WD Online

Era Web Architects プロジェクト

人の個性化を支援したい―林 真理子

Era Web Architectsの今回のゲストは、株式会社イマジカデジタルスケープの人材コンサルティング事業部でトレーニングディレクターをされている林 真理子さん。企業研修や講座プログラムの企画・運営を長らく担当し、現在は社内の事業推進やナレッジ・マネジメント推進などに取り組んでいます。今回は、自身のキャリアについてやクリエイター支援への思いを語っていただきました。
(聞き手:坂本 貴史、郷 康宏 以下、敬称略)

林 真理子 プロフィール

国語が得意、ごく普通の短大生活を送り、新卒で入った会社で入社初日に教訓を得て、デジタルハリウッドに転職。急成長のインターネット業界でさまざまなことを経験し、会社や事業や仕事について学ぶ機会を得る。その後、キャリアカウンセラーの資格をとり、数多くの企業研修や講座のインストラクショナルデザイン、クリエイターのキャリア支援に邁進する。現在は自社の事業推進やナレッジマネジメント推進など情報編集を軸に総合職として多様な業務を手がける。

・Twitter (https://twitter.com/marimari)
・Facebook (https://www.facebook.com/hysmrk/)

ダメなものはダメだとわかった、はじめての就職先

坂本:学生のときから国語が好きだったんですか。

 林:ワリと得意ではありました。図工とか美術はがんばってもずっと通知表が5段階中3でしたし、理科と社会も苦手でしたので、わかりやすく文系でした。高校は英語が強いところで、短大も英文科に進んだんですが、なんでもない短大生だったんです。

型通りの就職活動をしたこともあり、ぜんぜん受からなかったのですが、貸衣装屋に内定をもらいました。経験しないのに辞めるのはよくないんだろうと思い、とりあえず就職はしましたが、初日に説明を受けてひととおり経験したら「これだけはないな」と分かり、ダメなものはダメだということをその就職先で学びましたね。

入社当日の会社帰りに求人誌を買って転職活動を始め、3カ月後くらいにデジタルハリウッドの面接に行き、8月お盆明けから4年間お世話になることになります。

坂本:パソコンは、いつから使っているんですか。

 林:高校のとき、高校のパソコンルームにFM TOWNS(富士通のパソコン)があったので、そこでブラインドタッチは覚えました。短大のときも英文タイプの授業があったので、多分Windows 3.1だったと思うんですが、触ってはいたもののとにかく入力が早くできるだけでした。

デジハリに入るときも、OSもインターネットも知らないで入っているので、入社してからシステム管理の人から、メールアドレスを何にしたいか問われて戸惑いましたね。それでいろいろ仕事をしていく中で、「散らばる知識の知識基盤を持ちたい」と思い、初級システムアドミニストレータという資格を取りました。
 

デジハリで、20歳にして30代の方をカウンセリング

坂本:デジタルハリウッドへは何で行かれたんですか。

 林:事務職のスタッフとしてですね。何かの専門職としてではありません。今振り返ってみると、杉山先生の社長秘書のような求人だったと思います。超拡大期だったので月に10人とか中途採用していました。猫の手も借りたい時期で、社長秘書は見合わずとも、人事の方がのちの上司になる方と引き合わせてくれて、入社することになります。

配属先は人材開発室で、デジタルハリウッドで学んだ受講者を社会に輩出するキャリアセンターでした。クリエイティブ職の求人情報を企業から集めたり、就職ガイダンスなどをして受講者の転職活動を支援するような、企業と受講者をマッチングする部署でした。事務機はMacで、ファイルメーカーで求人のリレーショナル・データベースを作ったりしていました。20歳にして30代の方のカウンセリングもしたりしていました。

坂本:夜遅くまで働いていたんですか。

 林:ほんと24時間、不夜城でしたね。超高額の3DCGのマシンを夜間もレンダリングでフル稼働させていたので、校舎も夜泊まる前提でしたね。朝出勤すると、床に人が寝ているような状態でした。
 

デジタルハリウッドで得たもの

坂本:次に行くキッカケは何があったんですか。

 林:人材開発室で就職支援をしたあとに、教育開発室に異動したんです。ちょうどマルチメディアスクールと別に、インターネットスクールというのをやりはじめたタイミングでした。そこで講座を運営するんですが、最初Webクリエイター講座だったものが、いろいろ分かれていきどんどん講座の種類が増えていったんです。結果、身体も中身も追いつかなくなっていきました。根本的な解決が当時の私にはできないと思い、退職を決意しました。

ただ、私にとってはものすごい貴重な体験をさせてくれた会社でした。

当時の社長であり、学長の杉山先生が「日本でもこれからデジタルを使ったクリエイティブの力を皆が持つようになる」「その社会を作っていこう」というのを人材育成の面から事業化したのがデジタルハリウッドで、折に触れ「こういう社会が来るから、こういう事業をする」ということをわかりやすくイキイキと語ってくださっていました。私にとって、会社とはどういうもので、事業とはどういうものか、仕事とはどういうことなのかを、ポジティブに価値あるものとしてインストールしてくれたのがデジタルハリウッドであり杉山先生です。今楽しく仕事しているのはそのときがあったからだなと思っています。

クリエイターのキャリア支援はやりがいがある

坂本:当時からWebの人材育成の分野が自分に合っているなという感じですか。

 林:人材育成とキャリア支援の専門性を高めたいと思っていました。デジハリの後ミディシティを辞めるあたりで、キャリアカウンセラーの資格をとってキャリア支援の専門性を磨こうと思っていました。デジハリ時代から徐々に、クリエイターのキャリアを支援するというのは、ものすごいやりがいがあるなと思っていました。

