「Backlog World 2019 -プロジェクトマネジメント×働き方改革-」イベントレポート|WD ONLINE

WD Online

特別企画 [PR]

「Backlog World 2019 -プロジェクトマネジメント×働き方改革-」イベントレポート プロジェクトマネジメントでワークスタイルを向上させる!

企画協力:JBUG 
Photo:笠井美史乃

1月26日、東京・千代田区にある秋葉原UDXにてプロジェクト管理ツール「Backlog」のユーザーイベント「Backlog World 2019 -プロジェクトマネジメント×働き方改革-」が開催されました。

Backlogといえば、Web Designing 2019年2月号(2018年12月18日発売)で特集した「Web制作白書2019」のアンケートにて、「よく使うプロジェクト管理ツール」としてトップに名前の挙がった製品です。2017年6月にユーザーコミュニティJBUG(ジェイバグ:Japan Backlog User Group)が発足し、プロジェクト管理の知見やノウハウを共有する活動が各地で行われており、今回のイベントはそのJBUGが主催するものです。

イベント会場には3つの部屋が設けられ、Room 1では基調講演やヌーラボによる「Good Project Award 2019」表彰式、スペシャルセッションなど、Room 2ではプロジェクトマネジメントについてさまざまなスピーカーが発表するセッション、Room 3ではハンズオンセッションやスポンサーの展示・相談会などが行われました。今回はRoom 2のセッション2枠に参加してきましたのでご紹介します。

会場は満席で立ち見も出るほど。皆さん熱心に聞いている様子がうかがえました

 

■クライアントに使ってもらうには? 敷居を下げるための取り組み

Web制作を行うH2O spaceの谷口允(たにぐち・まこと)さんのセッションは、Backlogをいかにクライアントに使ってもらうか、という奮闘の記録「『連絡板』が支える、Backlog嫌いなクライアントとのコミュニケーション」でした。

WordPressによるサイト制作やkintone導入・開発サービスなどを手掛けるH2O space 谷口允さん

オフィスを持たず全員がリモートワークで仕事をしているという同社にとって、プロジェクトマネジメントの中心はBacklog。電話は記録が残らない、メールはタスクの整理がしにくい等の理由からリモートワークの環境に適さず、連絡手段としてほとんど使っていません。しかしクライアントとのコミュニケーションは、なかなかそうはいきませんでした。

リモートワークの環境からすると、クライアントにもBacklogを使ってほしいところですが…
クライアントのBacklog「3ない」。電話・メールの習慣はなかなか変わりません

谷口さんたちが行ったのは、まず1つの案件に対しクライアント側と開発側で別々にプロジェクトを立てること。クライアントとデザイナー/コーダーなどのクリエイターを同じプロジェクトに招待すると、一見効率が良いように見えますが、ディレクターが適切に間に入って整理をしないと、スケジュール調整や修正指示が混乱してしまうことがあります。そこで、クライアント側・開発側それぞれにプロジェクトを立て、ディレクターがそれぞれの進捗を管理することにしました。

さらにクライアント側には「連絡板」というタスクを設置。課題でも質問でも雑談でも、とにかくここに書き込んでもらい、ディレクターがその内容に応じてタスクを立てたり各スレッドの返信欄に追加するなど、内容の振り分け・整理を行っていきます。気軽に使ってもらえる環境を用意し、ディレクターがそれに対応していくことで、クライアントにとってBacklogを使うハードルを下げることにつながりました。

例えば、送付されたテストURLが開かない場合、それがバグなのかミスなのか自分の環境が悪いのか、クライアントには判断がつかないことがあります。そんな時はとにかく「連絡板」に書き込めば、ディレクターが適切に対処してくれます。実際に、この例ではバグが見つかりディレクターがタスクを立てることになったそうです。

Backlogを中心にその他のツールも併用することで、コミュニケーションをスムーズに

「最初はディレクターの負担が多いのですが、ちゃんと整理や掃除を続けるうちに、クライアントが使いやすさに気付いてくれます。そして、慣れていくうちにクライアントが直接タスクを投げてくれるようになります。チャットツールなども併用しながら、進行を円滑にしていただければと思います」(谷口さん)

 

■500以上のチケットを最初に登録することで炎上を防止?! その理由とは

株式会社オルターブースの業務執行役員・COOの藤崎優さんのセッションは、「Backlogでわかる炎上の見分け方、消し方」です。講演内容の紹介ページにあった「500以上のチケットを最初に登録」という一文はかなり衝撃的でした。

Azure開発で多くの実績を持つクラウドインテグレータ (株)オルターブースの業務執行役員・COOの藤崎優さん

オルターブースの受託開発案件では、実際にプロジェクト開始の時点で500以上のチケットを登録しているといいます。アジャイル開発では最初の段階で要件定義が確定していないため、スタートの段階で顧客が作業の全体像をイメージしきれません。そこで、終わりまでに何をどこまでやればいいのか、作業量を“見える化”することが、最初に大量のチケットを登録する目的です。

