図は59手目▲2一馬の局面です。
先手の加藤女王が1~2筋から戦いを起こし、後手の香の裏に生まれた空間を利用して馬を作りました。角の成り駒である馬は、「馬の守りは金銀3枚」の格言にもあるように将棋では非常に強力な駒。攻守に存在感を発揮します。加藤女王が戦いを起こしたのは、その馬を作ってポイントを挙げるのが狙いでした。
しかし、控室の検討ではここで△4二金上(変化A図)がぴったりで、後手ペースになったのではないかと言われています。
△4二金上は次に△8一飛(変化B図)と引いて馬を捕獲する狙い。「損して得取れ」の手筋で、馬を作られて損をしているように見えて、△8一飛の局面では馬が助からないため後手が優勢となります。この手があってはせっかく作った馬が負担になっており、仕掛けた先手がでかしていないのではないかと控室では言われていました。
本譜、上田女流三段が選んだの△5五歩でした。次に△5六歩から先手玉を直接攻める狙いで、この形では急所の1つです。△5四歩と突いた流れを考えるとこちらも自然な一着のようです。
(上田女流三段)
(若葉)