2019.04.12
Bay Area Startup News Web Designing 2019年4月号
コンテンツをマルチユース&キュレーション CMSの既成概念を打ち破る「Qurate」
海外で起こっている、あるいは起こりつつある新しいビジネスの潮流、近い将来に日本にやってくるであろうビジネストレンドなどを紹介・考察します。米国サンフランシスコ在住の筆者が、サンフランシスコおよびシリコンバレーの「ベイエリア」を中心に、イケてるスタートアップを中心とした会社、サービスを毎月1つ取り上げながら、その背景や目的、今後日本で起こりうるトレンドについて追究します。
福岡発の次世代CMS開発企業
今回は、次世代CMS(オンラインパブリッシングプラットフォーム)を開発する株式会社Qurate(キュレイト)を紹介します。Qurate社は福岡市が主催して我々btraxが運営を行なっているグローバルスタートアップ育成事業「Global Challenge Startup Fukuoka」に参加したスタートアップの一つです。
このような経緯もあるため、同社は厳密に言うと、サンフランシスコベイエリアのスタートアップではありません。しかし、今からおよそ15年前の2004年に来日したトム・ブルックによって2014年に福岡で創業され、2016年にサンフランシスコ・シリコンバレーで大きなビジネスチャンスを掴んだ企業という意味では、ベイエリアに少なからず所縁のある企業と言えます。現在は福岡に本社を置いて十数人規模の企業に成長し、今後が期待されるスタートアップの1つになっています。
コンテンツをさまざまなプラットフォームに最適配信
同社が提供する「Qurate」は、新しいタイプの「ブランドサイト生成プラットフォーム」を目指していて、これまでのCMSとは一線を画すタイプのクラウドサービスです。
まず、同一CMS上に複数のWebサイトをつくることができ、アプリやソーシャルメディア、Apple社の「News」アプリやFacebookの「インスタントアーティクル」などのサードパーティ製アプリ、サービスに最適化した形でコンテンツ配信が可能です。また、管理・分析や、複数のサイトも一つの管理画面で一元管理できる仕組みを提供しています。
そして、それぞれのプラットフォームへのコンテンツ投稿を一括で予約・管理できる機能や、それぞれの投稿コンテンツに対する反応が一覧できる機能などを持ち、広告代理店や企業のマーケティングおよびブランディング担当者にとっての作業効率の向上を実現しています。
例えば、Qurateを採用している企業の1つ、大手酒類メーカーのバカルディのレシピサイト(http://www.bacardijapan.jp/cocktails/)を紹介しましょう。当サイトで掲載しているカクテルのレシピが1万6,000種類もあります。これらのコンテンツの更新をするにも管理が大変なのは想像に難くなく、SNSとの連動性に非常に労力がかかります。Qurateではこれを1画面で見通し、一元管理できるのでさながら「コンテンツのハブ」としてのプラットフォームとして活用されています。
WebやSNS上のコンテンツを収集し管理・分析
Qurateのもう1つの大きな特徴は、ソーシャルメディア上のコンテンツを拾い集めてくることができることです。キーワード、 ハッシュタグ、フレーズ等で設定されたSNSなどの外部フィードをまさに「キュレイト(収集)」することで、随時自動更新されるダイナミックなサイト構築を実現しています。
収集したコンテンツは自社の独自コンテンツとともに、ひとつの流れとして、一覧表示することができます。これらの拾い集めたコンテンツは自動アップデートもできるようになっています。
また、それぞれのコンテンツに対してのユーザー行動データを収集、分析することで、コンテンツ発信を効率的かつ効果的に行い、 ユーザーの声を聞きつつ、 エンゲージメントを高めることも可能にしています。
他にも、ブランドサイトに欠かせないモニタリング機能も実装しており、ソーシャルチャネルを通じてコンテンツアセットのパフォーマンスを追跡し、 時間の経過とともに顧客のエンゲージメント(視聴者関与の傾向)がどのように変化するかを特定しています。
Qurateのコンテンツ軌跡ビジュアル化ツールにより、クロスチャネルコンテンツ戦略を知らせることで、どのアセットが最良のパフォーマンスを記録したか、どれが最良のパフォーミングアセットだったか、 また、どのようなタイプのコンテンツが拡散する可能性があるか、どのコンテンツがシェアされる可能性が高いかを教えてくれます。まさに現代のコンテンツマーケティングに必要かつ便利な機能がQurateに凝縮しているのです。
1人のデザイナーが爆発的成長の鍵
現在Qurate社は、福岡の他にロンドン、台湾、東京、パリにもオフィスを構え、本格的なグローバル展開を視野に入れています。ファウンダーのトム・ブルックはイギリス出身で、スタッフのほとんどが日本人ではなく、社内のコミュニケーションは英語で行われ、プロダクト自体もグローバルのユーザーをターゲットにしています。
ブルックが言うには、今後Qurateが目指すのは、SNSやWebに限らず、多種多様なコンテンツやサービスをつなぐ「ハブ」の役割を果たすことだそうです。