「これによってスタート時点でゴールを共有することができます。もしこの段階で大幅に溢れているなら削るべきはどこか、逆に守りたいのはどの機能か、ジャッジする軸をつくることができ、開発機能の調整がしやすくなります」(藤崎さん)

やるべき作業を見える化することでゴールを共有。調整のための軸ができるのが利点

さらに大切なのは、追加・変更の発生を最初に合意しておくこと、そして炎上が発生しそうな箇所については事前に察知し早めに交渉に入ることです。同社ではクライアントとのミーティングを週1回設定し、毎週その前にプロジェクトマネージャーがタスクの「棚卸し」を行います。不要・重複チケットは閉じ、必要なものは追加、期限が遅れているものは再設定、必要な遅れであればその内容を調整する…と地道に管理することで、このままではオーバーするであろう項目が早い段階で見えてきます。その時点で顧客との交渉に入ることで、炎上を未然に防ぐことができます。

「この機能は重かったので削りませんか、逆にこれを優先するなら他をどう調整しましょうか、と交渉をします。こちらが柔軟に対応することで、お客様にとっても、ここはトレードオフするがこれは守りたいという要求を通すことができ、納得感を持っていただけます」(藤崎さん)

見える化と柔軟な対応によって顧客は安心感・満足感・納得感が得られ、炎上防止につながります

ただし、これには顧客にしっかりBacklogに入ってもらう必要があるのが「敷居の高いところ」(藤崎さん)。顧客にも“自分ごと”としてプロジェクトに参加してもらった上で、メールは使わない、チケット作成ルールを徹底する、進捗はプロジェクトマネージャーが小まめに整理するなどの取り組みを続けることで、お互いに記録を残すことを重視するようになり、思い違いによる大事なポイントの不一致がかなり減ってきたそうです。

藤崎さんは最後に「Backlogはあくまでツールとして使い、その運用は割と泥臭くやっています」と語り、プロジェクトマネジメントという大きな仕事の中で地道な作業を大切にしている姿勢がうかがえました。

 

■本当の意味で働き方を改革するために必要なこと

イベントの合間に、運営委員長の永野英二さんにお会いすることができました。今回のイベントについて、永野さんの思いをお聞きしました。

「Backlog World 2019」運営委員長 合同会社01wave CEO 永野英二さん

──今回のイベントはユーザーコミュニティが主催なんですね。

永野 はい。これまでに福岡、東京、札幌、広島、岡山、神戸、沖縄でコミュニティが発足し、昨年はヌーラボ主催だったBacklog Worldも今回はユーザー主体(ヌーラボは後援)という形で開催する流れになりました。サブタイトルに「働き方改革」という言葉を入れたのは、とかく時短や副業などが改革の要点として取り上げられる中、本質的な生産性向上のための取り組みを行わなくては、本当の意味での働き方改革にならないと考えたからです。

私はユーザーイベントのJBUGで話す機会も多いのですが、どちらかというとBacklogの話よりプロジェクトマネジメントについての話を中心にしています。ツールにこだわらず、まずプロジェクトマネジメントという考え方を活かしてほしいと思っているんです。そういう意味で、今回のイベントで公募したセッションについては、Backlogの使い方が半分、プロジェクトマネジメントの本質的な話が半分という形で選ばせてもらいました。

──参加者の方に、この機会をどう活用してほしいですか?

永野 プロジェクトマネジメントという考え方があることを仕入れていってもらえたらと思います。マネジメントというとどうしても上の役職の人がやるものと考えがちですが、実はそんなに難しいものではなく、生活の中でも活かすことができます。例えば「車を買う」ことをプロジェクトにすれば、選び方から資金の捻出までタスクに分解して考えることができますよね。個人レベルでプロジェクトマネジメントを取り入れてもらえれば、それが働き方改革につながっていくのではないかと思います。

──セッションも盛況で、参加者の方も熱心に聞き入っていらっしゃいました。

永野 皆さん、何かしら「どうやったらプロジェクトがうまく回るか」と課題意識をお持ちだと思うんです。プロジェクトマネージャーはプロジェクトにおいて決断するということも仕事のひとつです。その点は経営者に近くて、孤独な部分があるんです。ですが、業種は違ってもマネジメントの経験・知見は多くの方に共有できる部分があるはずです。今日は聞くだけでも、この場をきっかけに同じ悩みや考え方を共有できる知り合いをつくったり、JBUGに参加してもらって、次はご自身の知見をアウトプットしてもらう。ユーザーコミュニティとして今後はそういう関係性をつくる場になっていけたらいいと思います。

──お忙しい中、ありがとうございました!

仕事の中身は違っても、もっと良い形でマネジメントしたい。無理や無駄を減らしながら良いものを開発したい。そんな思いが集まった、ユーザーによるユーザーのためのイベントでした。

今後も、JBUGは各地でイベントを開催していくそうです。詳細は[こちら]よりご確認ください。