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Era Web Architects プロジェクト

根本的な問題を解決していくには―高山和也

Era Web Architectsの今回のゲストは、「情報大工」でおなじみの高山和也氏。専門はテクニカルコミュニケーションをベースとした情報設計。ソニーでのマニュアル制作の経験から多くを学び、その後の専修大学での非常勤講師で数多くの生徒に教える立場も経験。今回は、学生時代から大学までと、ソニーで経験したマニュアル制作を中心にテクニカルライティングについて熱く語っていただきました。(聞き手:坂本 貴史、郷 康宏 以下、敬称略)

高山和也 プロフィール

マイコン少年で雑誌にも掲載され、中学ではアマチュア無線クラブに参加。高校は体育会系で大学では哲学科に入る。卒論のときにMacintosh Classicを購入し、部門採用でソニーのプロダクトCS推進部へ入社。ソニーではマニュアル製作を担当し、同社の代表的製品でもあるVAIOやPlayStationのマニュアルを担当。テクニカルコミュニケーター協会へも参加しつながりを広め、ブログ「情報大工」でIA系のつながりが生まれる。ソニーからフリーランスを経て、専修大学での講師を経験しつつ、現在のデジタルビジネス会社に至る。

・Facebook (https://www.facebook.com/kazuya.takayama1969)

マイコンブームでパソコンには触れていました

坂本:学生のころはどんな感じだったんですか。

高山:小学校高学年から中学生くらいのときにマイコンブームがありまして。PC-8001とかの頃です。自分で書いたプログラムが雑誌に載ったこともありました。中学のときはアマチュア無線クラブに入って4級(電話級)の試験も取ったので、免許証は今でも実家にあるはずです。ただ、高校に入ってからは体育会系でしたし、高2のときの化学の先生がすごい嫌いだったせいもあって、理系からはドロップアウトしてしまい、大学は哲学科に行くことになります。

パソコンは、卒論のときにMacintosh Classicをローンで買いました。スタイルライター(StyleWriter)というプリンターも買って、卒論をそれで印刷して出しましたね。

中学生当時、ベーシックが遅かったので、一部マシン語で書いてベーシックから読み込んでとかやってました。持っていたのがソードの「m5」(パソコン)だったので、紙にアセンブラを書いて、ハンドアセンブルしてマシン語で入力です。
 

ソニーのマニュアルを作る部門に入社

坂本:そのまま就職されるんですか。

高山:当時、ソニーを外資系だと思っていたくらい何も勉強してなかったのですが、たまたまソニーのプロダクトCS推進部の部門採用に縁がありました。同部はマニュアル制作部門と商品テストラボがあったのですが、マニュアル制作部門への配属となりました。入社当初はオレンジ(アンバー)ディスプレイのパソコンでテキストデータを入力して、それを印刷所で写植にしてもらうというプロセスでした。

大学が哲学科だったので、論理性とか首尾一貫性であったりの思考トレーニングには役立っていたかなとは思いますね。
 

マニュアル制作の現場

坂本:どういう仕事をされてたんですか。

高山:最初は既存製品マニュアルの手直しからです。業務製品では1つの製品が10年とか長く使われるので、細かなバージョンアップ対応のための差し替えや修正があり、新機能分の追加ライティングなどをやってましたね。

未だに勘違いしている方が多いのですが、マニュアルは完成品をみながら作るものだと思われていますが、実は完成品なんてないんです。仕様書をベースに作り始めて、生産が始まる前に工場に印刷済みのマニュアルが納品されていなくてはいけないんです。熟練の先輩とかになると、仕様書を読んでなくてもその製品の機能や使い方が見えてたりしましたね。
 

していることはIAそのものでしたね

坂本:具体的にはどういう仕事をされていましたか。

高山:VAIOのマニュアル制作時に、先輩(デスクトップ)と自分(モバイル)とで担当を分けて分担していたんですが、共通の情報はお互い共有しながら進めていました。スクラッチで1つずつ作っていくとコストも時間もかかるので、できるだけ過去の資産を有効に使いたいんですよ。

ビデオやオーディオ製品では当然なのですが、同時に複数の商品ラインナップが展開されます。そうすると共用できる部分とそうでない部分のコントロールが必要なんですが、やっていることはIA(情報設計)そのもので。DTPのデータをいかに使い回すかという点は、CMSのコンテンツ側の構造設計とやっていることは同じでしたね。

坂本:そうした切磋琢磨はコミュニティなどでつながりはあったんですか。

高山:業界団体としては、テクニカルコミュニケーター協会というのがあるんですが、マニュアルライティング部門を持っている会社が年に1回集まってシンポジウムをやったりとか、ガイドラインを作ったり共同研究をしていましたね。電子マニュアルの評価ガイドラインとかを作りました。
 

