2019.07.08
プロモーションの舞台裏 Web Designing 2019年6月号
TikTokで卓球リーグ「Tリーグ」の認知向上だ!
2018年10月、日本に新たなスポーツリーグが開幕した。国内外から強豪選手が集う国内最高峰を目指す卓球の「Tリーグ」である。そのTリーグが動画アプリ「TikTok(ティックトック)」を公認アプリとして採用。TikTok活用による認知向上の成否を取材した。
https://tleague.jp/
TikTok:@tleague_official
□企画:(株)Tマーケティング
課題は新スポーツリーグの認知向上
昨今、国内の卓球熱は高い。近年の卓球日本代表の目覚ましい活躍があり、実績ある有名選手の露出も重なる。2018年10月、さらなる発展を目指し発足した「Tリーグ」だが、新たな試みの1つとして公認アプリに「TikTok」を採用している(01)。
TikTokの中心利用層は10代とされるが、最近は40代男性ユーザーが増えているという調査も出るなど、捉えどころが難しい側面がある。そうであるほど気になるのは、TikTok活用による成果である。TikTok担当の松永容樹さんに話を向けると、Tリーグがターゲットに考える年齢層は3~100歳。10代に限っていないばかりか、かなり幅広い層を念頭に置いていた。
「卓球は他のスポーツと違って、競技者も愛好者も低年齢層からかなりの高齢層までが一定の割合を占めています。私たちの課題の第一歩はとにかく認知。誰も知らない状況からのスタートでしたので、幅広い年齢層に名前と存在を最低限知ってもらうことが喫緊の課題でした」
新たな観戦スタイルを生み出したい
Tリーグには男女4チームずつあって、2018年秋に開幕。男女それぞれチーム総当たりのリーグ戦が展開。2020年以降は2部の「T1リーグ」、3部の「T2リーグ」を新設する構想で、将来的にピラミッド型のリーグ構造実現を目指す。
「リーグ開幕前の準備期間は、“Tリーグって何?”という状況。認知なくして集客の出発点にも立てません。当時、新たなSNSとして注目を浴びていたTikTokの立ち位置をTリーグと重ねながら、スポーツファンとの新しい形のコミュニケーションを取れないか? 両者が組んで新たなスポーツ観戦のスタイルも確立できればとも考え、積極的にTikTokを活用中です(02)」
TikTokは、15秒~1分以内の動画に音楽をアプリ内で加えて投稿する。新しい動画プラットフォームとしてビジネスシーンでも無視できない存在感もある。Tリーグでは認知向上を最優先にTikTokを活用。集客のためのノルマを設けず、認知優先の運用で一定の成果につなげている。Tリーグ在籍の主力選手層に10代が多く、抵抗なく協力が得られやすい背景も追い風にして、「知らない相手にまずはノリのいい動画を届ける」スタンスで拡散を図る。
ちなみに2019年3月で閉幕した最初のシーズンでは、男女全86試合で約11万人。体育館などの開催も多数あって、収容人数に限りが出る中、1試合平均1,276人という入場者数を記録した。
心がける「雰囲気が伝わる動画」
投稿動画は、TikTok内で流行っている企画にTリーグも参加(便乗)する形の動画(歌詞の振りにあわせて踊る「言いなり選手権」と呼ばれる企画のTリーグ版「卓球言いなり選手権」など)と、試合以外の場面の選手の様子などを映した動画の2種類に分かれる。公開動画への意識について、気をつけている1点がある、と松永さんがいう。
「卓球は個人競技と思われがちですが、Tリーグは各チームが総当たりで戦う団体競技。私もよく選手相手に撮影を行う身として、団体スポーツであることが無意識に感じられる構図は心がけています」
一例で挙げてくれたのが、平野美宇選手がTリーグの企画したガチャガチャを試す場面を映したエントリー。周りと和気あいあいとする選手の様子から、個人競技という、卓球への先入観とは異なる雰囲気を伝えたい意図もあったのだ(03)。
「選手から感じるのは、TikTokがテレビや雑誌だけでなく、YouTubeよりもさらに身近な感覚のメディアだと受け止めていることです。自然と距離感を抱かせない動画づくりができ、短尺ですからその場で選手を前にプレビューもしやすく、被写体への負担が少なく済むのも利点です」
自分の感覚ありきで回避しないこと!
ズバリ、TikTokへの手応えは? 「認知に悩む新規事業には強力な武器になるはず」と松永さんは実感を伝えてくれた。
「まだまだ前向きな試行錯誤を続けている状態ですが、シーズン前と比べて終了後の認知向上への体感は強いです。名前や存在が知られないとそもそも検索されないけれど、TikTokだと“面白い動画”を入口に認知のきっかけになるからです(04)」
例えば、松下浩二チェアマンが積極的に参加するTikTok動画を「知らないオジサンが…」をフックに10代ユーザー中心に共有された後、TikTokから離れた周辺にも徐々に、10代に縛られず認知が広がっていく手応えをTリーグ側が1シーズンを通じて感じている。肝は、Tリーグ自体を知らずにきっかけがつくれることに尽きる。
「自分の感覚ありきだと、何がいいのかわからずとも、理屈で説明できないが何度も見てしまう中毒性こそTikTokの魅力。わからないからやらない、は避けたいです」
Tリーグは今年8月末から来季シーズンの開催が決定した。新シーズンでの新企画にも期待したい。まったく認知がない状態を変えたい目的での施策にも使える。迷うならトライする価値はありそうだ。