クリエイターやクリエイターを志向する人は、面白いし変ですよね。「変態性」を持っているというか。他と同じものを作っていたら意味がないですし、みんなと同じように生きたいというより、違うことをやりたいというのがあると思うんです。私は、人が個性化していくことに魅力を感じるし、同じであることにはつまらなさを感じます。

道半ばのクリエイターというのは、傷ついたり支持が得られない局面もあると思うんですが、それを守ったり支えたり応援したり、部外者だからこそできる支援というのも価値があるなと思っています。
 

そこまでやってこその人材育成

坂本:一番苦労したプログラムなどはありますか。

 林:講義単体ではやれることが限られることもあって、長丁場でできたものはすごくやりがいがありました。例えばある企業から、職業訓練校でソフトの使い方は覚えてきたものの、入社してみたら仕事での実践知がないことがわかったので、それをどうにかできないか、という相談をもらいました。そのときは長期のプログラム(1カ月間くらい)を組んで対応しました。

一人ひとり課題に対するアウトプットを見て、何がどう間違っているか、それは何を理解していないからだ、というところまで個別にケアして本人にフィードバックするんですが、直属の上司にも別途説明しました。OJTする際にはこの観点がわかっていないから、ここをケアしたほうがいい、といった具体的な情報を共有し、現場に引き継ぎました。

行動変容を見届けるまでやってこその人材育成施策だと思います。アンケートとか講座の満足度評価だけではなく、受講後のアウトプットがどう変わったかや、実務でパフォーマンスがどう向上したかなど、組織的に効果ある施策にするための提案をしたり、そこまで形作っていけるというのはやりがいを感じますね。
 

人の個性化を支援したい

 郷:もし今2021年に20歳の自分だとしたら、何をするでしょうか。

 林:環境に、出会った人に影響を受けて自分の人生が作られてきたんだなと思うので、20歳のときに誰に会ってどこの会社にたまたま入るかによって、だいぶ変わるんだろうなとは思います。

ただ「人の個性化を支援したいんだ」というところには、おそらくどこかのタイミングでたどり着くと思う。とすると仕事としてはたぶん、学習支援なんですよね。人が個性化していく変化の過程を、なにがしかサポートしていくということでは(今と)似たような仕事には就くのかなという気がしています。
 

変化の激しい時代なので、野生に還れ

坂本:Webやインターネット業界に対してメッセージやアドバイスをいただけますか。

 林:今一般化している職種名だったり業界の枠組み、ワークフローだったりは、基本的には一時的なもので、変化を続けていくと思うんですよね。なのでそこに思い入れすぎないほうがいい、矜持を持ちすぎないほうがいいんだろうなと思います。

一番大事なのは、今いる職場、自分の居場所で役に立つ仕事の経験を積んでいくことで。それが頻出する活動であれば、あとから職種名やワークフローなり名前がついてくると思うので、入れ物や枠組みにこだわりすぎないほうがいいんだと思います。廃れていってしまうこともあるので。

なので、共有したいメッセージは「野生に還れ」かな。自分がこう動いたらこの人が助かるとか、この問題がつぶせるというように、型にはまらず必要なことをやっていく。新しく学ぶ知識体系と、自分が感じる問題点や自分の役割とかをマージしていきながら仕事をしていくことが大事なんだと思います。
 

この記事は、オンラインインタビューを抜粋して書き起こしています。インタビュー全編をご覧になりたい方、ぜひYouTubeチャンネル「Era Web Architects」をご覧ください。
Era Web Architects オンライン #16(ゲスト: 林 真理子)
https://www.youtube.com/watch?v=FCHfOkDcJFw&t=7s

Era Web Architects プロジェクトとは

『Era Web Architects』プロジェクトは、発起人の坂本 貴史を中心に、インターネット黎明期からWebに携わり活躍した「ウェブアーキテクツ」たちにフォーカスし、次世代に残すアーカイブとしてポートレート写真展を企画しています。
公式YouTubeチャンネルでは、毎週ひとりずつ「ウェブアーキテクツ」へのインタビューをライブ配信しています。本記事はそれをまとめたものです。


・公式ウェブサイト (https://erawebarchitects.com/)
・公式Youtubeチャンネル (https://www.youtube.com/channel/UClJ4OvlhOzkWwFhK-7NJ0CA)
・Facebookページ (https://www.facebook.com/Era-Web-Architects-100739284870438)

インタビュアー プロフィール
坂本 貴史(『Era Web Architects 』プロジェクト 発起人)
グラフィックデザイナー出身。2017年までネットイヤーグループ株式会社において、ウェブやアプリにおける戦略立案から制作・開発に携わる。主に、情報アーキテクチャ(IA)を専門領域として多数のデジタルプロダクトの設計に関わる。著書に『IAシンキング』『IA/UXプラクティス』『UX x Biz Book』などがある。2019年から株式会社ドッツにてスマートモビリティ事業推進室を開設。鉄道や公共交通機関におけるMaas事業を推進。

郷 康宏(『Era Web Architects』プロジェクト オンライン配信担当)
2010年以降、ビジネス・アーキテクツ(現BA)を経て本格的にWebの世界へ。2015年までネットイヤーグループ株式会社において、コンテンツの作成からリアルイベント実施、SNSやWebサイトの運用まで幅広く手掛ける。2016年よりKaizen Platformにてクライアント企業の事業成長を支援。肩書は総じてディレクター。

この記事を見た人はこんな記事も見ています