ECのオンライン体制|WD ONLINE

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ECサイト業界研究 Web Designing 2021年8月号

ECのオンライン体制 完全リモートでショップ運営をするポイント

オンライン体制でいちばん大事なのは、コミュニケーションです。リアルで会って仕事をしているときはすぐにコミュニケーションを取ることが出来ますし、雑談も出来ます。これがオンライン体制では難しいのです。今回は、私が東日本大震災をきっかけに完全リモート化した際の経験を語りたいと思います。

大震災で全員リモート体制へ

2011年3月11日、東日本大震災の際、会社に来ることができないスタッフもいるということで、筆者の会社は思い切ってすべてリモートに切り替えました。

毎朝会社にいたときと同じように朝礼やミーティングもオンラインで実施したので、現在のコロナ禍と同様のことが起きていました。まず、いつもとは違うラフな服装で朝礼やミーティングに登場するスタッフが出始めました。どこにいても仕事ができるということで、実家や郊外へ移動して仕事をする方も出てきたのです。そして、やはり鬱になる方も出てきました。大事なのは、今回のテーマであるコミュニケーションだったのです。

リモート体制でテレワークを行うときのコミュニケーションは、ちょっとした雑談や皆でワイワイガヤガヤが出来ないというのが欠点なのは、皆さん実際に感じているであろうとおりです。また、Web会議で誰かが喋り始めると、なかなか他の方との会話が出来ないなど、かなり鬱憤がたまります。また、マネージャークラスだと管理の厳しい人とゆるい人の差がはっきり出てしまいました(01)。

新型コロナによってもたらされた新しい生活様式では、まさにこのような現象が出たと思います。EC業界は早くからクラウド化が進んでいましたので、テレワークはしやすかったと思いますが、それでもなかなか踏み込めないEC企業も多かったと思われます。私はこの状態はまだ10年続くと考え、これを機にテレワーク主体の業態にしたほうが良いと考えています。

01 10年前に完全リモート化したものの…
筆者の会社では、2011年の3月に起こった東日本大震災を契機に完全リモート体制を確立しました。しかし、上記のような課題が出てきました。まさに、新型コロナウイルス感染拡大における現在噴出している課題そのものでした

 

大事なのは「信頼」スタンス

PCに管理ツールを入れたり、1時間毎に連絡を入れるなどといった管理手法は、ECのテレワークには向きません。

そもそも忙しいECショップやEC企業は、すべてを通常の営業時間内に完了させることは出来ません。ネット販売は基本24時間365日で、モールによっては午前1時59分にイベントが終わったり、午前0時にポイントの切替も発生したり、朝9時にはいったん受注を締め切る必要があったりなど、基本的に24時間稼働を意識しておく必要があります。これを時間労働で管理しようとするのは不可能です。

ECで利用するようなツールは基本的にシステムやツールによって方法は違いますが、何時にログインしたか、最終閲覧時間はいつなのかをチェックできますから、管理者はそれで判断しましょう(02)。大事なのは、「信頼している」というスタンスなのです。

02 ログやツールでスタッフの動きを判断
管理ツールや個人の日報提出など、厳密に管理しようとしてもできるものではありません。特に不休前提のECならなおさらです。業務の状況はログやプロジェクト管理ツール(画像はBacklog)で把握するくらいで、スタッフには信頼しているというスタンスを見せることが重要です

 

アジェンダ・議事録・ファイル共有・ルール

オンライン体制で必要なのが打ち合わせです。緊急の打ち合わせであっても、必ずアジェンダを作成し、24時間以内に議事録を提出する、その役割を誰が実施するかを決めておく。Web会議では先ほどお話したように、多対多ではなく、1対多になってしまいますので、あらかじめ役割分担を決めておく必要があります。誰がファシリテーターとして進行するのか、議事録は誰が作成して確認するのかなどです。

そのアジェンダや議事録、必要な資料はファイル共有サービスで共有しておきます。自分のローカル環境に置くのではなく、すべてクラウドのファイル共有サービスに置くようにします。これはルールとして決めておきます(03)。

03 会議は役割分担とルールの徹底
Web会議で必要なのは、参加者全員のルールの徹底と会議進行の役割の明確化です。筆者個人としては、議事録はクラウドにアップして全員がすぐに共有しておくのがオススメです

 

ファシリテーターと参加メンバーの注意事項

オンライン体制での注意事項として重要なのは、ZoomやMicrosoft Teamsなどでミーティングする時に、カメラをオンにして顔を見せることです。マイクはいろいろ雑音が入りやすいのでしゃべるときだけオンにすればよいですが、顔は常に見せる必要があります。これは表情もそうですが、ミーティング中に他のことをやっていないかなどをチェックできます(04)。

東日本大震災後のテレワーク時には、2週間後くらいから徐々に少ない人数で飲みに行ったりしました。結果的にこれが功を奏しました。このようなコミュニケーションがテレワーク時にはとても大事ですが、オンライン体制では難しいです。そのため、少人数で会社に出社したり、オンラインでも良いので雑談をオススメしています。雑談は30分とかではなく、30秒とか1分でも大丈夫です。たったこれだけでまったくその後の業務が変わってきます。

04 ミーティングは顔出しで
とにかく顔を見せ合って話す機会をつくるのが大事です。それは管理的な側面もありますが、フェイストゥフェイスでのコミュニケーションは最終的には大事になってくると筆者個人の経験からも強く思います

 

Text:川連一豊
JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。 http://jeccica.jp/

掲載号

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2021年6月17日発売 本誌:1,560円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

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半ば強制的にテレワークやWeb会議の準備を整えた2020年。
そろそろオンラインを介したコミュニケーションには慣れてきた方は多いかと思います。
ただ、慣れてきたのはいいのですが、そこから新たな課題も生まれてきています。

「オンラインだと、言いたいことが伝わらない」
「オンラインだと、会議がうまくいかない」
「オンラインだと、商談もスムーズにいかない」

リアルで顔を合わせていた頃とは違い、明らかにやりとりの情報が制限されている環境の中、
なかなか望む結果に至らないとお悩みの方は多いのではないでしょうか。

その悩み、実は考え方とノウハウを知っていれば誰でも解消できます!
しかも、それにより結果的に会社やチームの業績アップにもつながるのです。

Web Designing 2021年8月号では、
最近話題に上がることも多くなった「ファシリテーション」の知識をベースに、
オンライン会議や商談、プレゼンテーションをより効果的に行うためのノウハウを伝授します。

会議前の準備から会議中の振る舞い、会議後の成果の活かし方まで、
時系列に沿ったよくある悩みに置き換え、Q&A形式で大事なポイントを押さえていきます。
このポイントをひととおりマスターすれば、オンラインのコミュニケーションはむしろ大きな武器になるはずです。


■内容
・「ダメ会議要素」を撲滅!
  空中分解
  ビッグワード
  消化不良
  ダンマリ
  面従腹背

・ファシリテーターの基本姿勢
  非日常性
  協同性
  民主性
  実験性

・「問い」の良し悪しが結果を決める
  足場の問い
  中心の問い
  まとめの問い

・「仕込み」8割、「さばき」は2割

・オンラインプレゼンテーションは「1スライド1メッセージ」が鉄則

・会議資料・議事録の作り方・共有方法

・ビジネスチャットでの進め方
など