第44話 カウンターカルチャーは成功したのか|MacFan

アラカルト FUTURE IN THE MAKING

第44話 カウンターカルチャーは成功したのか

文●林信行

aka Nobiさんこと、林信行氏。IT、モバイル、デザイン、アートなど幅広くカバーするフリージャーナリスト&コンサルタントが物申します。

©Olesya Novozhilova

 

 

ノーベル賞受賞で改めて注目を集めたボブ・ディランは、青年期のスティーブ・ジョブズが多大な影響を受けた1人だ。青年ジョブズが信奉していたもう1人は、「THE WHOLE EARTH CATALOG」という雑誌をつくったスチュアート・ブランド。2人はいずれも「カウンターカルチャー(対抗文化)」の象徴的存在である。

ジョブズの青年期といえば、いわゆる米ソ冷戦の真っ只中。どちらかの大国が核兵器のボタンを押せば、その瞬間に世界が終わると恐れられていた。未来に夢を抱く若者の多くは無益な戦争に反対したが、国家という巨大システムはそんな国民一人一人の希望とは無関係に動く。それに反旗を翻し、サブカルチャー(下位文化)に逃避をする若者も大勢いたが、その一方でメインストリームカルチャー(主流文化)に取って代わろうとする者もいた。たった1人でも、強い意志や頭脳、世界に自分の声を届ける道具やメディアを使えば世界を変えられると信じて主流文化と戦ったのが対抗文化だ。