がソリッドに浮き立ってくるわけです。
具体的には「“リーズナブルな”食品の定期便サービス」とか「“安心・安全な”食品の定期便サービス」というようなもの。このように、「モノ・コト」を文章で伝えようとするとき、その特徴を伝える「修飾語」は欠かせません。では、あるモノを形容するとして、複数の修飾語を使いたい場合、みなさんはその順序をどう決定しますか?重要度? 読みやすさ? いえ、違います。修飾語の順序を決めるルールはざっくり2つ。そのルールだけ知っておけば、修飾語の順番を間違えて、わかりにくい文章になってしまう事態を防げます。難しいことはありません。キーワードは、2つの「大→小」。きっと、本稿読者の皆様は、無意識的に修飾の順番を整え、文章を構築しているはず。しかし、基本的なルールさえ知っておけば、逆にそのルールから逸脱した印象的な文章を構築することも可能になります。
大きく分けてルールは2つ形容はグッとわかりやすくなる
「赤いリンゴ」「豪華なドレス」。一つの名詞に一つの形容、これはなんら問題ありません。難しいのは、複数の修飾語が付くケースです。例えば3つ形容があるとどうでしょう。「商業施設とオフィスが一体となった」「22階建ての」「台東区上野にある」を、「ビル」に掛けて説明するとしたら、どんな順番が適切でしょうか。
【悪い例】商業施設とオフィスが一体となった22階建ての台東区上野にあるビルで、私は働く。
【良い例】台東区上野にある商業施設とオフィスが一体となった22階建てのビルで、私は働く。
悪い例はそのまま配置。良い例は、3つの形容をマクロ視点からミクロ視点へ、テーマの大きさ順に並べています。これで80点、かなりわかりやすいと思います。ただ、このままでは「商業施設」だけが「台東区上野にある」と誤読されるリスクがまだ少し残ります。その回避手段は「読点」。「台東区上野にある、商業施設とオフィスが一体となった22階建てのビルで、私は働く」。この「、」により、「台東区上野にある」が修飾する語句が、その先の「ビル」に転換されたわけです。
では次。「万年筆」に、「黒い」「父親から譲り受けた」「モンブラン製の」を使って形容してみましょう。
【悪い例】モンブラン製の父親から譲り受けた黒い万年筆が、私の宝物だ。
【良い例】父親から譲り受けたモンブラン製の黒い万年筆が、私の宝物だ。
これはシンプルです。長い修飾から短い修飾へ、修飾句の長さ順に並べただけ。これで文章はシャープになります。悪い例は毎日モンブランケーキしか食べていない父親のことを、「モンブラン製の父親」と呼んでいるようですね。では、この「長短」ルールに先の例を当てはめてみるとどうでしょう。
【悪い例】商業施設とオフィスが一体となった台東区上野にある22階建てのビルで、私は働く。
わかります。わかりますが、やはり「小さい視点」のあとに台東区上野という「大きなテーマ」が続いているのが落ち着かない。つまり、「マクロ→ミクロ」のほうが「長い→短い」よりも上位レギュレーションであるとお考え下さい。
さて。「本誌の編集長は岡さんです」。この文章の「岡さん」に次の修飾を加えましょう。「責任感のある」「部下からも上司からもものすごく受けが良い」「美男子の」が選択肢。いかがでしょう? 答えは、「まずこれら修飾の妥当性から見直そう」です。