2020.02.27
ECサイト業界研究 Web Designing 2020年4月号
ECのCMS活用 D2Cと[攻め]の販売
2020年1月に米国ニューヨークで開催された世界最大規模のリテールショー「NRF2020」の話題は、まさに「D2C」一色。新しい販売方法が急速に広まっています。今回はそのD2Cから、ECのCMS活用における「攻めの販売」についてまで考えてみましょう。
「攻め」のD2Cビジネス
D2Cとは、「Direct to Consumer」の略で、自ら企画・製造した商品をリアル店舗やネットモールも介すことなく自社のECサイトのみで直接販売するモデルのことです。ECと何が違うかというと、ECは基本、「小売を介した」ビジネスであり、店舗やモールなど数ある流通経路の中の一つを指しているのに対し、D2Cは顧客に直接販売する販売方法のことを指します。
小売を介さずに直接顧客と繋がるため、彼らの購買状況や利用状況、嗜好などさまざまなデータを収集して分析し、顧客への情報発信、広告、マーケティング、購入までをデジタルで完了します。ちなみに、このD2Cの考え方が発展し、最近ではDWC(Direct with Consumer)という、顧客と一緒にモノやサービスをつくっていく流れも出てきました。米国ではユニコーン企業(評価額が10億ドル超の未上場企業)が続々登場していて、日本国内でもD2Cブランドが相次いで生まれ、投資も進んできています。
D2Cの具体的な施策としては、ネット上で影響力のあるインフルエンサーを利用した情報の発信が代表的です。EC事業者の中にもインフルエンサーを使ったり、顧客と一緒に商品企画を行っている店舗があります。その点ではD2C企業と遜色ないかもしれません。しかし、データを一元管理できているかと言えば、現状はそこまでできている企業は少ないでしょう。
そして、前述したD2Cの特長の一つ、自社ECサイトのみで販売するということは、集客はもちろんリピーターづくり、体験創出などを自社だけでつくり出さなければなりません。そこで、成功している事例には(01)のような特徴が見られます。
これらの特徴から見出せるのは、すべての取り組みを自社のみで、デジタルで完結させるため、自ずと顧客のデータは自社のみがすべて取得することになり、それらを管理し、分析して顧客がもっとも欲している情報、そして商品を提供するよう戦略を立てているということでしょう。
それらのデータを取得するために大切になってくるのは、「顧客とのコミュニケーション」です。これをいかに有意義にできるかがキモとなります。D2Cの取り組みに成功している企業には、5つの特徴があります(02)。これらを総括すると、形式的なやりとりに止まらず、顧客が企業や商品に共感し、自らが進んで情報を発信してくれるように働きかけられるか、あるいはそのような体験を提供できるかを第一に考えていると言えます。
ECを行っている店舗では、できるだけユーザーからの問い合わせ対応時間を削減するためにWebサイトにFAQページを作成したり、最近ではチャットボットで対応したりしていますが、D2Cではむしろその逆をいく方針であり、できる限りユーザーとの距離を近く、積極的にコミュニケーションを取ることに腐心しています。ただサポートするのではなく、マーケティングにも活かそうという「カスタマーサクセス」とも言えます。
D2Cの取り組みに必要なもの
では、D2Cを取り組んでいく場合、必要な取り組みにはどのようなものがあるでしょうか。少なくとも以下の3つは意識したいです。
❶SNSなどへの拡散
❷Webだけではない情報発信
❸外部マーケティングツールとの連携
まず❶の「SNSなどへの拡散」を見てみます。ツール面で見てみると、こういった機能を持っているものは現在いろいろ登場しています。例えば、簡単にネットショップを構築できるWordPress専用ショッピングカート「ウェルカート」です(03)。ベースがWordPressだけあって、さまざまなプラグインもありますから、SNSへの拡散はもちろん、拡散機能としては十分あります。
ちなみに、ウェルカートはセキュリティ面も信頼が高いです。「Welhost」という最新の保守サポートプランが用意されていて、高速化とセキュリティ対策が万全なので、自分でサーバを立てて構築するよりも安心して運営ができます。この保守サポートは高速WordPress仮想環境「KUSANAGI」(https://kusanagi.tokyo/)を搭載していますので、かなりの安心感があります。ECは全力で販売に力を入れないとなかなか売上が伸びませんので、システム運用は任せたほうがよいでしょう。
