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知的財産権にまつわるエトセトラ Web Designing 2022年6月号

No.1調査の法的な問題点 ~青山ではたらく弁護士に聞く「法律」のこと~

身の回りに溢れる写真や映像、さまざまなネット上の記事‥‥そういった情報をSNSを通じて誰もが発信したりできるようになりました。これらを使ったWebサービスが数多く誕生しています。私達はプロジェクトの著作権を守らなくてはいけないだけでなく、他社の著作物を利用する側でもあります。そういった知的財産権に関する知っておくべき知識を取り上げ、毎回わかりやすく解説していくコラムです。

「〇〇No.1」を名乗る広告手法をよく目にします。具体的な調査結果などに基づかないでNo.1だと名乗ると、自社の商品・サービスを実際よりも優良だと示していることになり、それを信用した消費者を騙すことになります。そこで、そのような広告は消費者の自主的・合理的な選択を阻害するものとして不当景品類及び不当表示防止法(景表法)で禁止されています。

ところが、景表法違反になるのを避けつつ表示を使うため、No.1という結果が出るような調査を請け負う調査業者が出てきています。外部の業者が行った調査で、No.1という結果が出ていれば景表法違反にはならないだろうというわけです。もちろん、適正な調査の結果であれば問題はありませんが、中にはNo.1という結果を出すために調査対象者や質問票を恣意的に設定するケースもあるようです。

2022年の1月18日、非公正なNo.1調査について、マーケティング・リサーチ業の団体である一般社団法人日本マーケティング・リサーチ協会が抗議状を発表し、話題となりました。その内容は、「No.1を取得させる」という「結論先にありき」で、調査対象者や質問票を恣意的に設定する非公正な調査は、市場調査に対する社会的信頼を損なうものであるため、到底看過できないというものでした。

非公正なNo.1調査は景表法違反を避けるために行われるようになったと書きましたが、景表法が禁止しているのは実際の商品・サービスよりも優良だと消費者を誤認させることです。「〇〇No.1」という表示も根拠となる調査方法が非公正であれば、消費者を誤認させることになりますから、景表法違反になる可能性があります。消費者庁のガイドラインも、比較広告については、①主張する内容が客観的に実証されていること、②実証されている数値や事実を正確かつ適正に引用すること、③比較の方法が公正であることが必要だとしています。非公正なNo.1調査は①や③に違反する可能性が高いでしょう。

非公正なNo.1調査がまん延すると、「〇〇No.1」という表示自体に広告としての効果がなくなってくると予想されます。公正な調査によるNo.1を広告に使いたい企業にとってはとても迷惑なことです。今後は「〇〇No.1」という表示をする際には、調査機関の名称や方法を具体的に明らかにし、公正な調査の結果によるNo.1であることを示すことも必要になってくるでしょう。上記のガイドラインでも、調査結果を引用する場合には調査機関、調査時点、調査場所等の調査方法に関するデータを広告中に表示することが適当であるとしています。

それを明らかにしないNo.1は非公正な調査に基づく表示だと疑われ、広告としてはむしろマイナスになるような時代が来るかもしれませんね。

Text:桑野雄一郎
1991年早稲田大学法学部卒業、1993年弁護士登録、2018年高樹町法律事務所設立。著書に『出版・マンガビジネスの著作権(第2版)』(一般社団法人著作権情報センター 刊 2018年)など http://www.takagicho.com/

掲載号

Web Designing 2022年6月号

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2022年4月18日発売 本誌:1,560円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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2023年夏までのカウントダウン。分析・解析の常識が覆る!

分析【まず複雑なデータを読み解けるか】
解析【最適解を導き出せ】
レポーティング【伝わるレポートの基本は4ページ】

<緊急報告>
Googleアナリティクス 4
UA(ユニバーサルアナリティクス)廃止が決まり業界騒然
Googleアナリティクス新時代にどう対応する?
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2021年に突然リリースされたメジャーバージョンアップ版のGoogleアナリティクス4。
昨今の「クッキーレス」や個人情報保護の動きに呼応するように、
トラッキングの方法をはじめ全てが一新したGAは、どんな使い方を想定されているでしょうか。
それによりIT業界はどのような流れになっていくのでしょうか。
緊急特集として追究します。

メイン特集は、「分析・解析・レポーティング」。

昨今叫ばれている「DX(IT)人材育成」。その主眼は「社員のITリテラシー向上」であり、
その具体的なポイントの1つとして「デジタルデータの分析力」があります。

DXを至上命題とした企業の成長は「正しい把握とレポーティング」が必要条件です。

一方、「分析」「解析」はよく聞くキーワードですが、
その実際は、分析と解析の違いレベルで正しく把握されていない状況があります。
まずは「分析」「解析」の正しい理解から、それを行う際の目の付け所と考え方を学び、
実践的な問題でトレーニングしましょう!

そして、「レポーティング」は数字など情報の整理からレポートの体裁、
レポートの活用用途に合わせた見せ方、論法など詳細に解説します。

ー<CONTENTS>ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
■運命の日に備えよ! GA4の時代がやってくる
・既存のバージョン(ユニバーサルアナリティクス)と何が違う?
・導入が遅れるとどんな問題が起きる?
・大刷新の背景にあるITビジネスの大変革
・ここを押さえろ! 5つのポイント機能
・導入&運用を早期実現させるポイント

■分析してわかる、サイトに求められる役割
■数字を見る前にやるべき自社サイトの現状分析
■的確な現状分析を導くデータの読み解き方
■アクセス解析でサイトの価値を上げる
■Web解析術 再入門!
■4ページで伝える・伝わる!レポート作成
■超実践的「改善提案書」の書き方
■あなたの分析力はどれくらい?Webアナリスト検定にチャレンジ