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デザインの力でブランドイメージを再構築 “ミレニアル世代の心を?み取れ!”

キャリトレのイメージ刷新へ向けた“挑戦”

印象的なTV CMでお馴染みの会員制転職サイト「ビズリーチ」。その急成長を支えているのは「クリエイティブ」を重視し、多角的な「デザイン」を追求する会社の取り組みにあったということを皆さんはご存じでしたか? 今回はその秘訣を明らかにするため、同社が運営する20代に向けた転職サイト「キャリトレ」を担当したデザインチームのメンバーである、浅野里英さん、臼倉すみれさん、岡本千広さんに話を聞きました。

 

ビジネスの中心に“デザイン”の力を

——HRテックの分野で多くの事業を展開しているビズリーチさんが、デザインへの取り組みを強化されたきっかけについて教えてください。

浅野里英:弊社は2009年創業のベンチャー企業で、現在従業員数が1,300人を超えるなど組織的にも大きな転換点を迎えています。もともと代表の南(南壮一郎代表取締役社長)をはじめ、取締役はデザインの重要性を感じていたのですが、デザイン経営の実践には至っていませんでした。その後、2017年に現 CDO の田中裕一が入社し、2018年8月にCDO(最高デザイン責任者)のポジションが設けられ、デザイン経営の推進が本格化していきました。それに合わせて「デザイン本部」が組織され、プロダクトデザイン、コミュニケーションデザイン、デザイン戦略推進の3部門をベースに、デザインブランディングやUX戦略などデザイン戦略を推進する部署が新たに設けられ、常時70名以上が在籍しています。

——会社としてデザイン経営に力を入れられているのですね。ビズリーチのデザイナーにも変化がもたらされましたか?

浅野:これまでビズリーチは情報設計力や課題解決能力など、左脳的な発想が秀でているデザイナーがとても多かった印象です。この数年デザイナーの採用を積極的に進めていく中で、多様性のある人材が次々と入ってきてくれてクリエイティブの表現の範囲が広がっています。ここにいる岡本は美大在学中からイラストで賞を取ったりと活躍していて、ビズリーチに新卒入社後もその才能を発揮してもらっています。

——岡本さんがビズリーチを志望した理由は何でしょうか。

岡本千広:デザインに力を入れているというのもありますが、何より働いている人が楽しそうという点に惹かれました。制作の仕事だと「これまで何をつくってきたのか」という点を見られる傾向があるのですが、ビズリーチでは作品よりも「どういう人間なのか?」を見たうえで一緒に働きたいと思ってもらえたのが嬉しいですね。

(左から)デザイナー:浅野里英さん/デザイナー:臼倉すみれさん/デザイナー:岡本千広さん

 

同世代の共感を呼ぶためにチームで取り組む

——このメンバーで20代向け転職サイト「キャリトレ」のイメージ刷新に挑むことになったわけですね。それぞれが主に担った役割などを教えてください。

浅野:「キャリトレ」はこれまで3年ほど私のほうでアートディレクションを担当してきたのですが、今回2018年5月にサービスのリブランディングを実施することになりました。LP(ランディングページ)からのスタートでブランディングの方向性も比較的自由に変えて良いというものだったのですが、自由にできるということはそれだけ責任もあり、挑戦しがいのあるプロジェクトだと感じましたね。ブランディング戦略を策定する過程で「キャリアをカチトレ」というコンセプトが加わりましたので、このメッセージがよりダイレクトに、ターゲットとする20代に伝わる表現を追求しようと苦心しました。具体的には、これまでの人物写真を用いたものから、イラストを大胆に用いていこうというものです。

岡本:そのLPのイラストを担当しました。構図は10パターンほど作成し、チームで議論を交わしながら2週間ほど掛けて決定していきました。20代向け転職サイトということで、若者の「熱い」「スピード感」を表現できるイラストを目指しました。

臼倉すみれ:私は今回2人につくってもらったイラストとデザインをほぼ同時進行でコーディングして、キービジュアルにモーションを加えました。すでにイラストがとても良いものだったので、ここに「今にも星を勝ち取ろうとしてる」ストーリーがより伝わるような動きを加えました。そこが私にとっての今回の挑戦でしたね。チームの結束が強いので、微妙なニュアンスを相談しながら着実に形にしていけたのが良かったです。

——普段からチームで話しあって進めるという仕組みが社内にあるのでしょうか。

浅野:本件に限らず、会社全体としてレビューしあうという文化は根付いています。私たちの仕事を他のチームに見てもらってアドバイスをもらう機会は毎日のようにありますし、私たちも他のチームの仕事を見てフィードバックしています。核心を突いた率直な意見をもらえるのはありがたいです。

