ここでは不定期連載「伊藤果先生の詰将棋の作り方入門」をお送りします。
今回は第3回です。
これまでのところを読んでいない方は以下をどうぞ。
第1回 「詰将棋の基本は”逆算式”」
第2回 「上司の詰将棋」
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第2回は上司の詰将棋でお茶を濁した私ですが、ついに私が作った詰将棋を発表する時が来ました。
一応おさらいしておきますと伊藤先生から宿題がでておりまして、それは下図の形が最終局面の一部になるような詰将棋を作れ、というものでした。
自作の詰将棋をプリントアウトして、不安と恐怖しかない状態で六本木駅に降り立った私。
そこに現れた伊藤先生。
喫茶店に入ると、早速「詰将棋の作り方入門」が始まったのでございます。
島田「先生、本日も宜しくお願いいたします」
伊藤「お願いします。今日は島田さんの作品を楽しみにしてきましたよ」
島田「いやー、プレッシャーです。一応頑張って作りましたので見てやってください」
おもむろにプリントを取り出す私。
島田「これです」
※▲1三歩△同桂▲2四桂△同金▲2一銀△1一玉▲4四角までの7手詰。
伊藤「ほう。なるほど。最初は30点くらいのできかなと思いましたが、よくみると面白いですね。3五の角が右側に利いていて、そっちにいきたいと見せて、最後にすっと▲4四角と左側に出るのがいい感じです。50点くらいあげてもいいかもしれません」
島田「まじですか!うれしいです!先生、自分、泣きそうです!」
伊藤「いや、泣かないでください(笑)。まず、惜しいのは初手▲1三歩。持ち駒が歩だとこの手が見え透いてしまいます」
島田「そうなんですよ。それは自分でもそう思いました」
伊藤「例えば持ち駒を銀銀桂にしたらどうですか?これだけでも随分詰将棋らしくなりますよ」
島田「確かに!こっちのほうが考える方も悩みますね」
伊藤「ただ、それより残念なのは3四の角がまったく働いてないことです。▲2四桂に△同歩を防いでいるのは分かるんですが、こういう『ただおいてあるだけの駒』はできるだけ作りたくないじゃないですか」
島田「そうですね。そりゃ私もできることなら全部の駒をいろんな意味を持たせて働かせたいです。でもできなかったんです。泣きそうです」
伊藤「いや、泣かないでください。島田さんの作った詰将棋のコンセプト『3五の角を1三に利かせて、最後に▲4四角で決める』ということを生かすとすると、こういうのはどうでしょうか?」
といいながらパチパチと持参のプラスチック駒を動かし始める伊藤先生。するとすぐに次の作品が出来上がる。
※作意は▲2二銀△同玉▲3二歩成△1三玉▲1二桂成!△同玉▲1三銀△同桂▲2一銀△1一玉▲4四角(下図)までの11手詰。
島田「はぁ~。すごいですね。とても私の詰将棋が元になったとは思えません。これは全部の駒に意味があって、きちんと働いている、というのも分かります」
伊藤「そうですね。・・・・・・ん?余詰です」
島田「え?」
一瞬意味がわからなかった私。でも先生に言われてようやく分かりました。
3手目▲3二歩成のところで▲3二桂成△1二玉▲1三銀△同桂▲2一銀△1一玉▲2二成桂!!△同玉▲3二歩成△1一玉▲4四角でも詰んでいます。
途中▲2二成桂と捨てるのがおしゃれです。
島田「確かに詰んでますね」
伊藤「こういう余詰が面白いやつはそっちを本線にするんですよ」
と、いいながらまたもや楽しそうにプラ駒を動かし始めた伊藤先生。
伊藤「島田さんには絶対できないようなテクニックも入れて・・・」
島田「もうすでに私の領域をはるかに超えてますけどね(笑)」
伊藤「できました。今度は大丈夫です」
※▲4二飛△2二金▲同飛成△同玉▲3二金△1一玉▲2二銀△1二玉▲2一銀不成△1一玉▲2二金△同玉▲3二歩成△1一玉▲4四角(下図)までの15手詰
伊藤「どうですか?」
島田「いやいやいや!レベル高すぎですよ!いきなり限定の金合とか」
伊藤「いったん△1一玉と逃げて▲2二銀~▲2一銀不成がポイントです。島田さんの名前で将棋世界に投稿してみたらどうですか?」
島田「私の要素、もはやどこにもないじゃないですか!(笑)」
伊藤「でもアイディアは良かったですよ。本当に」
島田「ありがとうございます。そのお言葉だけで十分です。逆算式はなんとなくですけどわかったような気がしております。今日はその続き、ですよね?」
伊藤「俄然、元気が出て来ましたね(笑)。それでは今度は逆算式ではない詰将棋の作り方をお教えしましょう。一般的には『正算式』と呼ばれていますが、私の場合は『任意式』ということが多いです」
島田「セイサンシキ?ニンイシキ?初めて聞く言葉です。今のところ外国語です。ではそのなんとか式、教えてください!」
伊藤「はい、例えば・・・」
(次回に続く)
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以上で第3回はおしまいです。
宿題で作った詰将棋を誉められて天狗になった私。
しかしこのあとまた恐ろしい新たな宿題が出されることは知る由もありませんでした・・・。
その辺は第4回で。
このブログを読んで詰将棋を始めようと思った方、私と一緒に頑張りましょう。
それでは、またいつあるかわからない次回をご期待ください!
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