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ECサイト業界研究 Web Designing 2021年4月号

ECとCMS リモート時代におけるEC運営でのオススメ

EC業界はリモートワークがかなり浸透している業界のひとつですが、リモートワークだからこそさまざまなツールにもセキュリティにも気をつけたいところ。ツールの中でも、CMSはなくてはならないものの一つです。今回はECでのCMS運用の注意点について見ていきましょう。

日々の運用か、自由なデザインか

表01は、各ショッピングシステムのCMSを筆者の所感を元に比べたものです。もちろん、ASPやモールによっても違いますし、カスタマイズの内容によってもかなり差があります。その上で今回は、「デザインの自由度」と「セキュリティ」に絞ってお話したいと思います。

ECでCMSを活用する場合、どの程度デザインの自由度を持たせるかはかなり悩まれるところかと思います。CMS運用の観点から考えれば、取り扱い商品の掲載ページは全て同一化した方が、新商品ページ公開やラインアップ変更などは早く対応できますし、トラブルなども起きにくいです。

しかし、運用をしていくうちに新しい分野の商品を扱ったり、イチオシ商品は際立たせたい! などの要望が出てくると、ある程度自由なデザインが許されているシステムの方が扱いやすいことになります。

こだわりが強くなく、効率的な運用をしたい場合には、ほとんどのショッピングカートシステムで採用しているデザインテーマを選択してパーツで組み立てていくパターンか、デザインテーマはプログラムで作成し、HTML・CSS、JavaScriptなどで組み立てていくパターンになります。前者のほうが比較的簡単につくれて、後者はデザイン自体をある程度自由に制作したい場合に採用することになります。

一方、ユーザビリティの観点から見ると、モールなどある程度自由度が制限されたシステムでは、カートボタンやお問い合わせボタンの位置などは最初から決められているので、それ以外のレイアウトや画像などの演出に集中できるメリットがあります。

逆に自由度が高いシステムだと、装飾的なデザインに注力しすぎてこれらの重要なボタンがすぐには見つからない、といったUI上の配慮が足りないページになってしまうという可能性も少なくはありません。

例えば、上に挙げた「ほぼ日刊イトイ新聞(ほぼ日)」の「ほぼ日ストア」(02)などは、同サイトがもともとコンテンツメディアであり、その発展系としてネットストアを立ち上げている背景があります。ですので、「ECもコンテンツのひとつ」として捉え、ほぼ日のイメージを踏襲したECストアを展開をするという方針がありました。

さらに、取り扱う商品が「クリエイターがつくったアイテム」というコンセプトのため、各々のクリエイターの世界観をよりよくつくり出せるように、商品ページごとにデザインを自由に変えられるシステムを採用しています。このように、まずは自社の取扱商品やECサイトの方向性、世界観、そして対象となる顧客の志向などをしっかり押さえた上で、どのようなサイトが自分たちのビジネスに有用なのか、よく考えておく必要があります。

ちなみに、デザインテーマをベースにページごとにデザインを変えたいとか、テンプレートを変更可能かどうかはシステムによって変わってきます。また、いきなりPHPでつくったデザインテンプレートを触ってしまう方もいます。どこまでの範囲ならば手を入れられるのかは明確にしておきましょう。

01 各ショッピングシステムのCMS比較(筆者の経験による所感)
表内の◎=誰でも満足できる、○=ほぼ満足できる、△=使用に支障はないが留意する点が留意する点がある、というイメージでご覧ください。ショッピングカートシステムは大きく分けてスクラッチで開発、パッケージからカスタマイズ、ASPで提供、モールで提供とあります。これらはショッピングカートシステムと一緒になったCMSです。一方、WordPressやDulpalなどといった一般的なCMSにプラグインで使えるカートもあります
02 ほぼ日ストア
「ほぼ日」のECでは、商品ごとにページデザインが違います。これはクリエイターがつくったアイテムを販売するためで、出来る限りページのデザインも自由につくりたいという意向が出ています。さすがに、ここまでページデザインの自由度を上げると運用やシステム負荷をそれなりに考慮する必要があります

 

ログイン画面がセキュリティのカナメ

CMSでもうひとつ重要なのが、セキュリティです。2022年春には個人情報保護法が改正され、罰金が最大1億円まで引き上げられる罰則もあるため、要注意です。

ECは当然ですが個人情報がいっぱい詰まっています。CMSの場合、狙われやすいのはログイン画面です(03)。CMSには、ログイン画面のURLが固定化されているタイプと自由に変更できるタイプがあります。当然ながら、セキュリティ上はログインURLを変えられるほうが強くなります。

ログインの方法にも差があります。店舗用のログインとスタッフIDを分けるタイプや2段階認証のタイプもあります。リモートワークが多くなってきている今、2段階認証は携帯電話のSMSで行うことが多いため、多人数、多部署でログインする場合にとても不便です。ログインIDとパスワードの管理はさまざまなツールも出ていますので一元管理しておくのがリモートワーク時代にはよいでしょう。

ちなみに、生成されるURLは大切です。いわばネット上の住所であるURLが番号か、JANか、商品名かといったことが重要になってきます。例えば、照明器具だとJANコードで探す方が多いですし、検索で探す商材では商品名を入れたほうがいいでしょう。これはサイト成長した際、システムの入れ替えや移行時に大きな問題になります。使用CMSがこれに対応しているかは隠れたポイントです。

03 各ショッピングシステムでのログイン
表は三大モールとASP、パッケージサービスでの一般的な管理画面およびログイン認証方法です。運営状況により向き不向きがありますが、最近では各社のリモートワーク体制の状況により、ECサイト管理の利便性が変わってきますので、その辺りも考慮に入れましょう

 

Text:川連一豊
JECCICA(社)ジャパンE コマースコンサルタント協会代表理事。フォースター(株)代表取締役。楽天市場での店長時代、楽天より「低反発枕の神様」と称されるほどの実績を残し、2003 年に楽天SOY受賞。2004年にSAVAWAYを設立、ECコンサルティングを開始する。現在はリテールE コマース、オムニチャネルコンサルタントとして活躍。 http://jeccica.jp/

掲載号

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2021年に突入しても、未だ先行き不透明な“新常態”の現在。
直接的な接触を極力避けることを推奨される「非接触」前提の中、顧客とのタッチポイントとして
Webサイトの役割はますます高まってきました。

ひとえにWebサイトと言っても、PC、スマホはもちろん、さまざまなデバイスで情報を発信できるようになり、
コンテンツもテキストベースだけでなく動画やライブ配信など、さまざまな手段が主流になってきています。

そう言った中、コンテンツ管理システム(CMS)の重要度はますます高まります。
さまざまな手段で情報を受け取る顧客の状況に合わせて適切な情報を届け、それを管理するには、
CMSを上手に活用することが不可欠です。

また、
「Webサイトに異常が発生したけど、在宅勤務なので社内サーバにあるCMSが触れない!」
などなど。テレワークという新しい働き方は、新たな課題も生み出しています。

さらに今後、個人情報保護の意識も国を挙げて高まり、
一度不祥事を起こすと会社の存続に関わるほどのダメージを受ける可能性も大いに高まってきました。
社内サーバにアップデートしていないCMSを置きっ放しにして許される状況ではもはやありません。
早急に「セキュリティ」について整備しないといけない状況です。


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“新常態”におけるCMS運用の必須知識を、「選択・導入・運用」「セキュリティ」「リモート体制」「動画」の側面から
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