「文章」はあくまで「編集」の一部! 書く前の準備で、90%は書き終えている。|WD ONLINE

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Web Designing 2021年12月号

「文章」はあくまで「編集」の一部! 書く前の準備で、90%は書き終えている。

「書ける」からペンを執る―その前にやるべきことがある

「書ける」。日本人の多くは義務教育を通過し、識字率は99%超え。ほぼ全員が日本語を読め、書ける。当たり前ですよね。これが英語だとどうでしょう。英語を母語としない100カ国・地域のうち、日本人の英語力は53位(国際語学教育機関「EFエデュケーション・ファースト」の2019年調査より)。オランダやドイツに負けているのはもちろん、インド、マレーシアにも完敗中。英語はできない。だから「英会話教室で習おう」となるわけです。

でも、日本語は、最低限「書ける」。だから、ビジネスメールも、報告書も、noteの記事も、SNSの文章も、Web上のテキストも、なんでもかんでも「地力でいける」と思ってしまう。実際、文章を学ぶことなく、自己流で企業の情報を文章化している人はとても多いです。そんな方から「松井さん、校正してください!」とお願いされたテキストは、まるで東京2020オリンピックの開会式のように、コンセプトが見えず、散漫で、何かのマネのようで、とにかく理解しにくい。主述の関係、修飾の位置関係、読点の打ち方など、すべてがオリジナル(「独創的」ではなく「ルール無視」)で、ざっと目を通すと、ほぼ「ヨーシ、ゼロから行ってみよう!」となります。親身になって「この文章で、何を、なぜ、誰に、どのように伝えたいの?」と聞くと、ほとんどの人がスマホでYouTubeを見ながら、「その考えはなかった。最初から書くのは面倒だから、松井さん書いといて」と言うわけです。そう、「書けちゃう」という問題は、なかなか根深いのです。

自己流文章にある問題の多くが、「文章作成を文章作成単体として成立させようとしている」こと。文章は、ある日突然頭の上で光る電球のように、降ってわくものではありません。「文章を書く」のは、あくまで最後のアウトプット。いい文章を書くには、それ相応の手順を踏む必要があるのです。それが、先述の「何を、なぜ、誰に、どのように伝えたいの?」を明確にするための「❶情報収集 ❷情報分析 ❸企画 ❹制作(文章作成)」というフレームワーク。自己流でルール無視の文章を書く方は、いきなり「❹」ができると思っていることがほとんどですが、そこが違うのです。「文章」は、❶❷❸のフィルターでろ過された、タイトでソリッドなものであるべきなのです。

何の情報を、なぜ、どのように、書くのか

例えばあなたが広報部門の所属であり、「あるサービスを紹介するプレスリリース」を書くとしたら、どう進めるのが適切でしょう。内容は「そのサービスの紹介」に違いないのですが、まずは「そのサービスの価値・役割・特徴」を、関係各部門などへヒアリングして集めるはずです。次は分析。その価値や特徴は、いったいどのようなユーザーに、またはどのような状況で使ってもらったら喜ばれるのか。市場調査データなどを通して、サービスの訴求ポイントを分析しないといけません。

それからようやく「企画」です。リリースに「市場調査データ」自体を盛り込む、企業のトップのコメントを入れる、その業界の有識者の推薦コメントを取ってくるなど、分析結果をもとに、どんな企画が読み手に響くかを考えるわけです。こう順を追って考えることで、どのように文章をつくるかのアウトラインが固まります。ここから、ようやく「文章作成」が始められるのです。誤解を恐れずに言えば、❶~❸の作業を経て文章作成に当たれば、❸が終わった段階で、文章はもう90%完成しているとさえ言えます(最後のアウトプット❹を、「きれい」に「わかりやすく」するための書き方は、次回以降説明します)。

「何の情報を、なぜ、どのように、書く」。この4つの視点が文章作成には欠かせません。一般的に、ビジネスで書かなければいけない文章は、小説や詩じゃないわけですから、「何をテーマに書くか」はもう決まっていることでしょう。そのなかでどの点にフォーカスするか、それをどう世の中にアジャストさせるか、そしてその結果、どのような企画でアウトプットすべきか。この3段階が極めて重要なわけです。

ここを飛ばしていきなりキーボードを叩き始めるのは、基礎訓練を積まぬまま、トライアスロンの大会に参加するようなもの。「書けるから書く」は禁止です。「走れるし、泳げるし、自転車も乗れるから、俺イケるわ」と言いながら、もし岡編集長がトライアスロンの大会に向かったら、きっと、Web Designing誌は今号で休刊でしょう。

