陣屋の地は、鎌倉幕府の侍所別当・和田義盛公の陣地だったと言われています。豊かな温泉が湧き、弓矢に使う矢竹が豊富に取れる鶴巻の地は陣地を構えるのに最適だった、というのが理由です。和田氏の一族は「いざ鎌倉」と頼朝の号令がかかるまで畑を耕し、山に潜む猪や鹿を採り、野山を駆け巡って体を鍛えていたそうです。
陣屋の敷地内にある庭園には四季折々に色をつける草花や昔ながらの竹林があり、訪れた人々の目を楽しませてくれます。
庭園ギャラリー: http://www.jinya-inn.com/information/index.html#wrp_gallery
(陣屋の入り口にそびえる「トトロの木」と呼ばれる楠の巨木。陣屋の庭園は映画監督の宮崎駿氏が幼少期に遊んだ場所として知られている)
(若葉)
陣屋では13時30分から大盤解説会が始まりました。平日の雨天にも関わらず、熱心な将棋ファンが詰めかけています。解説を務めるのは立会人の森下九段、聞き手は野田澤彩乃女流1級。森下九段の軽妙なトークが早速会場に響いています。
「上田さんは角交換振り飛車をよく指されていたので、戦前は振り飛車が中心になると予想していました。でももしかしたら横歩取りのような相居飛車系の将棋もありえますよ、とあいまいな答えをしていたんですが(笑)、1局目から横歩取りでしたね。△8四歩(2手目)を見た加藤さんはのけぞったそうですよ、関係者の話によると。私は見逃してしまいましたが」(森下九段)
(大きな拍手で迎えられた森下九段と野田澤女流1級。大盤解説会は終局まで行われる予定だ)
(森下九段)
(野田澤女流1級)
(若葉)
午後に入って駒がぶつかり、盤上で戦いが始まりました。序盤の駒組みが終わり、中盤戦に移っています。駒に動きがあるときは、形勢にも動きがあるとき。中盤戦のやり取りで先手と後手、どちらかに形勢の針が振れる可能性があります。
それに合わせて、控室でも本格的な検討が始まりました。控室ではあらかじめ継ぎ盤が用意されていましたが、現在検討で使用されているのは窪田六段が持参したもの。虎斑(=虎の皮のような木目のこと)が美しい飴色の駒です。
(本格的な検討が始まった控室。窪田六段と盤を挟むのは午後から控室入りした勝又清和六段)
(窪田六段持参の盤と駒。和洋折衷のおしゃれな布盤である)
(勝又六段)
(窪田六段)
(若葉)
図は59手目▲2一馬の局面です。
先手の加藤女王が1~2筋から戦いを起こし、後手の香の裏に生まれた空間を利用して馬を作りました。角の成り駒である馬は、「馬の守りは金銀3枚」の格言にもあるように将棋では非常に強力な駒。攻守に存在感を発揮します。加藤女王が戦いを起こしたのは、その馬を作ってポイントを挙げるのが狙いでした。
しかし、控室の検討ではここで△4二金上(変化A図)がぴったりで、後手ペースになったのではないかと言われています。
△4二金上は次に△8一飛(変化B図)と引いて馬を捕獲する狙い。「損して得取れ」の手筋で、馬を作られて損をしているように見えて、△8一飛の局面では馬が助からないため後手が優勢となります。この手があってはせっかく作った馬が負担になっており、仕掛けた先手がでかしていないのではないかと控室では言われていました。
本譜、上田女流三段が選んだの△5五歩でした。次に△5六歩から先手玉を直接攻める狙いで、この形では急所の1つです。△5四歩と突いた流れを考えるとこちらも自然な一着のようです。
(上田女流三段)
(若葉)