2020.03.16
データのミカタ Web Designing 2020年4月号
コンテンツマネジメントは顧客体験のマネジメントでもある データアナリスト萩原雅之氏による統計コラム
AmazonやNetflixのようなエンタメ・ECサイトにおいては、パーソナライズやレコメンデーションが使いやすさや継続利用につながることはよく知られている。では企業サイトやブランドサイトはどうだろう。顧客によってコンテンツの内容や見せ方を変えるべきかどうか、実は難しい問題だ。
パーソナライズのためには、属性や行動ログなど訪問者のデータを収集しCMSと連動させる必要がある。そうした機能を持つCMSは少なくないので、やる気があれば実装はできるはずだ。本当に難しいのは、データをどうコンテンツ選択や配置に反映させるかのプロセスだ。パーソナライズされたコンテンツの感じ方は、訪問者側の感覚や気持ち次第だ。それを快適に思わなければ、意味がないどころかマイナス体験になってしまう。
アドビ システムズの自主調査「2019 Adobe Consumer Content Survey」の結果を見ると、ブランドサイトや企業サイトのコンテンツを不愉快に思う理由として、「自分自身や置かれている状況に関連性がない」(24%)、「すでに購入した情報がおすすめとして出てくる」(14%)という経験の一方、「パーソナライズされ過ぎていて気持ちが悪い」(25%)も挙がっている。パーソナライズが過剰でも不十分でも不満が出るのだから、さじ加減は難しい。
その意味で、コンテンツマネジメントは顧客体験のマネジメントでもあり、CXM(カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント)という言葉はもっと普及してもよい。訪問者は何を快適に感じ、何を不愉快に思うのか、顧客心理の理解が欠かせない。だから、CMSの設計にあたっては運用効率だけではなく、顧客セグメントをよく知るブランドマネージャーやマーケターの知見を取り入れよう。同じCMSを使っても、訪問者の快適さには大きな違いが出るはずだ。
- Text:萩原雅之
- トランスコスモス・アナリティクス取締役副社長、マクロミル総合研究所所長。1999年よりネットレイティングス(現ニールセン)代表取締役を約10年務める。著書に『次世代マーケティングリサーチ』(SBクリエイティブ刊)。http://www.trans-cosmos.co.jp/