大事なのは、「書く前の準備」です。ぜひ右のフレームワーク図解で、各ステージですべきことをイメージしてほしいと思います。

アクセルを踏めばクルマは走りますが、それは「運転できる」とは言いません。「書ける」と「文章を作成できる」も別物。「走れ、泳げ、自転車も乗れる」岡さんが、トライアスロンを完走できるわけではありませんよね。自転車に乗れない可能性もわずかにありますが…。
❹「制作」でアウトプットされる文章は、❶「収集」 ❷「分析」 ❸「企画」がつながって生まれる成果。「何を」「なぜ」「どう」伝えるかまでは❶❷❸で決まっているので、❹はブレない。❹がうまくいかない場合は、❶❷❸に立ち返って感がればよい。すなわち、「情報を伝える文章」は、実は文章作成単体では成立しない。極論すれば「文章」も編集の一要素。文章が独立して価値をつくる「詩」「小説」などとは違う、「情報文章」の一番の特徴である
まついけんすけ
株式会社ワン・パブリッシング取締役兼メディアビジネス本部長。20年間雑誌(コンテンツ)制作に従事。現在はメディア運営のマネジメントをしながら、コンテンツの多角的な活用を実践中。自社のメディアのみならず、企業のメディア運営や広告のコピーライティングなども手掛ける。ウェブサイトのディレクション業務経験も豊富。

掲載号

Web Designing 2021年12月号

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2021年10月18日発売 本誌:1,560円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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ITビジネスには欠かせない注目言語の「現場の使い方」がわかる!

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経済産業省の掲げる、アフターコロナによるデジタル改革の推進の筆頭に取り上げられていた「AI開発」。DX推進の文脈からも「AI人材」の育成の中心言語としての地位を確立したPython。学校教育の場でも取り上げられているほど重要視されているこの言語は、一体どんなメリットがあり、どんな活用が期待されているのでしょうか。

AIだけでなく有名Webアプリやプラットフォームなどの開発に活用されていたりと、エンジニアにとっては当然のことながら、マーケターやWebディレクター、経営者に至るまで言葉として「Pythonの重要性」は認識していない人はいないのではないでしょうか。

しかし、Pythonという言語はそれだけでなく、業務効率化や情報収拾・分析など幅広い用途で活用しやすい言語だからこそ普及している側面もあります。では、Pythonは実際、具体的にどんなことを可能にして、どんな可能性を見出すことができるのかを説明できるでしょうか?

本号では、エンジニアはもちろん、今後のITビジネスにおいてPythonの知識の必要性を感じている担当者の方に向け、
そもそもPythonとはどんな言語でどんな特長があり、さまざまなITソリューションの中でどんな仕組みや機能が実際に
使われているのか、はたまた数あるフレームワークやライブラリの得意分野や使いやすい用途に至るまで、
これ1冊でPythonの背景から現場の具体的な活用方法まで学べる特集をお届けします。

自身のお仕事に必要な方、社内教育として新人に学ばせたい方など、イチから体系立てて理解する教科書としてお役立てください!



ー<CONTENTS>ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

■「Pythonの必要性・重要性」とは何か?


■ Introduction
注目する人が増えている!? 今なぜ、Pythonなのか
Pythonとはいったいなんなのか、その理由を技術者/試験の団体に聞く

 
■ Theme_1 日常業務の自動化
Pythonで自動化 相性のいい仕事・悪い仕事_ 業務時間の質が向上する
Pythonで自動化できる日常業務フロー_5種類の具体例から自動化できる中身を知る
自動化技術の特徴と選び方_VBA、GAS、RPA…Python 以外も考えてみよう


■ Theme_2 AI開発でデータ利活用
PythonによるAI開発でデータを利活用
 01_高度な対応力でさらにビジネスを大きく 
 02_業務効率化でコストや人手を削減 
Pyshon×SNSで自動化:PythonでTwitter Botをゼロからつくってみよう!


■ Theme_3 サービス開発の事例に学ぶ
サービス開発事例に学ぶ
 01_WebマーケターがPythonの知見を得る価値 
 02_新サービスを検討する際にPythonをどう活用すべきか


【Column】
Python ライブラリ・フレームワークの基本
_ 現場で活躍するエンジニアにも役立つ資料集
_目的別Pythonライブラリガイド

初学者のためのマインドセット/学習スタイル
エンジニア7人に聞きました! Pythonどう学びましたか?

など