2020.04.27
データでまるわかりECの現状と未来 情報を制する者がECを制する!
世界的な経済危機が囁かれている一方で、これまで以上にECが求められる時代が到来しようとしています。混迷の時代に自分たちが置かれた位置と方向性を正しく読み解く方法を、JECCICA(ジャパンEコマースコンサルタント協会)代表理事の川連一豊さんが解説します。
2020年のECトレンドを読み解く3つの方法
ECトレンドの全体像を知りたい場合には、まず経済産業省や野村総合研究所などが公開しているデータから大きな流れがどうなっているか、そして各EC関連企業のIR情報を見てトレンドを確認し、そして最後に実際の現場を確認するという順番で見ていくことがおすすめです。
これをキーワードとしてまとめると、次の3つに集約できます。
●大きな流れをつかむ
●IR情報で各ファクターの流れをつかむ
●現場、現物、現実でリアルをつかむ
実際に経済産業省や野村総合研究所のデータを長年見ていくと、ここ最近の数値は当初に予想されていたよりも若干伸び率が下がっています。もちろん、それでも全体的には成長傾向にあることは間違いなく、消費者の行動変容次第でEC需要がさらに高まることも予想されます。
しかし、より重要なのは自社が扱う商材がEC市場のカテゴリでどうなっているかです。たとえば、分野ごとに詳細に見ていくと書籍、映像音楽ソフトは26%から30%のEC化率で4%伸びています。また、ワインを含む食品・飲料・酒類は市場規模が1兆6,919億円で2.64%というEC化率です。また、文房具の市場規模は2,203億円ですが40%を超えるEC化率です。こうした数字をどう見るかは事業を進めていくうえで重要なデータとなります。
ちなみに、もし私が文房具店だったら、「状況を考えるといまからECに参入するのは厳しい。さらに、EC化率は40%もある」のように分析を進め、何かしらほかの方法も模索する必要があると推測します。
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次に、上場している会社はIR情報を公開しているので、この情報を参考にします。たとえば、モールなら「楽天市場」や「Yahoo!ショッピング」、決済ならば「GMOペイメントゲートウェイ」、物流なら「クロネコヤマト」や「佐川急便」など各社のデータはとても貴重な情報源です。
実際に国内モール大手の楽天のIR情報を見ると、流通額は成長しているものの、以前のIRと見比べるとずいぶん売上の構成が変わっています。グローバルで伸びていることや、楽天経済圏のつくり方と合わせて考えると、同社はECというよりフィンテック企業になっていく印象を受けます。
また、ヤマト運輸のIR情報からはドライバーの働き方改革やタッチポイントの状況がわかりますし、決済のGMOペイメントゲートウェイのIR情報からはオンライン決済の伸びが25%もあることが分かります。そして、これはEC全体の伸びより成長していることを示しています。
一方、キャッシュレス化が進んだことで対面決済や金融機関向けもそれぞれ50%、60%と伸びているのも気になります。ここではオンラインとオフラインの垣根を超えたOMOやオムニチャネル化の動きも意識したいところです。
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これらのデータを見たうえで、それぞれの会社の現場を見ると、実際の動きが納得感を持って理解できます。現場ツアーや勉強会、セミナーからの懇親会などの機会で現場の声を聞くのは大切です。
また、ECショップから実際に購入すると、リアルな情報が得られます。たとえば問い合わせからの回答スピードやサイトのつくり、梱包状態などなど、聞いたことのある話と現実とのギャップもわかります。さらにECサイトで実際にどのソリューションやプラットフォーム、チャットシステムやMA(マーケティングオートメーション)を使っているかが一目瞭然です。
EC担当者の皆さんは、Webでの情報収集に加えて、現場、現物、現実という「3現主義」を心がけましょう。