レコーディングの機材が揃ってきました。ミキサー(PA用ですが)、マイク、マイクスタンド、エフェクターなどです。マイクは、SHUREの57、58というのが全部で25本近くありました。しかし、録音機材で肝心なものが足りません。音を記録するテープ・レコーダーです。
ミュージシャンを諦めた私にとって、楽器は必要ないと思い全て売却し、オープン・リールのテープ・レコーダーを購入します。38cm/s、2トラックという業務用でも使用出来そうなキャリングケース仕様のTEACのレコーダーです。
しかし、音楽録音に無くてならないものがありません。スタジオです。みんな学生なのでお金はあまりありません。せっかく機材は無償で用意出来たのに、わざわざスタジオを借りてレコーディングという訳にはいきませんでした。
「そうか、我々は学生なんだから大学の教室を使えば良いんだ」ということに気がつきます。大学の教務課へ行って教室の使用届けを出し、トラックを教室の近くに横付けして、楽器は教室にセッティングします。当時車で学校に来る人は少なくて、どこへ車を駐車しても文句言われる時代ではありませんでした。
コントロール・ルーム(ミキサーなどが並んでいるところ)は、同じ教室内にセッティングすると、音がしっかりモニターできないので、ジュラルミン・トラックの中に配置することにします。
しかしジュラルミンで覆われているトラック内は反響するため、そのままではとても音を聴く環境ではありません。そこで周りに毛布などを貼付けて音の反射を抑えます。PAのミキサー卓の上にオーラトーンという小さいスピーカーを、サイドにエフェクターとレコーダーを設置します。
教室では、楽器をセッティングした後マイクを配置し、マルチケーブルを教室横に駐車したトラックまで這わしてミキサーにつなぎます。
これでレコーディングの準備が終了しました。ジュラルミンのトラックは、レコーディング・モービル・ユニットに変身。さあレコーディングです。
私が最初に購入したテープ・レコーダーはマルチトラックのレコーダーでは無いので、一発録りでしたが、納得がいくまで時間を掛けて何度も演奏してもらい録音をすることができました。
何と言ってもスタジオ・機材はただでしたから時間を気にせず録音することができました。夜中過ぎまでレコーディングしたこともあり(その頃の大学は時間に関してゆるかったですね)、朝日を拝みながら駐車場までトラックを運転したことが楽しかった想い出として今も蘇ります。