話を戻しましょう。施策面で見てみると、SNSでの拡散で現在の潮流になっているものといえば、UGC(User Generated Contents)があります。以前からUGCを実施する企業はありましたが、インスタグラム躍進の影響で、UGCを使って販売する企業も増え、手法もますます増えてきました(04)(05)。
例えば家具のECサイトでは、1ショップだけではなかなかすべてのシチュエーションを撮影することができませんが、ユーザーの力を借りればさまざまないろんなシーンの画像をサイトに反映することができます。
ファッションサイトでは、商品を使ったコーディネートをアップすることで、さまざまな人の顔が出てきて「ひと気」を感じることができます。1ページにたくさんのお客様が登場することで楽しい雰囲気も出ますし、売れている感じも出ます。
APIで外部ツールと連携
次に、❷「Webだけではない情報発信」❸「外部マーケティングツールとの連携」を見てみましょう。
今後D2Cで間違いなく必要になってくるテクノロジーと言えば、「API連携」です。APIはそもそも「マイクロサービスアーキテクチャ」というキーワードでさまざまな企業が使って広がってきていました。しかし、API連携したことによるトラブルが頻発したり、Webの処理スピードが遅くなったりして、止めざるを得なくなったという企業も多くあります。
とは言っても、ECやD2CモデルにとってAPI連携は今後も必要になります。なぜなら、時間や労力のムダをなくし最低限のコストで仮説の構築と検証を繰り返し、市場やニーズを探り当てていく「リーン・スタートアップ」を行い、急激に成長するためには必要なテクノロジーだからです。現状では幾多の失敗事例からノウハウを吸収している段階になっていると言ってよいでしょう。
APIは各モールや各ツールがどんどん出してきていますが、この動きは今後さらに広がっていくと思います。APIが利用できるとWebだけではなく、DM発送やアプリプッシュはもちろん外部のマーケティングツールやBIツールなどにも連携することができます。
例を挙げてみましょう。Eストアーが提供している「ショップサーブ」では、現在さまざまな拡張機能を提供しています(06)。その中の一つ、A/Bテストツール「Eストアーコンペア(07)」は、今のページデザインでの新規購入やリピート購入の成果がリアルタイムに数値で出てくるため、どちらがどういった購入シチュエーションに強いのかといったことが一目瞭然で判断できます。
また、特徴的なのは、メールとSMSメッセージ、各種SNSと連携が可能で、Webサイト以外での情報発信もこのツールで行えます。ちなみに、ショップサーブ以外のどのECシステムでも利用可能になっています。
Eストアーコンペアの他にも、顧客とOne to Oneコミュニケーションができるメール機能、そしてAPIもかなり多く用意されてきていますので、自社に必要な施策が可能なツールを探してみるといいと思います。
API連携はセキュリティに注意
API連携と言われると専門的な知識が必要なイメージもありそうですが、最近では「メルカート」「スマレジ」のように、カスタマイズはできませんが、導入することであっという間にリアルとECとアプリ、CRMなどを構築できるものも揃ってきました。コストも以前とは格段に下がってきていますし、早い導入も可能です。このような仕組みを使えば売ることに専念できます。米国のユニコーン企業のECサイトやアプリ、マーケティングオートメーションのツールを調べると、このようなテクノロジーを使っているのがよくわかります。
ただし、API連携はデータベースに穴を空ける作業ですので、セキュリティには気をつけなければなりません。生半可なセキュリティではあっという間にサーバに入られ、不法侵入者が再度入り込むための裏口(バックドア)を付けられてしまう可能性も高いと言わざるを得ません。セキュリティはサーバ側だけではなくどちらかと言うと使用する店舗や企業側の責任が重いです。甘い考えなら止めておいたほうが無難です。
今回はCMSなどツールを活用した「攻めの販売」というテーマで最新の情報を盛り込んでみました。テクノロジーをうまく使って店舗、企業を成長させていきたいですね。