クリス・アンダーソンとドローンと未来|MacFan

Mac Fan編集部ブログ Weekday Mac Fan

クリス・アンダーソンとドローンと未来

Mac Fan編集部のブログです。

世界の新経済・新産業を牽引する数多くのアントレプレナー、イノベーターが一堂に会する「新経済サミット 2016」(NEST)に行ってきました。今年は、エストニア共和国の首相(ターヴィ・ロイヴァス氏)やAndroidの父(アンディ・ルービン氏)、伝説のロックバンドのカリスマ(YOSHIKI氏)、大ヒットモバイルゲーム「Angry Birds」を開発したロビオ・エンターテイメント社のCMO(ピーター・ヴェスターバッカ氏)、世界一キュートなプログラマー/Rails Girls共同設立者(リンダ・リウカス氏)等々、名前を挙げれば切りがないほど豪華な寵児たちが登壇、実に刺激的な話を聞くことができました。今年もおそらくセッション動画が後ほど公開されると思いますので、参加できなかった方はぜひ視聴することを強くおすすめしますが、ここでは私の来場の一番の目的だったクリス・アンダーソン氏のセッションの話題を少しお届けしたいと思います。

クリス・アンダーソン氏は(説明の必要はないかとも思いますが)元WIREDの編集長で、著書『ロングテール』や『フリー - <無料>からお金を生みだす新戦略』、『MAKERS - 21世紀の産業革命が始まる』などが世界的ベストセラーになったことで知られる人物です。現在は3D Robotics社のCEOを務めており、今回は「産業用ドローン時代の幕開」と題したセッションに登壇。首相官邸の落下事件などをきっかけに世間知を得たドローンですが、それは単なるトイに過ぎず、今後の産業界を一変させるほどのポテンシャルを秘めており、その最先端と利活用について熱く語られました。

彼の私見はいつも鋭く、実に先見の明に満ちているのですが、なぜドローンを開発するのか?という問いに対しては「ドローン自体に関心はない。関心があるのはデータであり、ドローンに取り組むのは空にセンサを置くために必要だから」ときっぱり。過去20年はインターネットでデジタルワールドは測定できた。だが、よく考えると、身の回りの世界はアナログで物理的なものであり、私たちはそれを測るものを開拓してこなかった。それを測れるのがドローンであり、そこから得たデータを活用することで地球を分析、農業や建築、保険等々の分野で未来が生まれる、と。なぜデータ収集に関心があるのか?という問いに対しては、自身の物理学者としてのバックグラウンドを語り、「物理学者は世界を測定し、理解を深める。世界を理解するのにもっともよい方法は、測ることだ」といいます。

このように前のめりにならざるを得ない語り口が満載なわけですが、セッションの後半ではプラットフォーム戦争についても論じます。アップルとグーグル、クローズとオープンを例に出しながら、現在ドローン市場で最大シェアを持つDJI社はアップル的、自身の3D Robotics社はグーグル的だと。そしてどちらが勝つのか?については「PC時代、インターネット時代、スマホ時代もプラットフォーム戦争は三つ巴にならず、オープンかクローズな戦いで、エコシステムを制したほうが勝つ。ドローンの世界は技術的にあまりにも複雑なので、1社でそれを行うのは無理があり、(適性に管理された)オープンが勝つ」といいます。この見解に、Appleを追うユーザの一人としては実にいろいろと考えさせられたのは言うまでもありません。

さらに話は…と書き出すとキリがなく、すでにスマホで読むにはだいぶ文章が長くなってきていますから、このあたりでストップしようと思いますが、とにかくクリス・アンダーソン氏のセッションは必見です。ぜひ閲覧いただければと思います(あと、「医療のイノベーション~頭脳循環と知られざる日本のポテンシャル~」「教育の未来~人材育成の新しいカタチ~」もおすすめです)。

●新経済サミット 2016(NEST)
http://nest.jane.or.jp/overview/