田名後編集長の『雑誌づくりはやめられない』@6月10日 【手書き原稿の頃】 | マイナビブックス

価値ある情報を幅広く紹介。将棋の「知りたい」はここで見つかる

マイナビ将棋編集部BLOG

将棋世界

田名後編集長の『雑誌づくりはやめられない』@6月10日 【手書き原稿の頃】

2014.06.10 | 田名後健吾

  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 今はパソコンなんて便利な物があり、DTP(デスクトップ・パブリッシング=机上出版)が当たり前の世の中だが、私が将棋の編集に携わるようになったかけだしの頃(20年程になるかのう)は、電算写植が幅を利かせていた時代である。
『将棋世界』の場合、原稿はほとんどが手書きだった。中にはワープロを使うライターもいたが、送られてくる原稿はプリント出力した紙なので、手作業には変らない。
 編集部には専用の200字詰め原稿用紙(ペラと呼んでいた)と図面用紙があり、記事はそれに書いていた。
 棋士の先生やライターから届いた原稿は、赤ペンで原稿整理(誤字脱字がないかチェックしながら、正しい字数に調整し、全体の行数を割り出す)し、文字の書体や大きさなどを指定し、レイアウト用紙に割り付けて印刷所に入稿する。
 原稿はファックスで届けられることが多かったが、生原稿が郵送されてくるときは、紛失すると大事件なので、必ずコピーして本物は大切に保管した。
 書き手はそれぞれクセがあるし、達筆な方ばかりとは限らない。判別できない字や分かりにくい文章があれば、そのつど電話で確認しなければならず、原稿整理だけで日が暮れた(そうそう、この頃は携帯電話はメールなんていうものも一般的ではなかった)。
 編集で特に難儀だったのが、棋譜の入稿である。今のようにオンラインのデータベースがあるわけがなく、将棋連盟手合課に保管されている棋譜コピーファイルから探し出して複写して用意しなければならない。『将棋世界』1冊につき、使用する棋譜は50局は下らないだろう。それらを原稿用紙に書き写すのである。集中力が途切れると、指し手をごっそりと書き漏らすことは日常茶飯事だった。
 図面原稿は、図面用紙に鉛筆などで手書きするか、ゴム印(玉から歩までそろったスタンプ)で作っていた。将棋盤で該当する局面まで棋譜を並べ、それを図面用紙に写す。並べ間違えたり写し間違えたりすると、歩が足りなかったり、駒がひっくり返ったりしてしまう。
 時代だったとはいえ、昔はそんな面倒な作業をよくもやっていたなと感心するし、当時の雑誌をいま読み返しても、誤植が大変少ないことに驚くのである。


写真は当時の原稿のイメージです