2022.05.09
知的財産権にまつわるエトセトラ Web Designing 2022年6月号
No.1調査の法的な問題点 ~青山ではたらく弁護士に聞く「法律」のこと~
身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。
「〇〇No.1」を名乗る広告手法をよく目にします。具体的な調査結果などに基づかないでNo.1だと名乗ると、自社の商品・サービスを実際よりも優良だと示していることになり、それを信用した消費者を騙すことになります。そこで、そのような広告は消費者の自主的・合理的な選択を阻害するものとして不当景品類及び不当表示防止法(景表法)で禁止されています。
ところが、景表法違反になるのを避けつつ表示を使うため、No.1という結果が出るような調査を請け負う調査業者が出てきています。外部の業者が行った調査で、No.1という結果が出ていれば景表法違反にはならないだろうというわけです。もちろん、適正な調査の結果であれば問題はありませんが、中にはNo.1という結果を出すために調査対象者や質問票を恣意的に設定するケースもあるようです。
2022年の1月18日、非公正なNo.1調査について、マーケティング・リサーチ業の団体である一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会が抗議状を発表し、話題となりました。その内容は、「No.1を取得させる」という「結論先にありき」で、調査対象者や質問票を恣意的に設定する非公正な調査は、市場調査に対する社会的信頼を損なうものであるため、到底看過できないというものでした。
非公正なNo.1調査は景表法違反を避けるために行われるようになったと書きましたが、景表法が禁止しているのは実際の商品・サービスよりも優良だと消費者を誤認させることです。「〇〇No.1」という表示も根拠となる調査方法が非公正であれば、消費者を誤認させることになりますから、景表法違反になる可能性があります。消費者庁のガイドラインも、比較広告については、①主張する内容が客観的に実証されていること、②実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること、③比較の方法が公正であることが必要だとしています。非公正なNo.1調査は①や③に違反する可能性が高いでしょう。
非公正なNo.1調査がまん延すると、「〇〇No.1」という表示自体に広告としての効果がなくなってくると予想されます。公正な調査によるNo.1を広告に使いたい企業にとってはとても迷惑なことです。今後は「〇〇No.1」という表示をする際には、調査機関の名称や方法を具体的に明らかにし、公正な調査の結果によるNo.1であることを示すことも必要になってくるでしょう。上記のガイドラインでも、調査結果を引用する場合には調査機関、調査時点、調査場所等の調査方法に関するデータを広告中に表示することが適当であるとしています。
それを明らかにしないNo.1は非公正な調査に基づく表示だと疑われ、広告としてはむしろマイナスになるような時代が来るかもしれませんね。