岡本:入社1年目の私がアドバイスをもらうことがあるのはわかるのですが、10年以上続けているデザイナーに「これをつくってみたけど、どうしたらもっと良くなると思う?」と相談を持ちかけられるというのは驚きました。デザイナー同士、年齢やキャリアに関係なくリスペクトを持って意見を言いあえる関係というのはとてもいいです。

臼倉:うまくいかないことがあっても、先輩から「最初からいいものができるわけはない、ここから磨き上げることが大切」と言ってもらえたことは感謝しています。

浅野:弊社は業務の幅がとても広いのが1つの特徴となっています。イラストならイラストだけと役割を設けたほうがたしかに効率的なのかもしれません。しかし、あえてそのような枠組みには囚われずに、議論をしながら全員で仕事を進めていくというところがユニークなのだと思います。とても働きやすい環境である一方で、自分で自分のキャリアデザインを描いていくことが強く求められているのではないかと考えています。

挑戦する20代のための転職サイト「キャリトレ」LP。リニューアル前のデザイン(左)とリニューアル後(右)。「キャリアをカチトレ。」というコンセプトが大胆に配置されたイラストで表現されています。[URL]https://www.careertrek.com/lpm/ct002
「キャリトレ」のメインターゲットとなる20代は動画視聴に慣れています。そのためLPのキービジュアルとフッター部分のイラスト部分にも「動き」が付けられ、エモーショナルな表現が追求されています

 

TikTok動画広告も展開、リニューアルの成果は?

——キャリトレのブランドリニューアルではLPの作成と連動して、キャッチコピーの作成からバナー画像、さらには動画広告の展開も行なったそうですね。

浅野:動画は私と岡本、アニメーションは臼倉が担当しています。やはりキャリトレのメインターゲットとなる20代はInstagramのストーリーズなどで動画に慣れていますので、動きのあるものにチャレンジしていく必要性を感じました。

——あの動画やアニメは外部制作ではなく、すべてご自分たちで手掛けたんですか?

浅野:ちょうどTikTokの広告配信が始まったタイミングでもあり、自分たちでやってみようということになりました。業務に必要なツールは導入できるので、Adobe PremiereやAfter Effectsを使ってつくっています。

岡本:iMac Proが導入され、部署全員が使えるようになったのも大きいですね。学生時代に動画をつくっていた経験もあったので楽しみながら制作できました。

臼倉:他にもCINEMA 4Dや海外のツールなどが自由に使えるスーパーマシンが何台か用意されています。常に最先端の環境に触れられるということが、新たな挑戦をする際のきっかけをつくってくれますね。

——新しい取り組みには失敗もあるけれど、失敗がなければ次の改善に活かすこともできませんものね。LP自体のリニューアル効果のほうはいかがでしょうか。

浅野:リニューアルからまだ日が浅いのですが、既存のLPと比べてCVR(コンバージョン率)が3ptアップしています。さらに、メインターゲットである20代の含有率も5pt上がっており、通常のリニューアルではここまで改善することは珍しく、LPについては文句なしに成功と呼べるでしょう。

——デザインチームの努力で成果を上げることができたように感じますが、今後さらに挑戦していきたいことはありますか?

浅野:今回のリブランディングで若い世代への認知度が高まりました。しかし、必ずしもこれで満足はしていません。キャリトレがどのようなサービスなのかを伝えていく余地はまだあるので、その部分の追求はしていきたいと考えています。

浅野さん、岡本さんが作成したTikTokの動画広告メニュー。20代へのリーチに成功した半面、新たな課題も浮上しました。しかし、これもまた挑戦によって得られた成果であるとデザインチームは前向きです

 

さらなるチャレンジに向けて

——最後に、皆さんとしてはどういう人たちと新たなチャレンジに臨みたいですか?

浅野:おかげさまでビズリーチという会社の知名度も少しずつ上がり、組織としても規模が大きくなっているので、ここには自分たちでつくったものを世の中にダイレクトに発信できる土台があります。こうした挑戦ができるという意味では、今はとても面白いタイミングですので、自分の仕事を発信していきたいという人と仲間になりたいです。

臼倉:私は自分で仕事をつくり出せるという人に憧れますし、一緒に働きたいです。改善には限界がないと思っているので、持っている技術を楽しみながら、どんどん改善できる人とともに成長していきたいです。

岡本:この会社の仕事では、自分たちがつくったものがその後どうなったのかを見届けられますし、受け取った人がどう感じたのかを知ることもできます。そうすることで自分がつくったものに対して自信を持って進めますし、他人に対してのリスペクトも常に失わずにいられるところが良いと思います。こうした気持ちに共感できる人たちと一緒に働きたいです。