2022.05.04
【コラム】Webデザイナーにとっての数字 今号のお題 [分析と解析]
さまざまな方々に、それぞれの立場から綴ってもらうこのコラム。ひとつの「お題」をもとに書き下ろされた文章からは、日々の仕事だけでなく、その人柄までもが垣間見えてきます。
今号のテーマは「分析・解析・レポーティング」と聞いて、最近の自分の仕事と重ねながら、避けては通れないテーマだなと真っ先に感じました。これまでのデザイナー人生を振り返りながら、今、自分に求められているデザイナーとしての在り方を改めて考えるきっかけにもなったので、少しばかり私のキャリアのお話にお付き合いいただけたらと思います。
4年ほど前にデザイナーとしてのキャリアをスタートさせるため、Web制作会社を中心に転職活動をしていた際、面接官の方に「Webサイトをリリースした後に、アクセス数や商品の販売数などの振り返りをしていますか?」と必ず聞いていました。どこかで、つくって終わりではなく、自分のつくったものに対する成果をなんとなく求めていた部分があったんだと思います。とはいえ、いざWeb制作会社に属してみたものの、効果検証をするのが難しい環境でした。お客さまからの満足度は伝えていただきましたが、根本的な課題の解決になったかどうかまでが測定しきれない、「つくって終わり」の状態になってしまったWebサイトも多々ありました。
その後、いくつかの会社で経験を経て、現在関わっているお仕事はありがたいことにWebサイトのみならず、さらに上流の事業計画に関わる部分や、プロジェクト全体のデザインイメージの策定から携わらせていただくものも多くあります。そのため、Webサイトやロゴといった事業の部分的な制作物を手がける際には見えてこなかった領域に足を踏み入れ始めているなと感じています。
というのも、クリエイティブが実際に数字(=成果)に繋がる前に、仮説検証すべき点がたくさんあり、携わる領域が上流になればなるほど、必然的に数字と向き合っていかなければならないと日々痛感しているからです。
こうした領域のお仕事をお手伝いさせていただくにつれ、自分の求められているポジションも「デザイナーとしてただ手を動かしていればいい」というフェーズではなくなってきていると思っています。当然、予算や成果に対してもシビアにならざるを得ません。たとえば、制作物も含めて「施策の方向性が間違っていなかったか」、広告を出稿していれば「出稿の方法とコミュニケーションにズレはなかったか」など、ディレクターやプランナーと一緒に結果から次の仮説を立て、クリエイティブに落とし込んでいく必要があります。言い換えれば、デザインを制作する時とは違う頭の使い方をすることが増えてきました。
数字が読める、数字をつくれるデザイナーが求められる、と言われ始めてしばらく経ちますが、もはや事業会社だけではなく、制作会社も含めて、こうした数字を見込めるデザイナーが求められているように感じています。
最近のお仕事の話も交えながらコラムを執筆しましたが、そう言いながらもまだまだこうしたお仕事の経験は多くありません。日頃から数字を見る機会の多いプロジェクトマネージャーやディレクターと一緒に、日々いろいろと学ばせていただいてます。これまであまり気にしてこなかった面も気にかけたり、事前に相談したり、ということが増えたのと、数字を見るのはちょっと頭が痛いですが(笑)、ゆくゆくは、分析などの理論的な部分も含めて、より良いクリエイティブに活かせるように精進していきたいです。


- ナビゲーター:小島香澄
- 株式会社KOS デザイナー。ハウスメーカーに新卒入社、資料のデザインが褒められたのをきっかけに、デザイナーとしてWeb制作会社に転職。日々の学習記録をSNSで発信していると、“モテクリエイター”として活動するゆうこす(菅本裕子)の目に留まり、2019年より現職。ゆうこすの手がけるサービスやプロダクトのデザイン全般を担当。 Twitter:@_mi_su_ka_