情報大工から専修大学へ

坂本:ブログ「情報大工」は、いつごろから始められるんですか。

高山:96年ごろだと思います。大きな声では言えませんが、ソニー在職中の頃からです。当時は「情報大工」という言い方をしていましたが、インフォメーションアーキテクト「建築家」というよりも、もうちょっと手の届く範囲での仕事というニュアンスでつけた名前です。なんか空中戦は好きじゃなかったので、できるだけ地に足をつけた感じにしたかったんです。

執筆は、連載ではないですが、3回くらいお声がけしてもらい技術評論社『Web Site Design』で書いたのと、『Web Designing』や『ネットワークASCII』にもコラムを書かせていただきました。

坂本:そこから専修大学の講師経験につながるわけですね。

高山:上平先生がブログを見てくれて声をかけていただき、はじめはスポットで講演をしました。その後に非常勤でやらないかと誘っていただき、マニュアルライティングの先生が退任されるタイミングで、そちらのほうを担当するようになりました。

最初のころは、20人くらいだったと思うんですが、途中で必修科目になったせいで100人超えになっていき、レポートの採点が大変だったので上限100人にしてもらいました。結果、専修大学には14年いましたので、700人以上は接したことになると思います。
 

Webサービスを作る側に回っているんじゃないかな

 郷:もし今2021年に20歳だとしたら、どんなことをされるでしょうか。

高山:Webエンジニアというか、Webサービスのほうを作る側に回っている、回りたいと思うんじゃないかなという気がします。なんとなくですが、今の世の中の状況だとそこが一番楽しそうな気がします。

Webサービスと言っても、メガベンチャーみたいに大規模になっているところは違うのかもしれませんが、小さいところだと、ある程度自分でサービス全体をコントールできるっていうところがあるじゃないですか。そのあたりが、DTPやWebの創成期の頃と雰囲気というか感触というか空気というかそういうのが近いんじゃないかなという気がします。
 

根本的な問題が軽視されがちに見える

坂本:Webやインターネット業界に対してメッセージをいただけますか。

高山:「まわりの業界ぜんぜん見えてないよね」っていう感じはあります。例えば、Web側からテクニカルコミュニケーション領域への働きかけって全然ありませんでしたし。他業界と連動できていないというか、知識工学とかで以前から延々繰り返されてきた議論をしている感じがして、もっと広がりがあってもいいのに、と。無責任っぽいコメントですが、外からはそう見えます。

最近注目されているUXライターとかUXライティングとかも「何それ」って。昔から取り組んでいる業界もあったのに気づかなかっただけだよねと。トンマナのコントロールの方ばかりに注目が集まり、根本的なテクニカルコミュニケーションが軽視されているのも気がかりです。

そうした根本的な問題を解決できる人って、実はそんなに多くないと思うので、その部分を(業界として)どう考えているのかなと思うところはあります。オチも提案も何もないんですが。
 

この記事は、オンラインインタビューを抜粋して書き起こしています。インタビュー全編をご覧になりたい方、ぜひYouTubeチャンネル「Era Web Architects」をご覧ください。
Era Web Architects オンライン #29(ゲスト: 高山和也)
https://www.youtube.com/watch?v=kMmMBGKdyW4&t=1s

Era Web Architects プロジェクトとは

『Era Web Architects』プロジェクトは、発起人の坂本 貴史を中心に、インターネット黎明期からWebに携わり活躍した「ウェブアーキテクツ」たちにフォーカスし、次世代に残すアーカイブとしてポートレート写真展を企画しています。
公式YouTubeチャンネルでは、毎週ひとりずつ「ウェブアーキテクツ」へのインタビューをライブ配信しています。本記事はそれをまとめたものです。


・公式ウェブサイト (https://erawebarchitects.com/)
・公式Youtubeチャンネル (https://www.youtube.com/channel/UClJ4OvlhOzkWwFhK-7NJ0CA)
・Facebookページ (https://www.facebook.com/Era-Web-Architects-100739284870438)

インタビュアー プロフィール
坂本 貴史(『Era Web Architects 』プロジェクト 発起人)
グラフィックデザイナー出身。2017年までネットイヤーグループ株式会社において、ウェブやアプリにおける戦略立案から制作・開発に携わる。主に、情報アーキテクチャ(IA)を専門領域として多数のデジタルプロダクトの設計に関わる。著書に『IAシンキング』『IA/UXプラクティス』『UX x Biz Book』などがある。2019年から株式会社ドッツにてスマートモビリティ事業推進室を開設。鉄道や公共交通機関におけるMaas事業を推進。

郷 康宏(『Era Web Architects』プロジェクト オンライン配信担当)
2010年以降、ビジネス・アーキテクツ(現BA)を経て本格的にWebの世界へ。2015年までネットイヤーグループ株式会社において、コンテンツの作成からリアルイベント実施、SNSやWebサイトの運用まで幅広く手掛ける。2016年よりKaizen Platformにてクライアント企業の事業成長を支援。肩書は総じてディレクター。

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