ドローンで非接触デリバリーを実現する「Zipline」|WD ONLINE

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Bay Area Startup News Web Designing 2020年10月号

ドローンで非接触デリバリーを実現する「Zipline」 Withコロナ時代の新常態サービス

海外で起こっている、あるいは起こりつつある新しいビジネスの潮流、近い将来に日本にやってくるであろうビジネストレンドなどを紹介・考察します。米国サンフランシスコ在住の筆者が、サンフランシスコおよびシリコンバレーの「ベイエリア」を中心に、イケてるスタートアップを中心とした会社、サービスを毎月1つ取り上げながら、その背景や目的、今後日本で起こりうるトレンドについて追究します。

新しい日常「ニューノーマル」のキーワードは“非接触”

アメリカでは、新型コロナウイルスの流行は収まる気配がありません。そんな中で日常生活においては「After コロナ」ではなく「With コロナ」に適応する動きが出てきています。政府からも新型コロナウイルスと上手に付き合いながらニューノーマル (新しい生活様式)のライフスタイルが提唱されています。

このニューノーマルを実現するために重要になってくるのが、「Contactless(非接触)」サービスです。ニューノーマル時代では、日常生活で他人との接触をいかに減らすかが感染リスクを減らすポイントになります。そのため非接触を保ちながら、今までどおりの生活を行えるサービスは重要になってきます。そして、これからしばらくは、非接触がニューノーマル時代のスタンダードになっていくと予想されます。 

Zipline
東アフリカのルワンダに拠点を持つ、米国のドローン宅配サービス。メインは血液など医薬品の配送ですが、新型コロナ禍中における「非接触デリバリー」として世界から注目されています
同社の共同創始者でありCEOのケラー・リナウド(Keller C. Rinaudo)氏。彼は、テクノロジーによる大きな課題のソリューションがアメリカや日本などの技術先進国ではなく東アフリカから実現されていることに大きな意味を持つと言います

 

激化するドローンサービス開発の中で世界中が注目

日常生活を接触型から非接触型に変換していく中で、重要なタッチポイントの一つが宅配サービスです。これまでは、配達業者のスタッフが家のドアまで荷物を運び、手渡ししてくれていました。しかし、感染症の拡大を防ぐために、非接触デリバリーの普及が進んでいます。

その最先端が、ドローンを活用した非接触デリバリーサービスです。ドローンによる配達は、実証実験や特定地域でサービスが開始しているものもあり、新型コロナウイルスの流行で人手による配送が難しくなる中、そのサービス拡大が期待されています。すでに、Amazonの「Prime Air」やアメリカの宅配業大手のUPS、UberEatsなど多くの企業が参入し、その開発レースは激化しています。

今回紹介する「Zipline」も、ドローン宅配サービスを提供するスタートアップの一つです。サンフランシスコに拠点を構えるZiplineは、米連邦航空局(FAA)から最大30マイル(約48キロ)の長距離配送の承認を得て、ドローン配送サービスを開始しています。

2016年に事業を開始した当初は、ルワンダ等のアフリカ諸国で輸血用血液や医薬品のドローン配送を行なっていました。アフリカ諸国は交通インフラが整備されていない地域が多く、今までなら病院への血液の配送に自動車で2時間かかっていたところをわずか15分に短縮することに成功したのです。

現在は一国をカバーする規模でドローン物流の商業化を実現しています。そして、現在の評価額が1,000億円を超えるユニコーン企業として名を馳せ、ゴールドマン・サックスなど世界の名だたる企業はもちろん、日本でも総合商社である豊田通商が投資するなど注目されており、特に医薬品のデリバリーを中心にソリューション展開を予定しています。

 

最高時速130キロで半径80キロの範囲をカバー

Ziplineは各地域に配送センターを設置しています。そのセンターは主に医療倉庫とドローン空港で構成されています。医療倉庫には、ライセンスを持った薬剤師を含む高度な訓練を受けたスタッフを配属し、注文商品の梱包・配送を行っています。各配送センターは、2万2,500平方キロ以上のサービスエリア内の任意のポイントに毎日何百もの配送を行うことができます。1つの配送センターで東京都の10倍以上の面積をカバーしている計算です。

デリバリーの流れとしては、各地の病院から配送依頼がくると、前述のように医療従事経験のあるスタッフが医薬品を梱包し飛行場スタッフに渡します。受け取った飛行場スタッフはそれをドローンの底に収納。医薬品だけに配送間違いがあってはならないので、ドローンと配送品の情報をスマホによるQRコードの読み取りで紐付け・確認します。準備完了したらドローンを発射台に乗せ、飛行場からの飛行許可が降り次第発射します。 目的地に到達すると、ドローンが所定のポイントの上から小さなパラシュートで商品のケースを投下します。ドローンはリアルタイムの風のデータに基づいて投下ポイントを調整し、パッケージが目的地まで安全かつ正確に届くようになっています。

ドローンのスピードは最高時速130キロに到達し、一回のデリバリーで半径最大80キロのエリアまでの配達が可能。東京の皇居から発射すると、南は館山や箱根、北なら栃木市まで到達する範囲になります。また、ドローンは飛行機型で飛行が安定しており、天候に左右されないため、雨が降っていても配達ができます。

これまでもシリコンバレーを中心にドローンによるデリバリーの開発はされていましたが、新型コロナウイルスの拡大がそのニーズを押し上げ、テクノロジーの発達を加速させています。

Zipline運営の拠点となる配送センターには、倉庫とドローン発射場があります。各センターは天候を問わず営業時間12時間で平均30回、365日休まずドローンを飛ばしています
配送の注文を受けると医療資格を持ったスタッフが注文の品を梱包。飛行場スタッフに渡すとドローンに格納し発射します
ドローンが目的地付近に到達すると、本体の底が開いて商品ケースを落下させます。落下ポイントは状況により自動的に調節され、数メートルの誤差で落とすことができます。ちなみに、ドローンの飛行中は、専用のタブレットで追跡し飛行ルートなどのチェックが随時可能
Text:ブランドン・片山・ヒル
米国サンフランシスコに本社のある日・米市場向けブランディング/マーケティング会社Btrax社CEO。主要クライアントは、カルビー、TOTO、JETRO、伊藤忠商事、Expedia、TripAdvisor等。2010年よりほぼ毎週日本から米国進出を希望する企業からの相談を受け、地元投資関係者やメディアとのやりとりも頻繁。 http://btrax.com/jp/

掲載号

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(※記事内容は変更になる可能性があります)

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