新常態に求められる企業内コミュニケーションの新形態を探る|WD ONLINE

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特別企画 [PR] Web Designing 2021年8月号

新常態に求められる企業内コミュニケーションの新形態を探る

非接触が推奨される新常態の到来とデジタライゼーションの推進により、コミュニケーション形態の変容が求められている。新生コミュニケーションデザイン委員会では、新時代に適合するコミュニケーションのあり方を突き詰めて、急増したナラティブ(個々のユーザーの語り)を傾聴して解析する意義、情報資産を拠り所とする活用ガイドとして継続的に発信することが企業とユーザーの良好なコミュニケーションの第一歩になると導き出してきた。ただし、新しいコミュニケーションは企業とユーザーだけではなく企業の内部にも浸透させるべきであり、むしろそこが出発点とも言える。そこで本委員会の2021年度2度目のディスカッションでは、企業における新たなコミュニケーションのあり方の検討を進めることとなった。
Photo●黒田彰

 

「説明すれば理解する」は大きな間違い

これからの時代、企業とユーザー間で求められるコミュニケーションは、ナラティブをすくい上げて深層心理に眠る声に触れ、そこで得た情報を最適化して活用ガイド等のコンテンツに昇華・発信し、双方向でやり取りしていくものだ。

こうした新時代のコミュニケーションの実現には、その前段階としてコンテンツホルダーである企業内部におけるコミュニケーションの再定義が必要。そこで把握すべきは現在企業内部で発生しているコミュニケーション上の課題だ。世界的な分析・計測機器メーカーでテクニカルコミュニケーション(TC)に携わる中奈美氏は、製造現場において見受けられる課題を❶「情報伝達時のギャップ」❷「前提に対する理解度」の2つに分けて説明する。

❶は情報発信側の説明の拙さやスタッフ間で知識レベルの差によって情報が誤って伝わったり、手段と目的が逆転したりするもので、❷は専門用語の定義の違いや他部署の業務フローを理解していないことから何らかのトラブルに繋がってしまうような課題だ。

「製造やTCの現場には真面目で仕事に誇りを持つ人が多く、それは素晴らしいことですが、その分自分の担当範囲外に目が行き届かず、コミュニケーションを妨げる要因にもなっていると感じます」(中氏)

これらの解決策として真っ先に思い浮かぶのは「伝え方の精度を上げる」「説明機会を増やして理解度を高める」といったものだが、安易なアプローチは逆に課題や不満を増大させる恐れがあると黒田氏とブレッドスミス氏は指摘する。

「TCは『説明する技術』を突き詰めて来ました。長年携わってきて感じるのは『説明して分からせる』というアプローチは説明する側に都合がよくても、説明される側には必ずしも受け入れられるものではないことです。だからわかりやすい説明よりも、注意を惹きつけて興味を持ってもらい、理解したいという欲求が出てきたところにアプローチするという、一種の合意形成が必要だと考えています」(黒田氏)

対ユーザーの場合は負担を最小限に抑えるために避けがちなアプローチだが、コンテンツをつくりだす企業内部においては、説明される側が自ら考えるプロセスを経ないと伝わらないばかりか拒絶を生みかねない。だからこそ、それぞれの「自分ごと化」がまず必要となるのだ。

課題の棚卸しを通じて相互理解と指針を示す

では、個人が自分ごと化し、組織として同じ方向を向いていくにはどうすればいいのか。まず考えられるのは中長期的アプローチだ。「個々人の前提条件の違いや説明と理解がイコールではない点は考慮しつつも、丁寧に説明するカルチャーや合意形成を怠らない習慣を根付かせ、対話型のコミュニケーションを浸透させていくことは欠かせないでしょう」とブレッドスミス氏は指摘する。

一方、企業としては短期的な改善策も必要だが、各部署の業務内容やKPIを把握すると、他者の志向や獲得したいメリットが理解でき、比較的スピーディにギャップが埋められる。つまり組織内の関係者のベクトルを合わせることが大切となるのだが、そのために有効となるのが消費者行動分析のフレームワークだ。

