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鈴木記者のちょいネタばらし「対局者にはかなわない」

2014.06.04 | 鈴木健二

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タイトル戦の控室には報道陣だけでなく、たくさんのプロ棋士が顔を見せます。
立会人や大盤解説、それに指導将棋などの仕事をするために来ているプロ棋士。加えてトップレベルの将棋を現在進行形で検討するために、プライベートで現地にやってくるプロ棋士がいます。

先日千葉県成田市で行われた名人戦第4局の控室では、佐藤康光九段、藤井猛九段、木村一基八段、飯島栄治七段、佐々木慎六段、遠山雄亮五段、吉田正和五段、本田小百合女流三段らが入れ替わり立ち替わりで、検討盤を囲んでいました。飯島七段、遠山五段、吉田五段はプライベート組だったと思います。

1日目は割りとゆったりとした雰囲気で検討されるのですが、2日目の夕方頃になると、局面も終盤に入ってくるので熱が入ってきます。
誰かが鋭い手を指摘すると、錚々たるメンツがじっと視線を盤上に落とし、しばし沈黙。しばらくすると盤上に有力そうな変化がぱぱっと並びます。プロ棋士のすごさを実感できる、貴重な時間といえるでしょう。実戦の進行が控室の検討手順と違うと、「間違えたのでは?」と思ってしまうくらいです。

しかし当然ながら、対局者は控室の検討陣よりも深く正確に読んでいます。森内俊之名人は△8七飛成という鋭い飛車捨ての踏み込みを見せましたし、羽生善治三冠も▲4一金や▲4二角といった妙手を見せて、名人を奪還しました。それらの指し手は控室ではほとんど検討されていないものでした。詳しい将棋の内容については将棋世界8月号で紹介したいと思います。



写真はニコニコ生放送に電話で出演をしている木村八段です。いつもサービス精神旺盛で、このときも三浦九段との軽快なトークで視聴者を楽しませていました。

いつも冗談の絶えない木村八段ですが、羽生三冠の指した▲4二角を見ると、
「この手が見えないのでは情けない。検討している意味がないじゃないか」と、勝負師の顔つきに戻って本当に悔しがっていました。

そんな木村八段は1週間後に王位戦の挑戦者決定戦を制し、この夏、対局者側に回ることにになりました。羽生王位を相手にどのような将棋を見せてくれるか、いまから楽しみです。