【コラム】AI時代のタイムレスなスキル|WD ONLINE

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Web Designing 2021年2月号

【コラム】AI時代のタイムレスなスキル 今号のお題 [Web制作]

さまざまな方々に、それぞれの立場から綴ってもらうこのコラム。ひとつの「お題」をもとに書き下ろされた文章からは、日々の仕事だけでなく、その人柄までもが垣間見えてきます。

最近ちょっとしたランディングページをつくる機会があり、「STUDIO」をよく使います。もともとWebサイトはイチからつくりたい派ですが、長いこと現場仕事から離れているので、知識を埋めるよりもその時間を使ってパパっと公開まで持っていけるSTUDIOについ手を伸ばしてしまうわけです。

また、最近お手伝いしている会社でtsunagu.aiというAI関連のスタートアップがありまして、「Front-end.AI」というデザインカンプ画像を解析してコードを出力してくれるサービスを運営しています。STUDIOはサイト公開までのプロセスを担ってくれるのに対して、こちらはデザインを構造化してコードに落とすことがメインです。

これらのサービスのように、いわゆるコーディングが要らずに制作ができる「ノーコード」「ローコード」系のツールやサービスが多くリリースされており、Web制作がより手軽・身近になっていっていると言えます。MVP(実用最小限の製品)をつくるにはもってこいですし、技術者じゃなくてもハイクオリティなプロトタイプを見せながらブラッシュアップもできますし、個人的には喜ばしい流れだと思います。

ただ、Web制作に携わっている人の中には、危機感を持つ方がいるかもしれません。現に私もランディングページを外注せずに用意できてしまっているように、テクノロジーやAIである程度まで解決できてしまう部分が出てきています。つまり、私たちはWeb制作の中でも自分がやるべき仕事・伸ばすべきスキルが何かを、今一度考えていく必要がありそうです。

このような状況下でWeb制作を生業とするなら、いかに専門的な知識やスキルを身につけ、機械にはできない判断やコンサルテーションをできるかが大事になってきます。体系化できる仕事が自動化されていくならば、属人的なスキルを身につけるしかありません。

たとえば情報設計、アクセシビリティ、ユーザビリティなどはまだまだ体系化が難しい領域だと思います。知識はもちろんのこと、ユーザーを取り巻くさまざまな状況に対応するための経験も必要ですし、Web制作に携わるなら今後も陳腐化しない部類のスキルと言えます。私も最近フロントエンドエンジニアの方にSTUDIOでつくったLPのアクセシビリティ面を細かく手直ししていただいたことがありました。前述のツールやサービスが仕事を奪わない、いい例かと思います。

また、私自身も状況に応じた適切なライティングを若手に指導することが多くあります。自分のキャリアでは「Webデザイン」の範疇でナチュラルにやっていたものではあったのですが、WebにおけるライティングやUIを加味したライティングというのは普通のコピーライティングともまた違ったスキルだと感じているので、近年の関心領域だったりします。

専門領域を掘り下げるべきもうひとつの理由として、私たちの今後の仕事の舞台がWebやアプリのみとは限らないことが挙げられます。この先、想像もつかないデバイスの制作を任された時に必要なのは応用の利く、普遍的なスキルです。

今使っている言語・フレームワークが必須でなくなることも多々あります。私自身はキャリアスタートがフィーチャーフォンのWebデザインだったので、多くのナレッジがロストテクノロジー化しましたが(笑)、モバイルにおけるUXの考え方や、ライティングのナレッジは今でも生きています。タイムリーなテクノロジーやスキルなどは程よくキャッチアップしつつ、タイムレスなスキルの経験を積み重ねて行きたいですね。

「Front-end.AI」はフロントエンド開発をAIで支援するサービス。デザインカンプ画像からAIが構造を判別し、HTML/CSSを書き出します。開発初期の工数削減を目的としています。このようなサービスが多くなってきた昨今、Web制作者のスキルについては改めて考える必要がありそうです
Front-end.AI
https://front-end.ai/
ナビゲーター:三瓶亮
株式会社フライング・ペンギンズにて新規事業開発とブランド/コンテンツ戦略を担当。
また、北欧のデザインカンファレンス「Design Matters Tokyo」も主宰。前職の株式会社メンバーズでは
「UX MILK」を立ち上げ、国内最大のUXデザインコミュニティへと育てる。ゲームとパンクロックが好き。
個人サイト: https://brainmosh.com Twitter @3mp

掲載号

Web Designing 2021年2月号

Web Designing 2021年2月号

2020年12月18日発売 本誌:1,560円(税込) / PDF版:1,222円(税込)

独自アンケートで浮き彫りにする、「新常態」時代のWebビジネスの「新実態」

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Web Designing 12月号(12月18日発売)特集

[非接触時代]のIT業界の今後はどうなる?
Web制作のリアル2021

年初には誰もが予想し得なかった事態になった2020年。全ての企業において例外なく、ビジネスも働き方も従来の常識が通用しなくなったと言っても過言ではありません。

リアルでの接触がしづらくなった代わりにオンラインでできるマーケティング活動が存在感が増していく中、企業のビジネススタイルは明らかに変わってきました。では現在、この状況下でも成果をあげている企業はどんな取り組みをしはじめ、どんなビジネス潮流が起きているのでしょうか。

それを知る鍵は、さまざまな企業規模、業種のデジタル施策の相談を受けソリューションを提供し続けているWeb制作会社の動向にあります。今、彼らの元にはどんな相談が舞い込み、どんな近未来のビジョンを持っているのでしょうか。

Web Designing 2021年2月号では、同誌編集部による完全オリジナルなアンケートによる大規模な調査により、2021年のWebビジネス、デジタル施策の潮流、そしてWithコロナ下での働き方まで紐解いていきます。

●様変わりしたビジネスの潮流とクライアントの悩みとその解決策
●リモートワークはWebビジネスをどう変えた?
●Withコロナ下で求められるスキルや人材とは?
●今後習得したいスキルは?
●もっとも利用されているマーケティングツールは?
●もっとも利用されているコミュニケーションツールは?
●もっとも利用されているUIデザインツールは?
●リモートワークで課題だと思っていることは?

など