2021.01.22
【コラム】AI時代のタイムレスなスキル 今号のお題 [Web制作]
さまざまな方々に、それぞれの立場から綴ってもらうこのコラム。ひとつの「お題」をもとに書き下ろされた文章からは、日々の仕事だけでなく、その人柄までもが垣間見えてきます。
最近ちょっとしたランディングページをつくる機会があり、「STUDIO」をよく使います。もともとWebサイトはイチからつくりたい派ですが、長いこと現場仕事から離れているので、知識を埋めるよりもその時間を使ってパパっと公開まで持っていけるSTUDIOについ手を伸ばしてしまうわけです。
また、最近お手伝いしている会社でtsunagu.aiというAI関連のスタートアップがありまして、「Front-end.AI」というデザインカンプ画像を解析してコードを出力してくれるサービスを運営しています。STUDIOはサイト公開までのプロセスを担ってくれるのに対して、こちらはデザインを構造化してコードに落とすことがメインです。
これらのサービスのように、いわゆるコーディングが要らずに制作ができる「ノーコード」「ローコード」系のツールやサービスが多くリリースされており、Web制作がより手軽・身近になっていっていると言えます。MVP(実用最小限の製品)をつくるにはもってこいですし、技術者じゃなくてもハイクオリティなプロトタイプを見せながらブラッシュアップもできますし、個人的には喜ばしい流れだと思います。
ただ、Web制作に携わっている人の中には、危機感を持つ方がいるかもしれません。現に私もランディングページを外注せずに用意できてしまっているように、テクノロジーやAIである程度まで解決できてしまう部分が出てきています。つまり、私たちはWeb制作の中でも自分がやるべき仕事・伸ばすべきスキルが何かを、今一度考えていく必要がありそうです。
このような状況下でWeb制作を生業とするなら、いかに専門的な知識やスキルを身につけ、機械にはできない判断やコンサルテーションをできるかが大事になってきます。体系化できる仕事が自動化されていくならば、属人的なスキルを身につけるしかありません。
たとえば情報設計、アクセシビリティ、ユーザビリティなどはまだまだ体系化が難しい領域だと思います。知識はもちろんのこと、ユーザーを取り巻くさまざまな状況に対応するための経験も必要ですし、Web制作に携わるなら今後も陳腐化しない部類のスキルと言えます。私も最近フロントエンドエンジニアの方にSTUDIOでつくったLPのアクセシビリティ面を細かく手直ししていただいたことがありました。前述のツールやサービスが仕事を奪わない、いい例かと思います。
また、私自身も状況に応じた適切なライティングを若手に指導することが多くあります。自分のキャリアでは「Webデザイン」の範疇でナチュラルにやっていたものではあったのですが、WebにおけるライティングやUIを加味したライティングというのは普通のコピーライティングともまた違ったスキルだと感じているので、近年の関心領域だったりします。
専門領域を掘り下げるべきもうひとつの理由として、私たちの今後の仕事の舞台がWebやアプリのみとは限らないことが挙げられます。この先、想像もつかないデバイスの制作を任された時に必要なのは応用の利く、普遍的なスキルです。
今使っている言語・フレームワークが必須でなくなることも多々あります。私自身はキャリアスタートがフィーチャーフォンのWebデザインだったので、多くのナレッジがロストテクノロジー化しましたが(笑)、モバイルにおけるUXの考え方や、ライティングのナレッジは今でも生きています。タイムリーなテクノロジーやスキルなどは程よくキャッチアップしつつ、タイムレスなスキルの経験を積み重ねて行きたいですね。