「消費者が購買意思を決定するまでに、問題意識、情報検索、代替案の評価、購買行動、購買後の行動という5段階を経ます。このうち前半の3つに関して、問題意識、情報検索に伴って表出するリスク、代替案の差別化要因を整理していくと自社の課題を棚卸しできます。このフレームワークは元来BtoC向けですが、最終的に見るべき対象が顧客であることはBtoB企業でも変わらないので、これを使って部門横断のワークショップを実施すると、組織として見るべき方向が定まるはずです」(安西氏)

こうしたワークショップを実施する際には、外部の第三者の視点を入れて客観化しつつ、発表の機会を設けることで強制的に形にすることなども必要だ。このように相互理解を深めて指針を示すことが、企業における新しいコミュニケーションデザインの端緒となるだろう。

企業とユーザーとのコミュニケーションに目が行きがちだが、さまざまな声や情報を集約し、そこから適材適所に情報を提供していくためには、まずは企業内の関連部署やグループ会社、さらには外部パートナーに至るまで、すべてが意図や意義を正しく理解し、情報を共有していくことが大切。しかし、実際の現場にはさまざまな高いハードルがあるのも事実である

 

質問に答えて自社の状況を客観視してみよう
新しい企業内コミュニケーションをデザインするための5つのステップ

企業内において新しいコミュニケーションを構築し、社員、部署、パートナーといった各関係者が同じ方向を向いていくには、中長期的なアプローチと短期的なアプローチが必要となる。いずれのアプローチであっても「一歩ずつ段階を踏んでいくこと」と「意識を高め、行動に移すように仕掛けること」の2つは重要な共通項である。「これらがなくては“つくっただけ”で、運用されない仕組みが積み上げられてしまう」(中氏)ことになるからだ。

そこで、新しい企業内コミュニケーションを構築していく際のステップを紹介したい。STEP1~STEP3までは関係者の意識を高めるための、STEP4~STEP5はより具体的にコミュニケーションデザインを実行していく上での取り組みとなる。それぞれのチェックポイントを確認しながら、自社内でコミュニケーションデザインをする際の参考にしてもらいたい。

 

https://www.jtca.org/symposium/

 

企画協力:一般財団法人テクニカルコミュニケーター協会

掲載号

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半ば強制的にテレワークやWeb会議の準備を整えた2020年。
そろそろオンラインを介したコミュニケーションには慣れてきた方は多いかと思います。
ただ、慣れてきたのはいいのですが、そこから新たな課題も生まれてきています。

「オンラインだと、言いたいことが伝わらない」
「オンラインだと、会議がうまくいかない」
「オンラインだと、商談もスムーズにいかない」

リアルで顔を合わせていた頃とは違い、明らかにやりとりの情報が制限されている環境の中、
なかなか望む結果に至らないとお悩みの方は多いのではないでしょうか。

その悩み、実は考え方とノウハウを知っていれば誰でも解消できます!
しかも、それにより結果的に会社やチームの業績アップにもつながるのです。

Web Designing 2021年8月号では、
最近話題に上がることも多くなった「ファシリテーション」の知識をベースに、
オンライン会議や商談、プレゼンテーションをより効果的に行うためのノウハウを伝授します。

会議前の準備から会議中の振る舞い、会議後の成果の活かし方まで、
時系列に沿ったよくある悩みに置き換え、Q&A形式で大事なポイントを押さえていきます。
このポイントをひととおりマスターすれば、オンラインのコミュニケーションはむしろ大きな武器になるはずです。


■内容
・「ダメ会議要素」を撲滅!
  空中分解
  ビッグワード
  消化不良
  ダンマリ
  面従腹背

・ファシリテーターの基本姿勢
  非日常性
  協同性
  民主性
  実験性

・「問い」の良し悪しが結果を決める
  足場の問い
  中心の問い
  まとめの問い

・「仕込み」8割、「さばき」は2割

・オンラインプレゼンテーションは「1スライド1メッセージ」が鉄則

・会議資料・議事録の作り方・共有方法

・ビジネスチャットでの進め方
など